トラックメイク、レコーディング、ミックスなど音を正確に判断するために欠かせないヘッドホン。プロも即戦力として採用することが多い5~6万円台のモデルを中心に、クリエイターが導入する“次の一台”を探すためのポイントを紹介します。冒頭では、イントロダクションとして、エンジニアの檜谷瞬六が講師となり、ヘッドホンの選び方のポイントを紹介。本編では17機種のヘッドホンをピックアップし、檜谷とクリエイターのESME MORIによるエンジニア&クリエイター目線での全機種クロスレビューをお届けします。音質面はもちろん、機能面や実際の曲作り、ミックスで活躍が期待されるシーンを2人に語っていただきました。
- レビュワー&試聴環境紹介
- ADAM AUDIO SP-5
- AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+
- AKG K712 PRO
- Audio-Technica ATH-R70x
- AUSTRIAN AUDIO Hi-X65
- beyerdynamic DT 700 PRO X
- Direct Sound DS-74
- FOCAL Listen Professional
- MACKIE. MC-350
- NEUMANN NDH 20
- PHONON SMB-02G 特級 SPECIAL EDITION
- SENNHEISER HD 600
- SHURE SRH1540
- ソニー MDR-MV1
- TAGO STUDIO T3-01
- ULTRASONE Signature PURE
- YAMAHA HPH-MT8
レビュワー&試聴環境紹介
作曲からレコーディング、ミックスまで総合的に判断するため、レビュワーはエンジニア枠とクリエイター枠を設定。エンジニア枠で檜谷瞬六、クリエイター枠でESME MORIに登場してもらった。また、ここではレビュワーの試聴環境をできる限り実際の作業環境に近づけるため、機材を持ち込んでもらってテストを実施した。使用機材と試聴用のリファレンス曲の選定については下記をご覧いただきたい。
エンジニア:檜谷瞬六
【Profile】prime sound studio formやstudio MSRを経て、フリーランスのエンジニアに。ジャズを中心にアコースティック録音を得意とし、ポストクラシカルの分野で世界的に評価される小瀬村晶の作品も手掛ける
試聴環境
プライベートスタジオでのミックス環境をできる限り再現したという檜谷。ヘッドホンアンプSPL Phonitor 2とオーディオI/OのAntelope Audio Pure 2で比較試聴を行った。
●コンピューター:MacBook Pro(intel、2014)
●オーディオI/O:Antelope Audio Pure 2
●ヘッドホンアンプ:SPL Phonitor 2
●リファレンス曲選定のポイント:普段リファレンスにしている各ジャンルの楽曲と、自らが手掛ける音源を数曲用意。改善が必要な楽曲がどう聴こえるかも試聴のポイントとした。
クリエイター:ESME MORI
【Profile】サウンドプロデューサー/シンガーソングライター。ヒップホップサウンドに衝撃を受け、独学でトラック制作を始める。CM音楽、アーティストへの楽曲提供/プロデュース、劇伴など、多岐にわたる活動を行う
試聴環境
ESMEは、海外でも使う移動用の作曲セットアップを用意。オーディオI/OのUNIVERSAL AUDIO apollo twinにヘッドホンを接続し、自らのプロデュース曲などで試聴を行った。
●コンピューター:MacBook Pro(M1 Max、2021)
●オーディオI/O:UNIVERSAL AUDIO apollo twin
●ヘッドホンアンプ:なし
●リファレンス曲選定のポイント:自身が手掛けたR&B系楽曲のDAWプロジェクト、生の質感をチェックするためのバンド曲、ストリーミング配信サービスの音源などを試聴。
ADAM AUDIO SP-5
密閉型
特許技術S-LOGIC PLUSで緻密な音像を実現
オーバーイヤー密閉型のヘッドホン。40mm金メッキドライバーを搭載し、8Hz〜38kHzの周波数特性を持つ。特許技術S-LOGIC PLUSにより緻密な音像を実現し、長時間使用でも耳への負担が少ないサウンドを提供するという。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:8Hz~38kHz ●インピーダンス:70Ω ●ドライバー径:40mm ●感度:95dB/mW ●重量:290g ●付属品:6.3mm金メッキジャック仕様カールケーブル(3.0m)、3.5mm金メッキジャック仕様ストレートケーブル(1.2m)、専用キャリーケース、マニュアル
全体的に高域が強い音質のため、ディエッサーの効き具合や、耳に痛い音域がよく見える印象です。ロックなど、ひずみの質感の強いものがキレよく聴こえる傾向があるので、そういったジャンルの積極的な音作りに適していると思います。逆に中低域〜低域はスッキリしている傾向です。
空間は広めで、音量を上げてもひずみにくいため、大きな音量での使用にも向いているでしょう。硬めの装着感があり、イヤパッドは耐久性が高そうです。折り畳み式で持ち運びにも便利ですね。総じて、高域が強く出るサウンドが好きな人や、シビランスなどの精密なチェックが必要な音楽クリエイター/エンジニアには特に適しているヘッドホンでしょう。この特性を理解して使用することが重要だと言えます。
