こんにちは。作曲家/ギタリスト/エンジニアの青木征洋です。Universal Audio LUNAを紹介する本連載。第2回と第3回ではLUNAの拡張機能であるLUNA Extensionsや、プラグインインストゥルメントであるUAD Instrumentsを紹介してきました。今回は、LUNA Pro Bundleに含まれるUADプラグインエフェクトを紹介していきたいと思います。
PULTECのEQやTELETRONIXのコンプがコレクションとして複数台収録
LUNAの有償パッケージであるLUNA Pro Bundleには、これまでに紹介してきた5つのLUNA Extensionsと1つのUAD Instrumentsのほかに、11個のUADプラグインエフェクトが収められています。かなり数があるのですべてを詳細に説明するのは難しいのですが、チャンネルストリップ、EQ、コンプレッサー、テープエコー、プレートリバーブ、テープレコーダーなどがバランス良く収録されています。
LUNA Extensionsと重複していないものを幾つか紹介すると、やはりまずはPULTEC Passive EQ Collectionでしょう。
これは低域と高域にアプローチするEQP-1A、中域にアプローチするMEQ-5、ハイパスおよびローパスのHLF-3Cがセットになったプラグイン。特にEQP-1Aでブーストとカットを両方行ったときの特徴的な曲線は、ほかのEQでまねするのが難しい独特なサウンドを生み出してくれます。古くからのUADファンの方のために付け加えておくと、Legacyではなく新しい方のPULTECのセットです。僕はキックやベース、オーケストラのローエンドの強調に使うことが多いですね。ローをブーストしていくと徐々にブーミーになっていくので、その部分をATTENノブで抑えるイメージです。
コンプレッサーはCentury TUBE CHANNEL STRIPやapi VISION CHANNEL STRIPに加えてTELETRONIX LA-2A Leveler Collectionが付属。
こちらもLegacyではなく新しい方のもので、シルバーとグレーの世代別LA-2Aに加えてオリジナルのLA-2がセットになっています。オプトコンプなので、トランジェントを激しく変化させるというよりは全体的なレベルをならしつつ質感をちょっと変えたりするのに便利。シルバーは動作が速いため、音を鈍らせ過ぎたくないときに適していると思います。逆にメロウな感じにしたいときは動作の最も遅いLA-2がよいでしょう。HFノブ(サイドチェインの高域ブースト)もあるので、コンプレッサーを反応させたい帯域を高域寄りにすることも可能。使い方はいろいろと考えられますが、個人的にはボーカルやストリングスで必要に応じて使うと良い感じです。MIXノブが付いているのでパラレルコンプレッションが気軽にできるのも利点ですね。
EQからプリアンプまでそろう実用性の高いapiのプラグイン
前回のLUNA Extensionsの説明ではさらっと流してしまいましたが、api VISION CHANNEL STRIPとapi 2500 BUS COMPRESSORも実はかなり便利です。VISION CHANNEL STRIPはapiの560L(グラフィックEQ)や550L(パラメトリックEQ)、212L(プリアンプ)や2520(OPアンプ)、225L(コンプレッサー)がひとまとまりになったもので、大体の下処理はこれらで完結できるのではないでしょうか。コンプレッサーのアタックタイムが3段階選べるのと、EQで大雑把な処理ができるのが便利で、キックによく使います。
より狙いを定めたコンプレッションを行う場合は、2500 BUS COMPRESSORが便利。
独特のパンチがあり、こちらもキックに多用します。アタックタイムを遅くしてもいいのですが、思いきり速くしてパラレルで使ってもよし。ニーやトーン、フィードバックかフィードフォワードかを切り替えることで挙動を変化させ、異なる音色、質感を楽しむこともできます。
もしUniversal AudioのオーディオI/O、Apolloを使っているなら、api PreampがUnisonテクノロジーで使用できるため真価を発揮するでしょう。
Unisonテクノロジーとは、選択したプリアンプやギター/ベースアンプの入力回路の挙動を模すために、Apollo自身の入力端子のインピーダンスを変化させてハードウェアとソフトウェアを統合させる技術の名称。これにより、api Preampを使った際、Apolloで録った音がより実機のサウンドに近づきます。Unisonテクノロジーにはほかにもさまざまなバリエーションがあり、その入口としてapi Preampを触るのはとても楽しいと思います。
空間系エフェクトはプレートリバーブとテープエコーを用意
空間系ではPURE PLATE ReverbとGALAXY TAPE ECHOが入っています。PURE PLATE Reverbは読んで字のごとくピュアなプレートリバーブで、明るく自然な響きが特徴です。
ボーカルやスネアとの相性の良さが感じられます。Universal AudioのOX Amp Top BoxにもPLATE REVERBとして同タイプのリバーブが入っているので、ギタリストの方はこの音を知っているかもしれません。明るく派手にかかりますが、必要に応じてさらにエキサイターでひずませると面白いです。
GALAXY TAPE ECHOはRolandのテープエコーを再現したものですが、かけた瞬間に非常に濃密なエコーがかかることが分かります。
テープ特有のワウやフラッターも強く感じられますし、スプリングリバーブも同時にかけることができるため、インスタントに音の濃度、密度を高められます。言い換えると、音の背後がみっちりと埋まるようなイメージです。オートメーションさせたときの突拍子もないピッチの変化や、インプットを突っ込んだときのひずみ具合も特徴的で、それがこのテープエコーを使いたくなる理由の一つだと思います。僕の場合、かなりエコーの時間を短くしてフィードバックを上げつつリードギターにかけることが多いです。
以上がLUNA Pro Bundleに含まれるUADプラグインエフェクトの概要でした。無料版のLUNAでも30日間はLUNA Pro Bundleのコンテンツを試すことができるので、まずは無料版から使いはじめてもOKだと思います。使っているうちに個別販売のUADプラグインエフェクトも気になってくるでしょう。分かりやすい有名なところで言うと、コンプレッサーの1176 Classic Limiter Collectionですね。後の回で、これら“買い足していく際にお薦めのプラグイン”もまとめて紹介できればと思っています。
青木征洋
【Profile】作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』『ベヨネッタ3』『戦国BASARA3』などがある。自身が主宰し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラコンサートではミキシングを務める。
【Recent work】
『salvia』
Nornis
(Altonic Records)
UNIVERSAL AUDIO LUNA
LINE UP
LUNA:無償|LUNA Pro Bundle:61,840円*|LUNA Creator Bundle:108,340円*|LUNA Analog Essentials Bundle:92,840円*|LUNA API Vision Console Emulation Bundle:92,840円*
*いずれもbeatcloud価格
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.15/11/12/13以降、Intel Quad Core i7以上のプロセッサー、Thunderbolt1/2/3、16GB以上のRAM、SSDのシステムディスク推奨、サンプルベースのLUNA Instruments用SSD(APFSフォーマット済みのもの)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代)以降のiLok USB Keyでライセンスを管理