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組み合わせでうまみを最大限に発揮!LUNAとApollo併用のさらなるメリット+α|解説:青木征洋

組み合わせでうまみを最大限に発揮 Apollo併用のさらなるメリット+α|解説:青木征洋

 こんにちは。作曲家/ギタリスト/エンジニアの青木征洋です。UNIVERSAL AUDIOのDAW、LUNAを紹介する本連載。第7回は、LUNAとオーディオ・インターフェースApolloの組み合わせの続きと、ミキシングのワークフローを紹介……と、思った矢先にLUNAのWindows版が発表されましたね! まだベータ版ですが、WindowsでもLUNAならではの音を楽しめるようになったのはとても大きな前進だと思います。今まで“Mac使ってないしな”と読み飛ばしていた方も、今月からご注目いただければ幸いです。

UADxとUAD-2 DSPプラグインは切り替え簡単でパラメーターも保持可能

 さて本題に入りましょう。前回、LUNAとApolloの一番のマリアージュである、UAD-2 DSPプラグインとUADxプラグインを使ったストレスフリーな低レイテンシー・レコーディングの紹介をすると予告しました。その内容から始めます。

 Apolloと併用すれば、録音待機状態になっているトラックのUAD-2 DSPプラグインがパソコンのCPUではなくオーディオ・インターフェースの中で処理されるため、加工済みの音を低レイテンシーでモニタリングできます。このときに使うのがARM(Accelerated Realtime Monitoring)という機能。ARMを有効にすると録音待機チャンネルのINSERTスロット4つが黄色の枠で囲まれ、枠の中のUAD-2 DSPプラグインはバッファー・サイズによらずApollo側で低レイテンシーの処理が行われます。しかも、このときのUAD-2 DSPプラグインは、かけ録りにするかモニターにだけかけるかを選ぶことが可能。INPUT欄のRECORD FXに追加されたエフェクトはかけ録りに、INSERTSに追加したエフェクトはモニター音にのみかかります。

黄色の枠で囲まれた部分、INPUT側のVariable Mu(赤矢印)はかけ録りに、INSERTS側のUA 1176 Rev AとPultec EQP-1A(青矢印)はモニター音のみにかかります

黄色の枠で囲まれた部分、INPUT側のVariable Mu(赤矢印)はかけ録りに、INSERTS側のUA 1176 Rev AとPultec EQP-1A(青矢印)はモニター音のみにかかります

 例えば、センドした先のAUXにかかっているリバーブやディレイの音も聴きたい場合は、そちらのAUXでもARMを有効にすることで最大2系統を低レイテンシーでモニタリングできます。セッションがどれだけ大規模になってバッファー・サイズを大きめに設定していたとしても、新規に録音するときは低レイテンシーが担保されます。

バス側のARMを有効にしてAUXを指定すると、黄色の枠で囲まれたUADプラグイン(赤矢印)が低レイテンシーでモニタリング可能です

バス側のARMを有効にしてAUXを指定すると、黄色の枠で囲まれたUADプラグイン(赤矢印)が低レイテンシーでモニタリング可能です

 とはいえ、すべての制作をUAD-2 DSPプラグインだけで行うのはDSPのリソース的に難しいところがありますし、余っているCPUリソースを使うためにネイティブ動作であるUADxプラグインを選ばれる方も多いでしょう。そうなると、録音するときだけUADxプラグインからUAD-2 DSPプラグインに切り替える必要があります。

 Apolloを使っていれば、この切り替えをLUNAが自動的に行ってくれます。つまり、通常時はUADxプラグインを使っていてもARMを有効にしたときだけプラグインのパラメーターを保ったままUAD-2 DSPプラグインに切り替わり、ARMを解除したらまたUADxプラグインに戻るわけです。

ARMを有効にしていない通常時はUADxプラグインが適用されます

ARMを有効にしていない通常時はUADxプラグインが適用されます

ARMを有効にする(青枠)と、プラグインのパラメーターを保ったまま自動的にUAD-2 DSPプラグインへと切り替わります

ARMを有効にする(青枠)と、プラグインのパラメーターを保ったまま自動的にUAD-2 DSPプラグインへと切り替わります

 ちなみに、この切り替えはARM設定時に自動的に行われるだけでなく、任意のトラックにインサートされたUAD-2 DSP/UADxプラグインに対して手動で切り替えも可能なため、マシン・リソースの管理がほかのDAWよりスムーズに行えます。このときも、もちろんパラメーターは保持されます。

プラグイン画面左上の+ボタン(赤枠)のメニューから、PROCESSINGのUAD-2をクリックするとDSP処理に切り替わります

プラグイン画面左上の+ボタン(赤枠)のメニューから、PROCESSINGのUAD-2をクリックするとDSP処理に切り替わります

 一般的にDAWでのI/O設定を行う際、DAWの中のI/Oとオーディオ・インターフェースの物理的なI/OをDAWの中でひも付ける設定が必要ですが、LUNAとApolloを組み合わせている場合、LUNAの中からダイレクトにApolloの入出力を設定できます。

LUNAのインプット・チャンネルからApolloの入力端子を直接、選んでいるところ。I/O設定画面を別途開き、DAW内の入出力とオーディオI/Oの物理入出力をひもづけるプロセスが不要で、“Apolloの何番のチャンネルが、LUNAのどこに立ち上がっていて……”といった読み替えをせずに済みます