非常に明瞭で、分離感があるので各パートの音がはっきりと聴こえます。打ち込みのビートに生ドラムをレイヤーする場合でも、両者の混ぜ具合を良いあんばいで決めることができそうです。リバーブのテールが分かりやすかったのも印象的。ステレオワイドや奥行きの再現にも優れているため、空間系エフェクトを追い込む作業にも適しているでしょう。
全体的に高域が強めで、音量を上げていくとボーカルが強調される傾向があるため、それを念頭において使うと良い結果が得られると思います。重量が290gなので長時間の使用でも快適で、イヤパッドのフィット感も良好でした。小さく折りたためるため、可搬性にも優れていますね。打ち込みを多用するクリエイターやビートメイカーにお薦めです。
AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+
密閉型
新技術を使った低遅延のワイヤレス接続
リッチー・ホウティンと共同開発された密閉型モニターヘッドホン。有線接続だけでなくワイヤレス接続も可能で、Bluetoothのほか、新技術W+Linkによる専用トランスミッターを使ったレイテンシー16msの接続にも対応している。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:20Hz〜20kHz ●インピーダンス:32Ω ●ドライバー径:40mm ●感度:97dB@1mW ●重量:約750g ●同梱品:ヘッドバンド(H10)、トランスミッター(X01)、スピーカーユニット(S05MKⅡ)、イヤパッド(E08)、ケーブル(C02、1.5m、カールケーブル)、ステレオ標準プラグアダプター、ヘッドホン用ポーチ(A01)
まとまりが良く、冷静に全体を見られて、楽曲間の音圧やスピード感の差が比較しやすいと思いました。ワイヤレスで使用するとより音がパリッとした感じがします。バランスの良い中域が中心になっていて、高域や低域は出すぎない印象です。暗い音はやや他機種より暗めに聴こえるので、音作りでは少し明るい方向に行くかもしれません。
定位感は民生機的なまとまりがあります。イヤパッドはクッション性が高くて疲れにくそうですね。ミックスで使うなら、ある程度仕上がった段階で聴き方が偏っていないか確認するのに使えそうです。タイトでシャープな音のビートメイクや、全体の印象を詰めながらのバランス調整に合うと思います。リスニング用としても良いのではないでしょうか。
打ち込みのビートが伸びやかに聴こえ、ほかの機種で痛くなりがちな高域は痛くならなかったので、ダンスミュージック系にお薦めです。ピアノでは中域辺りもしっかり再生されたので、奇麗めな打ち込み曲の制作にも使えそうですね。ボーカルはドラムと同等くらいの奥行きがあり、強調しすぎない印象でした。キックの超低域がややひずんだ曲もありましたが、基本的に低域はリッチで動きが見やすいです。リバーブの広がりも分かりやすいですし、音量を上げても痛くなりにくいので、アタック感の確認にも使えそうです。
W+Linkでのワイヤレス接続を試したところ、音のバランスは有線とほぼ同様で、レイテンシーもほぼなさそうでした。出先でコンパクトに作業したい人にもお薦めです。
AKG K712 PRO
開放型
ハウジング内の気流を整える独自構造
ハウジング内部の空気の流れを整える独自構造の開放型ヘッドホン。ケーブルは着脱式で、ミニXLRコネクターを採用し、人間工学に基づいて設計された3Dイヤパッドや、本革製で装着するだけで伸縮するヘッドバンドを搭載する。
【SPECIFICATION】
●形式:開放型 ●周波数特性:10Hz〜39.8kHz ●インピーダンス:62Ω ●ドライバー径:40mm ●感度:93dB SPL/mW(@1kHz) ●最大入力:200mW ●重量:298g ●付属品:3mストレートケーブル、5mカールコード、ステレオ標準プラグアダプター(ネジ固定式、金メッキ)、キャリングポーチ
音の分離が良く、ダイナミクスの表現の幅が広いです。各楽器の表現にデフォルメが少なく、生楽器はみずみずしく聴こえて没入感がありました。アコースティックギターのアタックなど中域は大きめで、低音は抑えめですが音程感が見やすいです。ミックスでは、低域や中低域がどこまで作り込めているかをシビアに教えてくれる感じがします。左右がやや広く、奥行きは少し立体的です。
オーディオI/Oに直接つなぐと少し音量感が弱い分、まとまって全体的な聴こえ方を確認できました。ヘッドホンアンプを使うと分離感やダイナミクスなどのディテールが見えるので使い分けるとよいですね。本体は軽く、イヤパッドもクッション性があります。オールマイティに使えそうな印象です。
音数は少ないけど一音一音が太いような、ミニマルな編成の楽曲を作るのに向きそうです。すごく低い音までは聴こえなかったですが、ストリーミング配信で聴こえそうな帯域の粘り気のあるベースラインが気持ち良く聴こえるので、それを生かして曲を構成していくときに役立つ気がしました。
