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Cubase付属プラグインで完結するミックス&マスタリングのTips|解説:AFAMoo

付属プラグインで完結するミックス&マスタリングのTips|解説:AFAMoo

 こんにちは。トラック・メイカーのAFAMooです。連載2回目はCubaseの機能や純正プラグインを使ったミックスとマスタリングのTipsを紹介します。ぜひご覧ください。

試行錯誤の末にたどり着いた“良いあんばい”のパンの設定値

 まず紹介したいのは、Cubaseのステレオ・バランス・パン機能を使い、上ネタやコードを左右どちらかに15〜20ほど振るというもの。インスト曲の場合、メインの上モノを可能な限り目立たせたいのですが、中央に配置しているドラムと音域がかぶります。そんなとき、EQでも音域の調整をするものの、パンを振ることでより聴きやすくなるのです。その際、“できるだけ目立つように、それでいてほかとぶつからない良いあんばい”の値が、試行錯誤の結果15〜20ほどという結論に至りました。

 やり方はとても簡単で、該当のトラックを選択しInspectorの“Pan”を左右に動かすだけです。次の画像のように“L17”と表示されている場合、左に17振っているということになります。

Cubaseのパンナー(赤枠)には、トラックのInspectorやMixConsoleからアクセスする。デフォルトでは、左右の定位調整に用いるステレオ・バランス・パンに設定されているが、Cubase Proでは、左右独立したパンの調整ができるステレオ・コンバイン・パンも選択可能。またCubaseには、サラウンド・ミックス時に用いるVST MultiPannerというプラグインも付属している。画像はパンを左に17振っているところ。筆者はトラックを作りながらミックスも同時進行させるため、パンもすぐに振ってしまう

Cubaseのパンナー(赤枠)には、トラックのInspectorやMixConsoleからアクセスする。デフォルトでは、左右の定位調整に用いるステレオ・バランス・パンに設定されているが、Cubase Proでは、左右独立したパンの調整ができるステレオ・コンバイン・パンも選択可能。またCubaseには、サラウンド・ミックス時に用いるVST MultiPannerというプラグインも付属している。画像はパンを左に17振っているところ。筆者はトラックを作りながらミックスも同時進行させるため、パンもすぐに振ってしまう

 僕はトラックを作りながらミックスも同時に進めていくので、トラック・メイクの初期段階からパンを振ります。値はケース・バイ・ケースで微妙に変えますが、目安は次の通りです。

●打ち込みで曲を作る場合

・コード/15〜20ほど

・リード・シンセやアルペジオ/25〜30ほど

・ベース/振らない

●ベースを含まない上ネタのサンプルを使って曲を作る場合

・サンプル/15〜20ほど

・ベース/振らない

●ベースが含まれている上ネタのサンプル

・ベースがしっかり聴こえる範囲で5〜10ほど

 ダンス・ミュージックにおいて重要度が高いのがベースです。クラブのウーファーでガンガン鳴らされることを想定して作りますし、ベースは全体の軸なので、中央に配置するのがベストです。ただ上ネタにベースが混ざっているサンプルの場合、サウンドの大胆さを重視してそのままパンニングしてしまいます。

 なお、歌入りの曲でもインストでも、下記の設定は同じことが多いです。

・キック、スネア、ハイハット/振らない

・パーカッションやFX/30〜50ほど

 次に紹介するのは、Cubase付属の8バンド・パラメトリックEQ、Frequency 2を使ったトラックごとの音域の調整です。チャンネルのデフォルトのEQでもある程度は調整可能ですが、Frequency 2は視覚的に音域を確認しながらかなり細かい調整ができるので愛用しています。Frequency 2で音域を調整する方法は2通りあります。EQカーブをカーソルで動かす方法と、各パラメーターの数字を直接入力するやり方です。僕はトラックを聴きながらカーソルで調整しつつ、細かい部分は数字を打ち込んでいます。EQ時に意識しているのは、“不要な音域は大幅にカットし、必要な音域は必要なだけ上げる”こと。次の画像はサンプリング・ネタにEQをしている画面ですが、100Hz以下の低域や3〜10kHzの高域は不要なので大幅にカットして、130〜500Hzを少し上げています。