LUNAのインプット・チャンネルからApolloの入力端子を直接、選んでいるところ。I/O設定画面を別途開き、DAW内の入出力とオーディオI/Oの物理入出力をひもづけるプロセスが不要で、“Apolloの何番のチャンネルが、LUNAのどこに立ち上がっていて……”といった読み替えをせずに済みます

トラック表示を限定するSPILLボタンを使ったLUNAのミキシング作業のメリット

 このように、LUNAはApolloと組み合わせたときに最もうまみが大きくなるDAWですが、ミキシングにおいてはオーディオ・インターフェースを問わず面白い機能を使うことができます。ミキサー画面の説明は初回や第2回でも触れた通り、上から下に向かって信号が流れてくる一般的なものですが、サミングやテープ・エミュレーション、チャンネル・ストリップといった拡張機能はCPUで動作するため環境を選ばず使用可能。つまり、どのオーディオ・インターフェースでもアナログ・ライクな非線形ひずみを活用した音作りをすぐに始めることができるのです。

 このミキサー画面で最も特徴的な機能の一つにSPILLボタンがあります。セッションの規模が大きくなればそれの管理……言い換えると、チャンネルの表示/非表示の設定やトラックの整理に多くの工夫と時間を費やすことになります。LUNAではSPILLボタンを押すことで、そのバス・チャンネルの入出力に接続されているチャンネル/バスのみを表示可能。例えば、ドラム・バスのSPILLボタンを押せば、キック、スネア、タム、ハイハット、オーバーヘッド、ルーム、リバーブ、ミックス・バスのみをミキサー画面に表示できるといった具合です。聴きたいバスと、そのバスに影響を与えているチャンネルだけが表示できるため、変更を加えるときに余計なことに気を取られる心配がありません。もう一度SPILLボタンを押せば元の全トラック表示に戻ります。

DRUM BUSのSPILLを押すと、DRUM BUSにルーティングされているトラック/バスのみが表示されます(赤枠のトラックの左側はすべてDRUM BUSにルーティングされたもの)

DRUM BUSのSPILLを押すと、DRUM BUSにルーティングされているトラック/バスのみが表示されます(赤枠のトラックの左側はすべてDRUM BUSにルーティングされたもの)

 また、あるバスをSPILL状態にしたときにほかのバスのSPILLボタンをcommand(WindwosではCtrl)+クリックすると、後からSPILLを有効にした方のバスにつながっているチャンネル類も表示されます。つまり、commandを押したままギター・バスとドラム・バスのSPILLをクリックすれば、ギターとドラム関連だけのチャンネル、バスがミキサー画面に表示されるようになるわけです。SPILLを管理するために、何も挿していないバス・チャンネルを楽器ごとに作るなどしておけば、セッションの管理が楽になるでしょう。

MAINとDRUM BUSのSPILLを有効にすると、DRUM BUSにつながっているトラックと、MAINに直接ルーティングされているトラックのみが表示されます

MAINとDRUM BUSのSPILLを有効にすると、DRUM BUSにつながっているトラックと、MAINに直接ルーティングされているトラックのみが表示されます

 ところで、これは多くのDAWにとって当たり前の機能なのですが、バス・チャンネルをソロ状態にするとその入力につながっているチャンネル類が追従してソロ状態になってくれます。なぜ今このことをあえて強調したかと言うと、私にとってこれがとてもクリティカルな機能だからです。

各トラックの“S”がソロ・ボタン。DRUM BUSをソロにすると、そこにつながっているドラム・トラックのみが再生されます

各トラックの“S”がソロ・ボタン。DRUM BUSをソロにすると、そこにつながっているドラム・トラックのみが再生されます

 プロジェクト画面では、過去の回で紹介した通り各クリップに対してゲイン、ピッチ、タイム・ストレッチのアルゴリズムを設定できます。ソロにして作業したいパートのみを鳴らすことで、セクションごとの音量変化がざっくりと付けられ、オートメーションも柔軟に書くことができるのです。

 今回はこの辺りで。次回はサイドチェイン入力の設定や、作業前に済ませておいた方がいい設定、ミックスでどのように意識を変えているかなどを解説していこうと思います。

 

青木征洋

【Profile】作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』『ベヨネッタ3』『戦国BASARA3』などがある。自身が主宰し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラ・コンサートではミキシングを務める。

【Recent work】

『salvia』
Nornis
(Altonic Records)

 

 

 

UNIVERSAL AUDIO LUNA

Universal Audio LUNA

LINE UP
LUNA:無償|LUNA Pro Bundle:63,840円*|LUNA Creator Bundle:95,840円*|LUNA Analog Essentials Bundle:95,840円*|LUNA API Vision Console Emulation Bundle:111,840円*
*いずれもbeatcloud価格

REQUIREMENTS
▪Windows:Windows 10およびWindows 11をサポート・テスト中
▪Mac:macOS 10.15/11/12/13以降、Intel Quad Core i7以上のプロセッサー、Thunderbolt1/2/3、16GB以上のRAM、SSDのシステムディスク推奨、サンプルベースのLUNA Instruments用SSD(APFSフォーマット済みのもの)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代)以降のiLok USB Keyでライセンスを管理

製品情報

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