リバーブがあまりかかっていないようなドライな曲でも周りにまとう空気感がしっかり聴こえますし、音の動きが見えやすいので繊細なニュアンスを表現しやすそうです。本体はすごく軽く、圧迫感もありません。オレンジ色が入っているのもかわいいですね。今っぽいハイファイな打ち込み曲を作るのにも良さそうですし、スケッチやプリプロの段階で使ったらかっこいい音に素早くたどり着けそうです。
Audio-Technica ATH-R70x
開放型
装着感を追求した独自構造&軽量ボディ
高磁力マグネットと純鉄製磁気回路を採用したφ45mmドライバーを搭載。約210gの軽量ボディや通気性の良いイヤパッド、新3D方式のウイングサポートで快適な装着感を追求する。着脱式ケーブルはL/Rの区別なく取り付けが可能。
【SPECIFICATION】
●形式:オープンバックダイナミック型 ●周波数特性:5Hz〜40kHz ●インピーダンス:470Ω ●ドライバー径:φ45mm ●出力音圧レベル:98dB/mW ●最大入力:1,000mW ●重量:210g(コード除く) ●付属品:ポーチ、ステレオ標準プラグアダプター
どの要素においても過不足なくまとまっている感じがします。各帯域も定位感もバランス良く調整されている印象でした。インピーダンスの兼ね合いもあると思いますが、単体機のヘッドホンアンプで駆動させた際は、よりキャパシティがあって、大きい音で聴いてもバランスが保たれる気がしました。本体は、強度の高さと軽さを両立しています。ユニットがここまで軽いのも珍しいですね。
エフェクトのかかり具合が見やすく、リミッターが過剰にかかっているとシビアに表現してくれますし、空間系エフェクトは、ぼやけたり強調されたりしにくいです。ミックス序盤でも仕事できそうだし、全体のバランスも確認できるので、1台で曲作りからミックスまで対応できそうです。
全体的にまろやかで優しく聴ける気がしました。ポップスのボーカルは少し引っ込み目なので、打ち込み系のインスト曲や楽器が主役の曲で特に使いがいがありそうです。中低域が気持ち良く、高域や中域はキンキンせずに柔らかく聴こえたので、ひずんだギターの音を作る場合や高域が強いサンプルを幾つも聴いて音を選ぶ場合などでも、ストレスなく作業できそうだと思いました。
定位感はタイトめで、コンパクトにまとまっています。音量を大きく上げてもボーカルの定位感などがほぼ変わらないので、気持ち良い音量感で長時間使えそうです。ヘッドバンドは頭にフィットする羽のような独自の形状で、本体も軽いので気持ち良く作業できそうです。
AUSTRIAN AUDIO Hi-X65
開放型
フィット感と強度を追求したパーツ選定
独自開発のHi-Xcusion(ハイエクスカーション)テクノロジーによる44mm径ドライバーを搭載する。強度を左右するパーツにはメタル素材を採用。フィット感を追求した低反発のイヤパッドとケーブルはそれぞれ交換可能となっている。
【SPECIFICATION】
●形式:開放型 ●周波数特性:5Hz〜28kHz ●インピーダンス:25Ω ●ドライバー径:44mm ●感度:110dB/V ●最大入力:150mW ●重量:310g(ケーブル除く) ●付属品:日本語製本ガイド、ケーブル(3m、1.2m)、ステレオミニ-ステレオ標準変換アダプター、キャリングポーチ
立ち上がりが速く、明るくキレがいいサウンドで、特に高域はリッチな質感です。ドラムやピアノ、弦楽器などすべての楽器がよく鳴って聴こえます。空間の広さが判断しやすく、自分で用意したミックスデータも、それぞれの音がイメージした通りの位置から出る印象でした。ミックスの序盤〜中盤で使うことで、この気持ち良い音でないと向かえないような方向に進めることができそうです。良い音で鳴る分、最終的な判断が甘くならないようには気を付けましょう。
ディテールが分かるのでエフェクトの効果も見えやすく、音楽的な空気感も分かりやすいです。モニタースピーカー代わりにもなるかもしれません。フラットでまとまりが良いヘッドホンとの2台使いがお薦めです。
輪郭がはっきりしたパワフルな音で、特にビートのスピード感が気持ち良く、キックも鳴り終わりまでしっかり聴こえました。高域は伸びやかで、ピアノやスネア、パッドなどすべての楽器で余韻も含めて奇麗に聴こえます。バンドの中でのスネアはしっかりと芯のある中域が感じられました。薄くフィルターがかかったキックの低域もリッチに鳴ったので、音をどこまで作り込めばいいかが分かりやすそうです。
開放型ですが、外の音が気にならず没入できました。リバーブは気持ち良く広がり、ステレオ感も自然で、ミックスでもメインの1台になりそうです。かっこよさを追求しつつ分離感もあるので、僕がモニタースピーカーに求める役割と近いですね。音選びから曲作り、ミックスまで使えると思います。
beyerdynamic DT 700 PRO X
密閉型
ドイツ発のSTELLAR.45ドライバー
ドイツの本社で開発された、ネオジムリングマグネットと銅製のハイテクワイヤーによるSTELLAR.45ドライバーを搭載。ベロア製のイヤパッドとスプリングスチール製のヘッドバンドにより、耐久性と装着感を追求している。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:5Hz〜40kHz ●インピーダンス:48Ω ●ドライバー径:45mm ●感度:100dB SPL@1mW/500Hz ●最大入力:100mW ●重量:350g ●付属品:3mストレートケーブル、1.8mストレートケーブル、ステレオ標準プラグアダプター、ドローストリングバッグ
