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FL Studioで音楽ゲーム楽曲を制作 〜効率的な構成管理とアレンジのテクニック by Reku Mochizuki

音楽ゲーム用トラック制作にFL Studioが有効な理由|解説:Reku Mochizuki

 こんにちは、作編曲家のReku Mochizukiです。普段は各種音楽ゲームや同人音楽CDへの楽曲提供を中心に、フリーランスで活動しております。前回は、制作と作業効率化に役立つ近年のお気に入り機能について紹介しました。最終回となる第4回では、私の活動のメイン・フィールドである音楽ゲーム向け楽曲の制作について執筆していきます。

尺に制限があり構成も複雑だから視覚的に管理しやすいことが大切

 私は普段、全国のゲームセンターで稼働しているアーケード音楽ゲームや、パソコン/スマートフォンで遊べる家庭用音楽ゲームへの楽曲提供を中心に活動しています。音楽ゲーム向けの楽曲制作では、性質上意識しなければならない点が幾つかあるのですが、その中でも特に顕著なのが“尺の制限”です。

 クライアントや収録タイトルによって多少変動しますが、近年は多くの音楽ゲームが“2分~2分30秒程度”という尺の長さを採用しています。これは一般的なポップスやクラブ・ミュージックと比較すると非常に短いですよね。しかしこの尺の制限は直接ご依頼いただくプロジェクトに限った話ではなく、楽曲公募やコンテストなどでも同様であることが多いです。そういった制限がある中での制作に便利なのが、タイムマーカー機能です。

タイムマーカー機能で、楽曲の構成をマーキングしたところ。マーカーには“intro”“build”“+vocal”といった具合にテキストが入力できる。本格的に着手する前に大まかな構成やアレンジのアイディアをメモしておくことができるので、尺が決まっている音楽ゲーム用トラックの制作において筆者もとても重宝している機能だ。ほかにもマーカー間をループさせたり、打ち込みのフレーズを入れ替えたりと、マーカーを利用した便利な機能がたくさん用意されている

タイムマーカー機能で、楽曲の構成をマーキングしたところ。マーカーには“intro”“build”“+vocal”といった具合にテキストが入力できる。本格的に着手する前に大まかな構成やアレンジのアイディアをメモしておくことができるので、尺が決まっている音楽ゲーム用トラックの制作において筆者もとても重宝している機能だ。ほかにもマーカー間をループさせたり、打ち込みのフレーズを入れ替えたりと、マーカーを利用した便利な機能がたくさん用意されている

1つ目のマーカーはキーボードの“ALT+T”で生成する。画面のようにテキストを打ち込むダイアログが表示されるので、テキストを入力すればマーカー機能が有効になる。2つ目以降のマーカーは任意の場所で右クリックをすることで生成することができる

1つ目のマーカーはキーボードの“ALT+T”で生成する。画面のようにテキストを打ち込むダイアログが表示されるので、テキストを入力すればマーカー機能が有効になる。2つ目以降のマーカーは任意の場所で右クリックをすることで生成することができる

 これはプロジェクト・ファイルのルーラーにマーカーを付ける機能で、本格的に制作に着手する前に尺に合わせて構成やパターン展開をあらかじめ決めてマーキングしておくことができるので、以降の作業がとてもスムーズになります。“〇小節~〇小節はビルドアップにしよう”“この4小節間はレベル・デザイン的に難しくなるパートにしよう”と考えながらマーカーを配置していくことで、簡単に全体の尺を管理することができます。頭の中で思い描いている設計図を視覚的に分かりやすく残しておくことにより、後日プロジェクト・ファイルを開き直したときに“そのときやりたかったこと”を瞬時に思い出す助けにもなります。これで日をまたいでも安心ですね。

 このように、“視覚的な構成の管理”という点においても、FL Studioは便利です。例えばほかにも、楽曲のノリ、すなわちグルーヴ感が大切な音楽ゲームの世界では、ドラム・パートの重要度が極めて高いです。“ゲーム・ミュージック”という大きなくくりの中でも、リズムに合わせてタイミングよくアクションを行うジャンルのゲームであるため、リスニング用のバックグラウンド・ミュージックと比べて、ビートを重視していることが多いのです。

