DAWの普及、インディペンデントな制作スタイルの隆盛、SNSでのコンテンツ公開などで、さまざまなクリエイターが取り組んでいる“自宅でのボーカル録り”。コロナ・ウィルス以降、その必要性がますます高まっていると言えます。今回は、プロ・アーティスト20組の自宅ボーカルREC術を使用機材とともに一挙公開。ホーム・レコーディング初心者からアップデートを考えている人まで、Tips集として活用していただけると幸いです。
Kanae Asaba
楽曲に対して最初に抱いた心の動き方や直感
それらを念頭にスピード感をもって録っていきます
仮歌から本チャンまで、自宅での歌録りはさまざまです。最近はTikTokやYouTubeなども積極的に更新しているので、ネット用のコンテンツも含め宅録しています。録音の際は、楽曲に対して最初に抱いた心の動き方や直感を重視します。例えば一つ一つの言葉の入れ方、フレーズの流れやブレスのニュアンス、息はこう流したいといったイメージ。それらを念頭にスピード感をもって録音を繰り返します。
良い歌が歌えたかどうか/録れたかどうかの実感は、私の場合イコールであることがほとんど。“フレーズ頭のブレスから一音目の響き”で決まることが多いので、そこが良ければ、後は大抵うまくいきます。ただし歌詞については、歌っているときの感覚とプレイバックに差があったり、発音が気になる場合もあるため、その都度細かくチェックします。あとは声の立ち上がり方や消耗具合、リップ・ノイズなどのコントロールにも配慮。録音後は一休みして、意識的に“初めての耳”を作ってから結果の是非を判断します。
歌は息と感情の流れでできていると考えています。数多くのテイクをつないでいくにしても、そうでないにしても、目には見えない流れが断ち切れずに一曲を通して美しい曲線を描けるようテイクを選び、コンピングしていきます。
機材紹介
Soundproof Chamber
YAMAHA AMDB15H
定型防音室で、写真のように中へ入って歌録りしています。作編曲にピアノやギターを使うので、楽器や歌を程良く遮音する“Dr-35”という遮音性能のものを選びました。サイズは1.5畳で、自宅に高品位な録音環境が作れるため、少し値は張りますが選んで本当に良かったです。ネット用の動画をここで撮ることもあり、撮影にはCANON EOS 6D Mark IIやAPPLE iPhone 11 Proを使用。小さな画面の中にどれだけ“引っ掛かり”を作れるか考えていて、一番アピールしたいのは音楽ですが、メイクやファッションなど音楽以外でも良いと思ってもらえる部分があればと考えています。
Condenser Mic
SHURE KSM9
声の立体感というか透明感みたいな部分を繊細かつ明りょうに録れるところが気に入っています。私の声は2kHz辺りが出っ張っているのですが、KSM9は高域がキツ過ぎず、滑らかな質感に録れるところも好みです。
【デジマートで探す】
Audio I/O
AVID Pro Tools | Mbox
10年くらい使っています。アルミ・ボディでとてもタフな点に加え、アナログ2イン/2アウトという入出力数も自分の用途にちょうど良い感じで気に入っています。
録り音のトリートメント
WAVES CLA Vocals。コンプやリバーブ、ディレイなどを細かく自分好みに調整できます。
FABFILTER Pro-Q3はダイナミックEQ機能を搭載。出過ぎた帯域をピンポイントに抑えられるのがお気に入りです。
Kanae Asaba
アカデミックな素養を持つシンガー・ソングライター。『beatmania II DXシリーズ』などの人気ゲームやアーティストへの楽曲提供、レーベルFenmie Musicの運営、トラック・メイカーMK/Shadwとのコラボ、DJ T.H.(独)らとと制作した楽曲の海外リリースなど八面六臂の活躍を見せる
【Recent Work】