すごくパワフルで、アンプの音量を絞ってもほかの機種より大きく出ました。中域が強くアナログ的な太さを持っていて、他機種でサラッと聴こえた楽器が中域の強いゴリっとした音に聴こえたりします。サイドの楽器がやや前に出る傾向があるかもしれないですが、全体的にまとまりは良いです。
特筆すべきは、ヘッドホンアンプを通すよりオーディオI/Oに直接差した方が全体のバランスが取れて聴こえたことです。バーンと来るものは気持ち良く聴こえるけど、中域の押し出しが強すぎると少し圧がある感じに聴こえたり、音圧がないものは弱めに聴こえたりするので、その辺りがミックスにどう影響するか興味があります。中域を気持ち良く聴きたい人やきちんと見張りたい人にも良いかもしれません。
それぞれの音が太く鳴るパワフルな感じでした。ベースはブリブリしているだけでなく低い成分が感じられ、キックのアタック感が同居していたので動きが分かりやすかったです。スマホだとギリギリ聴こえないけど、少し良いカーステレオでは分かるような低域は、聴こえやすさと重さを両立していて、低域の処理がしやすそうです。
打ち込みは高域やスネアの痛い部分が聴こえないというか、スネアが引っ込み気味で、ボーカルの前が空いて抜けて聴こえるような不思議な定位感でした。でもボーカルをソロにしてリバーブの聴こえ方を試したら最後まで気持ち良く伸びていて、気持ち良い高域が残っていました。ヒップホップではドラムが太く鳴って抜け感がチェックしやすそうですね。
Direct Sound DS-74
密閉型
スタジオモニター用に音質と遮音性を追求
モニタリングに適した音質と遮音性能を追求した密閉型ハウジングを採用。ボーカルのレコーディングでの使用などを想定し、周囲の騒音を低減するほか、ヘッドホンの音漏れを最小限に抑えるように設計されているという。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:10Hz~30kHz ●インピーダンス:32Ω ●ドライバー径:50mm ●感度:98dB±3dB ●最大入力:1,600mW ●重量:262g(ケーブル含まず) ●付属品:なし
レコーディングのモニターヘッドホンとして、良いパフォーマンスを発揮できるミュージシャンがいたら導入したいです。ドラマーも使える遮音性の高さを持っています。帯域的に低音はかなり弱めです。パワー感は少ないのでまとまった感じがします。バスドラやベースは少し軽めに聴こえて、音量を上げたときにひずみっぽくなる感じはないですね。上の帯域はくっきりとしていて、解像度も決して低くなく民生機的なバランスの良さや聴きやすさがあります。定位感はややサイドが強め。装着感は軽く、程良いクッション性です。
ポップスからヒップホップ、ジャズ、クラシックなど、いろいろなジャンルで満遍なくバランス良く表現します。ミックスで聴き比べるために使える解像度の高さもあると思います。
バランス良くフラットに聴けるけど無味な感じもせず、ミックスにもリスニング用にも使えそうです。生ドラムの抜けが良くて、生演奏を録音した曲も打ち込みのようなタイトさで聴こえて感動しました。空間は割と広めで、ステレオでダブラーをかけた音が前に出てきます。音量を上げるとより解像度が高くなるので、耳に痛くないレベルを探すとよいでしょう。頑丈だけど軽くて付けやすいので長時間使えそうです。
タイトにも奇麗にも聴こえるバランスの良さから、アレンジを詰める段階で、録音した生楽器の音の処理がうまく行きそうだと思いました。最終的にエンジニアへ任せる場合でも処理の方向性を見せるのは大事な作業で、打ち込みと生のどちらかに特化しすぎると気持ち良く聴かせられないんです。
FOCAL Listen Professional
密閉型
独自のトランス技術を応用した密閉型ヘッドホン
フランスで6年以上かけて開発されたトランス技術を応用したオーバーイヤー/密閉型ヘッドホン。高い音響透明度とダイナミクスを実現し、全帯域において高解像度かつニュートラルなサウンドを提供しているという。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:5Hz〜22kHz ●インピーダンス:32Ω ●ドライバー径:約39.88mm ●感度:122dB SPL@1kHz/1Vrms ●重量:280g ●付属品:専用ハード・キャリングケース、OFCカールケーブル(5.0m)、マイク付きリモコンケーブル(1.4m)、6.3mm標準プラグ変換アダプタ
リッチで滑らかなサウンドというのが第一印象でした。FOCALのモニタースピーカーと似た同社特有のサウンドを感じます。高域は滑らかに聴こえますが、例えばマーク・ロンソン「アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ」のようなバキッとした曲もしっかり再生できるでしょう。特に生音系の音源に向くと思います。
中低域〜低域はスッキリとした印象です。密閉型にしては空間が広く、音像は大きく近くに感じます。解像度が高いため音のディテールが分かりやすく、ハイエンドモニター機器のような雰囲気です。イヤパッドのクッション性は高く、肌触りが良いのも高評価。上品な質感を好む方や生音の音楽をよく聴く方は試してみてはいかがでしょうか?
