【お知らせ】2024年12月27日(金)12:00 ~ 2025年1月6日(月)11:00まで、サポートをお休みいたします。期間中のお問合せは、1月6日(月)以降、順次対応させていただきます。

Bitwig Studioでエレキベースと歌を録音〜グループ・トラックでテイクを管理|解説:MASAHIRO KITAGAWA

Bitwig Studioでエレキベースと歌を録音〜グループ・トラックでテイクを管理|解説:MASAHIRO KITAGAWA

 音楽家のMASAHIRO KITAGAWAです。この連載ではBITWIG Bitwig Studioを使用し、アーティストの作品をプロデュースしてリリースするまでの過程を記述していきます。第1回では曲の要となるフック部分のビートの作成、第2回ではビートの展開とドラム・レコーディングをしました。今回はエレキベースとボーカルのレコーディングです。

歌心のあるエレキベースのフレーズを採用

 前回までの制作で大体の曲の構成ができてきました。構成自体は結構展開がある曲になっていますが、基本となるフレーズはとてもシンプルにしています。それは、声が乗ったときにビートが引っ張って行きすぎないようにするため。ただ、シンプルなフレーズにラップが乗ると、曲を通して一辺倒な聴こえ方になる危険性もあります。そこで、今回は歌うようなベース・ラインを加えようと思い、前回参加してくれたドラマーの深谷雄一氏のバンド、スーパー登山部のメンバーでもある梶祥太郎氏に依頼して、エレキベースのレコーディングをしました。

エレキベースの録音をお願いした梶祥太郎氏(スーパー登山部)。基本的にシンセがベースの役割を担っているため、エレキベースは歌うようなフレーズを弾いてもらっている

エレキベースの録音をお願いした梶祥太郎氏(スーパー登山部)。基本的にシンセがベースの役割を担っているため、エレキベースは歌うようなフレーズを弾いてもらっている

 録音で使用した機材を紹介しましょう。エレキベースはRS GUITARWORKS Old Friend 59 Contour Bassで、エフェクターはHUMPBACK ENGINEERING 2107 Bass EQ、EMPRESS EFFECTS Bass Compressor Blue Sparkle、IRON ETHER Xerograph Deluxeなどです。今回はアンプにマイキングせず、プリアンプのGROOVE TUBES Vipreを通してオーディオ・インターフェースのANTELOPE AUDIO Goliathで録音しています。

 今回の曲はベース・ラインを中心に構成されています。ほぼすべてのシンセがベースの役割を担っているので、エレキベースは歌うようなフレーズで弾いてもらいました。実際、私が歌ったラインを元にレコーディングしています。ドラムとシンセでグルーヴを作り、エレキベースはアクセントとしての役割です。

 私はアレンジやミックス時にトラックを視認しながらいろいろなテイクを試します。そのため、レコーディングではいつも複数のトラックを用意して各テイクを録り、それらをグループとしてまとめてプラグインのコンプレッサーを挿して試聴しています。今回はBitwig StudioのCompressorを採用。加えて、EQ+のプリセット“Bass Ascent”を使用し、少しだけ低域をブーストしておきます。

エレキベースのグループ・トラックに挿したプラグイン。どちらもBitiwig Studio付属のもので、CompressorとEQ+を使用している。EQ+はBass Ascentというプリセットを使って低域をシェルビングで持ち上げた

エレキベースのグループ・トラックに挿したプラグイン。どちらもBitiwig Studio付属のもので、CompressorとEQ+を使用している。EQ+はBass Ascentというプリセットを使って低域をシェルビングで持ち上げた

 ちなみに、モニター用にプラグインを使うことはありますが、コンプやリミッターなどのかけ録りはしません。必要であれば、録音後にアウトボードへ通して音を作っています。

ソロ・パートとの対比を考えフックのボーカルを構成する

 次は曲の肝になる歌録り。メンバー1人ずつのソロ・パートがあるので、そこから録っていきます。今回、作曲時点で彼らの歌声は知らず、まずビートを作ってからそれに対してアンサーをもらうイメージで制作を進めていました。このソロ・パートの録音では、彼らの声の特徴の確認作業も同時に進め、フックやサプライズ・パートのフレーズを考えていきます。

