常日頃から周りのエンジニアたちとプラグインについての情報交換を欠かさないというベテラン・エンジニア、森元浩二.氏。お薦めの未来系プラグイン・エフェクトや、その使い方などを聞いてみよう。
プロもアマチュアも道具が一緒の時代、あとはもうスキルとセンスを磨くしかないでしょう
【Profile】prime sound studio formのチーフ・エンジニア。これまでに浜崎あゆみ、AAA、DA PUMP、など、ジャンルを問わず数多くのアーティストの作品に携わる。
ー近年、AI搭載型やマルチエフェクトなど、従来よりも進化したプラグインが増えてきました。
森元 昔はコンピューターの処理能力が足りなかったので、複雑なプラグインはあまり使えませんでしたが、今はCPUのスペックも上がったので、好きなだけ使えて幸せだなと思います。またIZOTOPE RXのMusic Rebalanceで2ミックスからボーカルやベース、打楽器などのバランスを変更できますが、それらは非常に高い精度で驚きますね。
ー森元さんがお使いの未来系プラグインは?
森元 IK MULTIMEDIAのT-Racks 5やLurssen Mastering Consoleは絶対に使っています。T-Racks 5を購入したのは、当時AVID Pro Toolsでミックスをやるようになり、これまで使っていたマスタリングEQのSONTEC MES-432Cのモデリング・プラグイン、Master EQ 432モジュールが同梱されていたからです。
ーT-Racks 5とLurssen Mastering Consoleは、どのように使っていますか?
森元 T-Racks 5は各モジュール単体でも使いますが、基本的には両者ともマスターにインサートしています。T-Racks 5では内部で独自のチェインを組んでいますね。最初にコンプのDyna-Mu、次にMaster EQ 432、その後にOne、最後にBrickwall Limiterという並びが多いです。これらのモジュールはハードウェアの代替的なものですが、各モジュールを細かく調整できるのでありがたい。エンジニア好みな感じです。またLurssen Mastering ConsoleやIZOTOPE Ozone 9は、プリセットがよくできていますね。
ーT-Racks 5には、自動マスタリング・プロセッサーのMaster Matchも同梱されていますよね。
森元 あくまでも参考用として、チェインの最後に入れています。提示されたEQカーブを見て、どの周波数帯域やトラックを調整すべきなのかが分かりやすい。Ozone 9のTonal Balance Controlも良いですね。
ーほかにお薦めのプラグインは?
森元 WAVESが出しているクリス・ロード=アルジ氏のシグネチャー・プラグイン・シリーズ。特にCLA Bass、CLA Drum、CLA Vocalなどはよく使います。通しただけで好みの音色になるのでそれを味わいつつ、各パラメーターをいじっていくのが好きです。CLA Vocalでは、高域を上げたときのコンプのかかり具合やL/Rに広がる感じが簡単にできて便利ですね。直感的に試せるのが良いのですが、一番大事なのはインプットのボリューム・レベル。それによってスレッショルドのかかり具合や、各パラメーターのドライブ感が大きく変わるので、非常に気を遣っています。
ーこれからの未来系プラグインについて思うことは?
森元 プロの視点としては、ちょっと迷惑だなと……冗談ですけど(笑)。アマチュアもプロも道具が一緒の時代になったので、プロはもうスキルとセンスを磨くしかないでしょう。最終的には完成したときのサウンドが大事ですから。
ー良いセンスを身につける方法は?
森元 たくさん好きな音楽を聴くこと! 耳を育てるというか、何も考えなくても好きなサウンドを表現できるようしないと。結局は、自分がどんな音にしたいのかだと思います。