どっしりとした音で、ベースの低域やブリッとした帯域、キックのアタックが聴きやすいと思いました。高域にかけてまろやかにロールオフしていく印象で、長時間の使用でも耳が痛くなることがないでしょう。つまり、爆音でテンションを上げて聴くのにも使えるヘッドホンです。低域〜中低域の強調やタイトな音質も特徴。ローエンドを意識した、今っぽい音楽を作るクリエイターやビートメイカーに向くと思います。
ステレオ感や奥行きは割とタイトです。特にテクノやクラブミュージック、キックやベースが重要なダンス系の音楽に適したヘッドホンだと思います。装着感は快適で、ヘッドバンドの耐久性が高い印象。デザインはシンプルでおしゃれなので、見た目も重視する方は要チェックです。
MACKIE. MC-350
密閉型
スタジオモニターで培った技術を採用
MACKIE.のスタジオモニターの技術を採用した密閉型ヘッドホン。人間工学に基づいたレザー製のイヤパッドとヘッドバンドを採用している。ファブリック素材を採用した3mストレートケーブルをはじめ、3種類のケーブルを同梱。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:20Hz~20kHz ●インピーダンス:32Ω ●ドライバー径:50mm ●感度:97dB ●最大入力:20mW ●重量:370g ●付属品:ストレートケーブル(3m)、マイク/PHONEコントロール付ストレートケーブル(1.2m)、カールコードケーブル(1.2m)、金メッキステレオ標準変換アダプター、プレミアム保護ケース
音のバランスがよく取れていて、うまくチューニングされていると思いました。高域が強調され、低域はベースの鳴り方のバランスが良いです。帯域の癖はありますが、好みの範囲内という感じがします。耳をうまく包み込むのでスタジオモニターとしても使えそうです。ヘッドバンドはやや狭めですが、ケーブルや本体には耐久性が考えられていると感じました。レコーディングモニターとしても試してみたいです。
アメリカっぽい、ロサンゼルスの街角で聴こえてくるような明るい音がするので、ポップスのビビッドさやブライトさがどんな雰囲気で表現されているかを客観的に判断するのに良いでしょう。程良くまとまっているものを探している人や、MACKIE.のパキッとした音が好きな人にお薦めです。
ビートやアタック感が良い感じだと思いました。低域がブーミーで中域は薄すぎず、味付けはあるもののバランスが良いので、トラックメイクで低音を感じながら素早く作業を進められそうです。左右の空間が広めで、パンニングしたスネアやリバーブが横に広く感じました。音量を下げても低域の質感が感じられるので、低音好きな人にはお薦めです。
装着したときのヘッドバンドの側圧は強めです。ブリブリしたベースを効かせたダンスミュージックなどに良さそうです。マスタリング済み音源で少し痛く感じた部分がプロジェクトファイルだと感じなかったり、生ドラムの金モノはシャリシャリしたのに打ち込みではまろやかだったりしたので、再生環境や聴く媒体によって印象が変わるかもしれません。
NEUMANN NDH 20
密閉型
持ち運びに便利な折りたたみ式
ネオジム磁石を採用した38mmダイナミックドライバーを搭載し、高感度で低ひずみを実現した密閉型ヘッドホン。スチール製ヘッドバンドで長時間の装着も快適に行え、折りたたみ式のため持ち運びに便利だという。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:5Hz〜30kHz ●インピーダンス:150Ω ●ドライバー径:38mm ●感度:114dB SPL (1kHz/1Vrms) ●最大入力:1,000mW ●重量:388g ●付属品:カールコード、ストレートケーブル、6.3mm標準プラグ変換アダプタ ●カラー:シルバー、ブラック
リッチなサウンドで、特に高域が際立ちますが滑らかな印象。ヘッドホンアンプより、オーディオI/Oに直挿しした方が高域がより鮮明に表現されました。中域では楽器のアタック成分がよく聴こえ、低域はあっさりしています。音像は広く、ステレオワイドが若干強調される傾向です。全体的に分離感があり、解像度も高いです。
リバーブの切れ具合や奥行きが明確に表現される点も評価できるため、クラシックやジャズ、アンビエントミュージック、R&B、エレクトロニカなどが特に適していると感じます。オーディオI/Oとの組み合わせで良好なパフォーマンスを発揮するので、ホームスタジオ環境での使用にも最適でしょう。Rch側にケーブルが付いている点は珍しいです。
ビートの鳴りが良く聴こえ、一音一音のリリースの再生にも優れています。不要な帯域に音が留まらない点も評価できました。全体的にカラッとした音質を持ち、ハイエンドから中域までのバランスが良いです。低域〜ローエンドは適度な量感で、曲作りの際にテンションを上げてくれるでしょう。
歌とオケの距離感を適切に表現できるため、ミックス時には音量バランスを取りやすいと思います。音の解像度は高く、奥行きや定位感は認識しやすいです。音量を上下しても音像は保たれていました。装着感は、ヘッドバンドの柔らかさや伸縮性が良いのが印象的。音質とデザインの両面でコストパフォーマンスに優れていると感じます。制作時にバランスを正しく把握するのに適したヘッドホンです。