 ちなみに、今回は複数のトラックを用意した上でテイクを録っていきましたが、Bitiwig Studioにはオーディオ・コンピング機能も搭載されています。各テイクから任意の場所を組み合わせてベスト・テイクを作れるので、ぜひ活用してみてください。

 歌録りで使用するマイクはMANLEY Reference Gold、マイクプリはVipreです。

K1Xのメンバー、yutoのボーカル録音の様子。マイクはMANLEY Reference Goldだ

K1Xのメンバー、yutoのボーカル録音の様子。マイクはMANLEY Reference Goldだ

 どちらもTONEFLAKEの佐藤俊雄さんにチューニングしていただいています。素晴らしい音で収録することができ、何もしなくても音が埋もれにくいです。今回の曲はカオスに音数が鳴っている部分があるので、とても重宝すると思い採用しました。

 普段は素早い制作ができるBitwig Studioをシーケンサー的に使用しており、レコーディングにおいては別のDAWを使うことが多いです。しかし、近年のBitwig Studioは以前より音の抜けが良くなっていると感じています。気持ちよく作業ができることはとても大事なこと。なんでも気持ちが大事です。

 ソロ・パートを録り終え、メンバー個々が全く違うテイストの声ということが理解できました。ここからフックを作っていきます。彼らの初のリリース音源になるので、渋いものよりインパクトが大切。フックは聴き手が口ずさみやすいものが良いと判断しました。そして、個々のソロ・パートが引き立つように、フックとの緩急をつけるようにしていきます。

 メンバーの中で特に低い声に魅力がある人がいたので、その声を軸にフックを作っていきました。

フック部分のボーカルをまとめたグループ・トラック。今回は複数のトラックを用意して、各ボーカルのテイクを録音していった

フック部分のボーカルをまとめたグループ・トラック。今回は複数のトラックを用意して、各ボーカルのテイクを録音していった

 フックはシンセの低域が重厚に響く印象。Aメロでは生ドラムに切り替わって、自然な低域でスッキリした印象になり、声がグッと前へ出てくるようにします。フックも大事ですが、Aメロは一番個性を出せる場所であり、リスナーにとってその曲をそのまま聴くか飛ばすかの重要な判断箇所というイメージで、制作でとても力が入るところです。アーティストの良さが一番分かりやすいセクションであるとも思っています。

 次回はアレンジ〜ミックスからのリリースまでをお届けしようと思います。

 

MASAHIRO KITAGAWA

【Profile】シンガー/ビート・メイカー。OMOKAGEから『POLYHEDRAL THEORY』でデビュー。Apple Musicの“今週のNEW ARTIST”に選出されて話題を呼んだ。自身のソロ活動のほか、楽曲提供も行っており、シンガー・ソングライター中村佳穂の2ndアルバム『AINOU』ではトラック・メイクやコーラスで制作に参加。現在も中村佳穂BANDメンバーとして多岐にわたり携わっている。

【Recent work】

『スカフィンのうた』
中村佳穂
(AINOU)

 

 

 

BITWIG Bitwig Studio

BITWIG Bitwig Studio

LINE UP
★2025年1月13日までウィンター・セールを開催中!
Bitwig Studio
フル・バージョン:39,600円|エデュケーション版:26,400円|12カ月アップグレード版:16,500円
Bitwig Studio Producer:19,800円
Bitwig Studio Essentials:10,560円
※すべてセール価格

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.14以降、macOS 12、INTEL CPU(64ビット)またはAPPLE Silicon CPU
Windows:Windows 7(64ビット)、Windows 8(64ビット)、Windows 10(64ビット)、Windows11、Dual-Core AMDまたはINTEL CPUもしくはより高速なCPU(SSE4.1対応)
Linux:Ubuntu 18.04以降、64ビットDual-Core CPUまたはBetter ×86 CPU(SSE4.1対応)
共通:1,280×768以上のディスプレイ、4GB以上のRAM、12GB以上のディスク容量(コンテンツをすべてインストールする場合)、インターネット環境(付属サウンド・コンテンツのダウンロードに必要)

製品情報

関連記事