 ゲームの難易度調整の一環で、通常では考えられないような密度でキックやスネアを連打したり、リズムを変則的に崩して複雑にさせるケースも多くあります。そんな場面で、サンプルをプレイリスト上に直接並べながら構築することができるFL Studioは、視覚的に分かりやすく優れていると感じます。

一般的には考えられないような密度でのドラムの連打や、複雑なリズム構成が重要な音楽ゲーム用トラックの制作において、サンプルをプレイリストに直接並べながらビートを構築できるのもFL Studioを使うメリット

一般的には考えられないような密度でのドラムの連打や、複雑なリズム構成が重要な音楽ゲーム用トラックの制作において、サンプルをプレイリストに直接並べながらビートを構築できるのもFL Studioを使うメリット

1つのプロジェクト・ファイルで複数のアレンジを管理可能

 ほかにも活用している機能として、FL StudioのプレイリストにはArrangements機能があります。これは1つのプロジェクト・ファイルの中で複数のプレイリストを切り替えて管理できる機能で、いろいろな展開を模索していく必要がある音楽ゲーム向けの楽曲制作では、この機能がとにかく役に立ちます。複数の案があるけれど、プロジェクト・ファイルを分けるのは面倒臭い……というときにうれしい機能です。同じことをプロジェクト・ファイルを分けて行おうとすると、毎回読み込みの工程が挟まり、あまりスムーズではありませんよね。一瞬一瞬のひらめきが重要な楽曲制作において、このタイム・ロスは非常に致命的です。

 その点FL Studioでは、プレイリスト上部の“Arrangement”をクリックすればすぐに別のプレイリストに切り替えることが可能です。自分の場合は、“スケッチ用”“ドラム・パターン構築用”“展開を考える用”というふうにプレイリストを使い分けることが多いです。

1つのプロジェクト・ファイルの中で複数のプレイリストを切り替えることができるArrangements機能で、別のプレイリストを立ち上げるところ。“Drums”“Sketch用”“Extended”などと書かれているのが別バージョンのプレイリスト

1つのプロジェクト・ファイルの中で複数のプレイリストを切り替えることができるArrangements機能で、別のプレイリストを立ち上げるところ。“Drums”“Sketch用”“Extended”などと書かれているのが別バージョンのプレイリスト

 また、音楽ゲームに限った話ではないですが、尺に制限がある楽曲を制作したあと、クラブ・ユースを想定した“Extended Mix”を用意したり、“別アレンジを作りたい!”と思い立った際にも、オリジナル・ミックスとExtended Mixを1つのプロジェクト・ファイル内で管理できるので、とても重宝している機能です。さらに、長尺の楽曲を縮めて“Radio Edit”を用意しなければならないような場面もあります。こういったときにもこの機能のありがたみを感じています。

 というわけで、全4回の連載が終了となります。本連載を通じてFL Studioに興味を持ってくださった方がいらっしゃれば、とてもうれしく思います。DAWソフト選びにおいて、“どんなユーザーがいるのか?”という点も非常に気になるポイントの1つですよね。“憧れのあのアーティストと同じDAWを使って作曲をしたい!”という気持ちが、購入のきっかけや制作のモチベーションにつながったりもします。音楽ゲームに携わるコンポーザーさんにはFL Studioを愛用している方も多く、そういった面でもうれしいポイントになるかもしれません。またどこかでお会いできたら幸いです。Reku Mochizukiでした!

 

Reku Mochizuki

【Profile】株式会社セガ『CHUNITHM』『maimai』『オンゲキ』をはじめとする各種ゲームへの楽曲提供や、電音部イケブクロエリアへの公式リミックス提供など、幅広い分野で活動するフリーランス作編曲家。自身のルーツである同人音楽シーンから強く影響を受けた楽曲を制作している。

【Recent work】

『VVD!! EP』
Reku Mochizuki

 

 

 

Image-Line Software FL Studio

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LINE UP
FL Studio 21 Fruity:23,100円|FL Studio 21 Producer:40,700円|FL Studio 21 Signature:49,500円|FL Studio 21 Signature クロスグレード:28,600円|FL Studio 21 Signature 解説本PDFバンドル:51,700円|FL Studio 21 クロスグレード解説本PDFバンドル:30,800円

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15以降、INTEL CoreプロセッサーもしくはAPPLE Siliconをサポート
Windows:Windows 10/11以降(64ビット)、INTEL CoreもしくはAMDプロセッサー
共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM

製品情報

hookup.co.jp

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