PHONON SMB-02G 特級 SPECIAL EDITION
密閉型|セミオープン型
両出しケーブルで信号経路を最適化
ニアフィールドモニターをヘッドホンで再現することをコンセプトにしたSMB-02シリーズの最高機種。独自の4芯ケーブルを両差しにすることで信号経路を最適化。ハウジング横のプレートで密閉型/セミオープン型の変更が可能。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型/セミオープン型(オプションプレートで切り替え) ●周波数特性:10Hz~40kHz ●インピーダンス:32Ω ●ドライバー径:40mm ●感度:101dB/mW ●最大入力:1,000mW ●重量:313g(コード、プラグを含まない) ●付属品:脱着式コード(3m、両出し、4線式、LR独立グラウンド結線)、キャリングケース、オプションプレート
バランスが良くてリッチさもあり、パッと聴いて良い音だなと思いました。ミックスで音のコントラストが聴き分けられる性能の良さを感じます。高域は滑らかで、中域は程よく太く、低域は力強く量感があります。特に低音の作り方の違いが聴き分けやすく、ウッドベースでは他機種で分からなかったような重心の違いを感じることができました。音像はリアルで、モニター然とした音が頭の中で広がります。
ヘッドホンアンプと組み合わせるとより性能を発揮し、ほんの少し突破できていなかったレンジの壁がグイッと広がって高域と低域が少し伸びる感じがします。ミックスでは、序盤から低音の量感やバランスをきっちり追い込めるでしょう。高い性能のミックス用モニターを求める人にお薦めです。
全体的にパンチがあるリッチな音で、分離感もありました。ボーカルはハイファイすぎないものの抜けが良く、聴こえにくくなりがちな低いハモまで聴こえます。帯域別では、高域は出過ぎず奇麗に鳴り、中域は鍵盤楽器の繊細なニュアンスが伝わります。低音はキックの動きがよく見えました。生楽器でも打ち込みでも良いエッセンスがあり、生楽器をトラックメイカーらしく処理するときにも使えますし、ヒップホップではブーンバップの太いアナログ感を追求しやすそうです。
リッチな音の影響か、リバーブは少し膨らんで聴こえる印象です。プレート交換で密閉とセミオープンを変えられるのも面白いですね。音の見やすさと太さを兼ね備えるので、クリエイターにもエンジニアにもお薦めです。
SENNHEISER HD 600
開放型
12Hz〜40.5kHzの周波数特性を誇る
12Hz〜40.5kHzの周波数特性と低ひずみを提供するアイルランド産の開放型ヘッドホン。軽量アルミニウム製ボイスコイルを使用した38mmダイアフラムを採用することで定常波を除去し、優れた応答性を得ることができるという。
【SPECIFICATION】
●形式:開放型 ●周波数特性:12Hz〜40.5kHz ●インピーダンス:300Ω ●ドライバー径:42mm ●感度:97dB ●最大入力:500mW ●重量:約254g ●付属品:6.3mm標準プラグ変換アダプタ
とてもバランスが良く、音の解像度が高いです。高域は若干滑らかで、中域〜低域にかけては適度なレベルでモニターするのに向いています。ローエンドの量感は控えめですが、ベースの音程がしっかりと表現されるため、物足りないという印象はありません。音のサステインやリリースは明瞭で、音の太さや柔らかさまでしっかりと表現できます。
装着時のフィット感は良く、軽量で快適です。ロックからジャズ、クラシック、ダンスミュージックに至るまで、幅広い音楽ジャンルの良さを正しく表現できると思います。音量を上げ下げしても音像は変わらず良好。ダイナミクスの再現も優秀で、音楽制作において正確な判断をする際に役立つでしょう。多様なジャンルに対応できる優秀なヘッドホンです。
どの帯域も強調しない非常にフラットな音を提供してくれます。各楽器のトランジェントがしっかりと聴こえるのが特徴です。ステレオ感はややコンパクトですが、それによってミックスバランスが取りやすくなるのでむしろ好印象。音量を上げていくと音像も大きくなりますが、耳に痛くならず、ストレスを感じないという点も記憶に残りました。耳全体が包まれるため圧迫感がなく、重量も軽めで装着感も良好です。
その音質から言えるのは、エンジニアやミックスをするクリエイターに幅広く適したヘッドホンだということ。バランスが良く、特にボーカルの動きを追いながらもアレンジやミックスを行いたいときに役立つでしょう。ダンスミュージックだけでなく、バンド系の音楽制作にも適していると思います。
SHURE SRH1540
密閉型
軽量かつ耐久性に優れたデザイン
40mm径ネオジム磁石ドライバーを装備するほか、アルミ合金とカーボンファイバーにより軽量かつ耐久性のあるデザインを実現。着脱可能なケーブルやAlcantara製のイヤパッド、専用ケースと付属品も豊富に用意されている。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:5Hz〜25kHz ●インピーダンス:46Ω ●ドライバー径:40mm ●感度:99dB/mW(@1kHz) ●最大入力:1000mW ●重量:286g(ケーブルを含まず) ●付属品:着脱式ケーブル×2本(1.8m)、ステレオ標準プラグアダプター、ハードケース、交換用イヤパッド(ペア)