数あるCubase Pro付属EQの中でも、筆者が特に気に入って愛用しているのが8バンド・パラメトリックEQのFrequency 2。視認性と操作性が高く、細かな調整も可能だ。画像はサンプリング・ネタを処理しているところ。100Hz以下をカットし、このネタのおいしい帯域である130〜500Hzを持ち上げている

数あるCubase Pro付属EQの中でも、筆者が特に気に入って愛用しているのが8バンド・パラメトリックEQのFrequency 2。視認性と操作性が高く、細かな調整も可能だ。画像はサンプリング・ネタを処理しているところ。100Hz以下をカットし、このネタのおいしい帯域である130〜500Hzを持ち上げている

 これはあくまで例で、トラックにより、どれくらい上げるかは変えています。

●各トラックの主要音域の上げ方の目安

・上ネタやコード(200〜600Hz)/1.5〜3dB

・ベース(20〜50Hz)/3〜5dB

・ボーカル/4〜6dB(音域は声質による)

・キック(80〜100Hz)/3〜5dB

・スネア(300〜500Hz)/1〜2dB

・ハイハット(9kHz〜10kHz)/1〜2dB

 基本的に低域は多め、ボーカル以外の中〜高域のパートは控えめに上げるという感じです。パーカッションやFXに関しては削るのみで、どの音域も上げないようにしています。

マスタリングで常にセットで使う付属ダイナミクス系プラグイン3種

 最後はマスタリングについて。僕はCubase付属のCompressor、Limiter、Maximizerでマスタリングを完結させます。

筆者がマスタリングで使用しているCompressor。Cubaseに付属している複数のプラグイン・コンプレッサーの中でもオーソドックスなコンプ

筆者がマスタリングで使用しているCompressor。Cubaseに付属している複数のプラグイン・コンプレッサーの中でもオーソドックスなコンプ

Limiter。INPUT、RELEASE、OUTPUTの3つのパラメーターで構成されたシンプルなGUI

Limiter。INPUT、RELEASE、OUTPUTの3つのパラメーターで構成されたシンプルなGUI

Maximizerは、旧版のアルゴリズムのCLASSICと、現代的な音楽に向いたMODERNの2モードから選択可能

Maximizerは、旧版のアルゴリズムのCLASSICと、現代的な音楽に向いたMODERNの2モードから選択可能

 インサート順は曲によるものの、セットで使います。2ミックスのヘッドルームは−6dBを目安にしており、そのうえでお薦めは次の設定です。

●Compressor

・THRESHOLD/−10〜−6dB

・RATIO/2:1〜3:1がダイナミックかつ適度にまとまる良いあんばい

・ATTACK/8〜12msほどが良い

・RELEASE/350〜500msほどが理想

・ANALYSIS、DRY MIX/そのまま

・MAKE UP/AUTOから手動にすることでより音圧を上げられるが、やり過ぎると音割れするリスクがあるため要注意

●Limiter

・INPUT/3.5〜5dB程度

・RELEASE/350〜500ms程度が理想

・OUTPUT/そのまま

●Maximizer

・OPTIMIZE(ラウドネスの調整)/25〜35%程度が理想

・CLASSIC/MODERN/細かく調節せずとも良い感じにまとまるのでCLASSICがお薦め

・MIX、OUTPUT/そのまま

 以上、今回はミックスとマスタリングのTipsを紹介しました。参考にしてみてください!

 

AFAMoo
【Profile】AFAMoo(アファム)。日本の音楽プロデューサー/DJ。2016年から楽曲のリリースを開始。ハウス・ミュージックに特化して制作を続け、これまでにNervous RecordsやLobster Thereminなど世界中の名門レーベルから作品をリリースしてきた。現在は2人組音楽ユニット"Uilou"のトラック・メイカーとしても活動しており、チルでダウナーなダンス・ミュージックを制作し続けている。

【Recent work】

『Do Me a Favor』
Uilou
(Uilou)

 

 

 

steinberg Cubase

steinberg Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 13:13,200円前後|Cubase Artist 13:39,600円前後|Cubase Pro 13:69,300円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
Mac:macOS 12以降
Windows:Windows 10 Ver.22H2以降(64ビット)、11 Version 22H2以降
共通:INTEL Core i5以上またはAMDマルチコア・プロセッサーやApple Silicon、8GBのRAM、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)

製品情報

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