世界中のエンジニア/クリエイターが愛用するWAVESのプラグインは、具体的にどのような場面で力を発揮するのか? ミックスやサウンド・メイクで悩みがちなポイントにプロが答える形で、WAVESプラグインを用いたソリューションを紹介!
A. EQで頑張る前に“レコード”を切ってみましょう
使用するWAVESプラグイン:Abbey Road Vinyl
グロッケンシュピールやベル、はたまたタンバリンのように、オケの中で浮いてしまいがちな音ってありますよね。それらは大抵、高域がピーキーなのですが、EQで上の方を削ると今度は聴こえづらくなったりして、なかなか手ごわいものです。そこで、アナログ・レコードとカッティング・マシンをシミュレートしたAbbey Road Vinylが使えます。これをかけるとアタッキーな部分が程良くつぶれるのか、オケに対するなじみが良くなるんです。“レコード”と言えばビンテージライクな音を連想するかもしれませんが、古めかしい感じになるというよりは、質感がごくわずかに変わる印象。EQなどでは得られにくい音色変化で、微々たるものながら効果的なんです。
僕がよく使うのはGENERATION、CARTRIDGE、DRIVEの3セクション。GENERATIONではラッカー盤とプレス後の盤の音が選択でき、前者の方が明るめです。CARTRIDGEのチョイスにもそれぞれキャラクターがあって、MMが最もワイド・レンジ、MCはやや中域寄り、DJは重心低めという感じ。DRIVEのツマミは、上げると音が少し太くなります。こういったパラメーターの組み合わせで音の抜けや質感を調整してからEQなどをかけていく、というのが僕のいつものやり方ですね。レコードらしく、パチパチしたノイズを加えるCRACKLEやテープ・ストップ的な効果を生み出せるSTOP/STARTといったパラメーターもあり、発想次第で積極的な音作りにも使えるプラグインだと思います。
照内紀雄
【Profile】青葉台スタジオ所属のレコーディング/ミキシング・エンジニア。Vaundy、ザ・リーサルウェポンズ、大橋ちっぽけ、amazarashi、ヒプノシスマイク、Diosなど多くを手掛ける。サウナ・ブログ“Saunaで数えるOneからThousand”を主宰。フィンランド大使館公認サウナ・アンバサダーでもある。