独特な質感の音ですね。説明が難しいんですが、丸いとか滑らかと表現するのも違う……少しビンテージのアナログコンソールを通したような雰囲気です。聴き疲れしないサウンドだと思いますね。中域から高域はニュートラルな印象で、低域はややタイトな感じです。定位感はサイドが広くて、でもセンターもしっかりあるという印象を受けました。
アナログコンソールのような雰囲気という点からも、人によって向き不向きはあると思いますが、この音で作業することでイマジネーションを刺激される人は確実にいるかなと。落ち着いた音が好きな人にはすごく合っているでしょうし、レコーディングモニターとしてもいい。ミックスにおいて、どの時点でのバランスチェックにもよさそうです。
打ち込み系の音源を試聴してみたところ、キックのアタック感やスネアのリリースの止まり方がすごく気持ち良かったです。楽曲を作っていく中で、キックの輪郭が見えていないと曲全体を作っていく際にも迷いが生じてしまうことがあるのですが、“これくらいの音量感であれば気持ち良いな”というのが判断しやすかったです。ビートが強いダンスミュージックとかなり相性の良さを感じました。
ベースも含めて低域がリッチな音像で、ベースラインの動きも見えやすい。音量を上げ下げしてみても低域のバランスが変わらないのも好印象でしたね。高域は音量を上げてもハイハットが痛くなく、おいしいところがちゃんと聴こえてきます。装着感も良く、長時間作業でも問題ないでしょう。
ソニー MDR-MV1
背面開放型
超広帯域再生を実現する開放型ヘッドホン
ヘッドホン内部の反射音を低減するために、背面開放型を採用。新規開発された40mm径のドライバーを搭載し、5Hz〜80kHzという超広帯域再生を実現している。360 Reality Audioなどの立体音響制作など、幅広い用途に対応する。
【SPECIFICATION】
●形式:背面開放型 ●周波数特性:5Hz〜80kHz ●インピーダンス:24Ω ●ドライバー径:40mm ●感度:100dB/mW(@1kHz) ●最大入力:1500mW ●重量:約223g(ケーブルを含まず) ●付属品:ヘッドホンケーブル(TRSフォーンプラグ)、TRSフォーンからステレオミニ・プラグ変換アダプター
音楽のキレやスピード感も含めて、色付けなく奇麗に表現してくれます。現代的でハイファイなサウンドというか、僕の考える原音忠実を実現している印象ですね。帯域ごとの特徴も正しく中庸といった具合で、その上ダイナミックレンジは広く、伸びがあり、定位感も広すぎず狭すぎずでちょうど良い。低音の“ゴボッ”という音など、ノイズが発生してしまっているのを見つけるのにもかなり役立ちそうです。
昔は開放型のヘッドホンって音が散ってしまう印象を持っていたんですが、そういった印象はなく本当によくできているなと。とにかくフラットな音を指向している方には最適です。低域や高域が少し飛び出しているといった部分も精細に見えるので、マスタリング用途にもいいと思いますよ。
第一印象としては、すごくクリアな音像だなと。自分のプロデュースワークを聴いてみたんですが、“そういえばこういう音を入れていたな”というのを思い出せました。分離が良く楽曲の全体像を把握しやすいように感じます。バランスを取る際にかなり有用なのではないでしょうか。普段自分のスピーカーで聴いているローエンドの出方まできっちり表現されていたのには驚きました。
僕はコライトセッションでさまざまなところに行きますが、場所によってスピーカーも異なります。そんなときでも本機をリファレンスとして1回聴けば、どこでもフラットな音でチェックできそうです。とても軽くて着け心地が良いので、持ち運びにも向いていますね。
TAGO STUDIO T3-01
密閉型
こだわり抜いた素材や設計を採用
群馬県高崎市のレコーディングスタジオTAGO STUDIOがリリースするヘッドホン。木製のハウジング、シルクプロテインコーティングを施した振動板など、デザインからパーツ一つ一つの設計にまでこだわりが感じられる。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:5Hz〜40kHz ●インピーダンス:70Ω ●ドライバー径:40mm ●出力音圧レベル:100dB SPL/mW ●最大入力:1000mW ●重量:約321g(ケーブルを含まず) ●付属品:ケーブル(1.8m、Y型、着脱式)、ステレオ標準プラグアダプター、キャリングケース
音楽を気持ち良く聴けるヘッドホンですね。明るくてリッチな音で、解像度も高いです。低域周辺のバランスもすごく整っていると思います。空間も広く、ナチュラルな生々しい音像で、スタジオでモニターしているサウンドに近い印象があります。
ジャンルとしては、リッチで太さのある点がアコースティックな編成に向いているかなと。あとは音の立ち上がりが速いので、ミュージシャンがレコーディングする際のモニターにもいい。気持ち良く演奏できると思います。着け心地が柔らかく、イヤパッドが耳をすっぽりと包み込んでくれます。パーツにもこだわっているのが感じられますし、すごく丁寧に作られているのが好印象です。
まず高級感のあるデザインがかっこよくてテンションが上がりますね。サウンド面では、ボーカル表現のリッチさを感じました。ダブルにしたときの重なり具合や低域感、息づかい、リバーブのテイルなど、どのようなボーカル処理を行っているのかが細部まで伝わってきます。音量を上げてみても痛くならず、まろやかな感じで聴こえてきました。低域に抜けがあり、Roland TR-808的なベースのフレーズも分かりやすいです。
まさに見た目通り、高級なオーディオ機器のような雰囲気を持っています。向いているジャンルとしては、やはりボーカルがメインのポップスかなと。2ミックスを最終判断するときにもいいと思います。
ULTRASONE Signature PURE
密閉型
上位機種と同じ独自のS-Logic 3技術を採用
ULTRASONE Signatureシリーズのエントリーモデルとして誕生。上位機種にも搭載し、自然なサラウンド再生を実現するというS-Logic 3技術を採用する。厚さ25mmのイヤパッドなど、長時間使用も想定された設計となっている。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:8Hz〜35kHz ●インピーダンス:32Ω ●ドライバー径:50mm ●出力音圧レベル:114dB ●マグネット:NdFeB ●独自技術:S-Logic ® 3 テクノロジー/電磁波低減 LE テクノロジー ●重量:約294g(ケーブルを含まず) ●付属品:着脱式カールケーブル(2m)、ステレオ標準プラグアダプター、イヤパッド、キャリングバッグ
ビートやベースのドライブ感、歌の明るさ、エフェクトのかかり具合などがストレートに伝わってきました。帯域もフラットでバランスが取れているのですが、帯域そのものがフラットというより、表現にバイアスがないというか……楽曲の個性をそのまま表す音楽的なモニターヘッドホンと言えますね。とても聴きやすいサウンドなので、作業もサクサク進められると思います。
空間表現は変に広がりすぎずにまとまっていて、良しあしを判断できる情報はしっかりと聴こえてきます。ULTRASONEのヘッドホンをきちんと試したのは初めてだったのですが、本当によくできていると感じましたね。どんなジャンルにおいても違和感なくモニターできるでしょう。
全体的なバランスが良く、ドラムのリリースの先端まで聴き取れて音像も広いです。ビートの鳴りは今回試した中でもかなり好みでした。音量を下げてもそのバランスの良さが保たれていました。装着感がしっかりしていて、周囲の音がしっかり遮断されて没入できることも、適正な音量で作業できる一因になっているのかなと。どうしても音量を大きくしないとかっこいい音が作れないと考えている方も多いと思いますが、そうじゃないということを、本機を使って体感してみてほしいです。
すごく頑丈に作られているのがデザインからも感じられます。この音が3万円台で手に入るというのは、コストパフォーマンスに優れていると思いますね。
YAMAHA HPH-MT8
密閉型
高い遮音性を誇るMTシリーズの最上位機種
YAMAHAが展開するスタジオモニター・ヘッドホンMTシリーズの最上位版。CCAWボイスコイル採用の45mmカスタムドライバーを搭載。オーバーイヤー&密閉型デザインで高遮音性を実現し、大型イヤパッドで快適性も兼ね備える。
【SPECIFICATION】
●形式:密閉型 ●周波数特性:15Hz〜28kHz ●インピーダンス:37Ω@1kHz ●ドライバー径:45mm ●感度:102dB/mW ●最大入力:1,600mW@1kHz ●重量:350g ●付属品:6.3mm標準プラグ変換アダプタ、ストレートケーブル(3.0m/脱着式)、コイルケーブル(1.2m/脱着式)、キャリングバッグ(合皮)
全帯域においてバランスが良く、特に挙げるとすれば高域は明るくクリアなサウンド。中域は音が速く届く印象で、シンセベースやスネアのアタック成分が際立つ傾向です。低域は程良く出ており、特にサブベースは適切に再生されるでしょう。ボーカルが前面に出る印象ですが、空間表現はスタジオモニター寄りなので奥行きをしっかり感じられます。
リミッターで処理された音がかっこよく聴こえやすいため、ミックス時にはこの特性を考慮しましょう。イヤパッドは厚すぎず、長時間の使用にも適しています。デザインは王道的な印象ですが、折りたたみ可能である点は高評価です。比較的お手頃な価格なので、エントリーレベルのユーザーにも推奨したいですね。どの点においても好印象を持ちました。
周波数特性のバランスが良く、全体的な音の解像度が非常に優れています。特にスネアの再現性が素晴らしく、高域がつぶれず明瞭な印象を受けました。低域は音割れせずにキックをリアルに表現します。ボーカルの鮮明さやリバーブの再現性も高く、打ち込みのオケは各楽器が分離良く聴こえる印象です。
他機種と比べても十分な広がりと奥行きがあり、楽曲制作時に求める情報量をしっかりと提供してくれます。音量を上げ下げしても音のバランスが崩れないため、ミックス作業にも適しているでしょう。想像以上に付け心地が良く、長時間の使用でも快適でした。密閉型で適度な遮音性を備えているのもポイントです。コストパフォーマンスに優れているため、エントリーレベルのユーザーにもお薦めできます。
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