マイクやプリアンプ、オーディオI/O、スピーカー、プラグインなど、音楽制作で必要となってくる機材はさまざまです。多くのメーカーがしのぎを削って新たなモデルを開発し、毎年多彩な音楽制作機器/ソフトウェアが登場しています。そのたびにクリエイターたちは物欲と闘い、自身の環境や予算を考慮しながら頭を悩ませるのです。特にステイ・ホームという言葉が定着した現在では、自宅の制作環境を整えようと考えている人も多いことでしょう。この企画では、19名のアーティスト/クリエイター/エンジニアに、今すぐ導入しやすい価格帯で欲しい機材、読者にお薦めしたい機材を聞いてみました。プロはどんな製品に注目してどのようなところに魅力を感じているのでしょうか?
AZUMA HITOMI
[Profile]シンガー・ソングライター/サウンド・クリエイター。2014年に2ndアルバム『CHIRALITY』をリリース。アナログ・シンセサイザー・カルテット、Hello,Wendy!のメンバーとしても活動している。
[Recent Work]
E-RM Polygogo
69,500円
私が欲しいのは、ポリゴナル(多角形)シンセシスを採用したデジタル・ステレオ・オシレーターのE-RM Polygogo。ディスプレイに映る多角形の頂点が押しつぶされ線になってくるくる回ったり、スライスされてグニャグニャに変調されたりする様子を、ビジュアル的にも楽しめるモジュールとなっています。デジタル・オシレーターということで、FM変調の迫力には期待大。低音のうなりと高周波の狂ったグリッチが気持ち良さそうなので、とにかく感覚的に波形をいじり倒したいです。大胆にオシレーターを楽器として演奏するパフォーマンスもやってみたいですね。アナログ・オーバーフロー出力の凶悪なサウンドとともに、液晶のドットがビッグバンする奇跡の発振をつかまえたい! まずはドローンやノイズ、グリッチとしてのイメージがわいてきますが、その興奮が落ち着いたらシーケンサーをシンクさせて、ベースやリードの音色としても丁寧に仕上げたいです。蛍光黄色の文字デザインもかわいい!
牧野英司
[Profile]レコーディング・エンジニア。新宿LOFTのPAとして音楽業界に飛び込み、マグネットスタジオ、STUDIO TWO TWO ONE、ゲッツに所属。その後フリーランスを経て、2009年にホーム・グラウンドとなるプライベート・スタジオのatelier Qを設立した。
[Recent Work]
『僕らの感情崩壊音』
みるきーうぇい
(ユニバーサル)
僕らの感情崩壊音【CD】 | みるきーうぇい | UNIVERSAL MUSIC STORE
GENELEC 8010A
オープン・プライス(市場予想価格:39,000円前後/1基、ダーク・グレー)
昨今はご時世がら、自宅や旅先での作業が増えています。そうなるとヘッドホンやイヤホンでの作業になりがちですが、やはりスピーカーを鳴らしてエア感を確認することが大事です。8010Aはスーツケースでの運搬も可能なサイズで、お薦めでもあり買いたいとも思っている機材の一つ。普段はGENELEC 8341Aがメイン・モニターなので、それとの互換を考えても最適です。手の平サイズながらも、歌モノのエディットやTV用のミックスなどに対応できます。少し前まではラジカセなどでミックスの確認をしていましたが、イヤホンやコンピューターのモニターがリスニングの主流となってる状況を踏まえ、このサイズ感のモニターは重宝すると思っているのです。
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鈴木Daichi秀行
[Profile]幅広い音楽性を生かして活動するサウンド・プロデューサー。自身のレーベルStudio Cubic Recordsも運営する。レーベル所属バンドのNon Stop Rabbitは、昨年アルバムでオリコン・デイリー・ランキング1位を獲得した。
[Recent Work]
BLACKMAGIC DESIGN Atem Mini Pro
67,980円
僕がお薦めしたい機材はビデオ・スイッチャー。音楽機材ではありませんが作品を積極的に公開する上で、映像コンテンツの作成や映像配信は当たり前になってくると考えています。音楽家もある程度の映像編集スキルがあると、活動の幅も広がってきますから。Atem Mini Proは今まで数十万円かかっていた動画配信に必要な機材の機能が、コンパクトにまとまった製品。動画や映像機材について初心者でも扱いやすく、コスト・パフォーマンスに優れています。USB接続でWebカメラなどと同じようにUSBカメラとして認識されるので、ツールやソフトを問わずに使えるところも良いですね。マルチカメラでのオンライン・ライブなども簡単にできるので、これからの時代はこういった機材が1スタジオに1台必須になるのではないでしょうか?
【デジマートで探す】
Hiro
[Profile]国内のメタル・プロダクションを数多く手掛ける、STUDIO PRISONERの主催者/エンジニア。NOCTURNAL BLOODLUSTやCrystal Lake、Unlucky Morpheusらの作品に携わってきた。
[Recent Work]
SHURE SM7B
オープン・プライス(市場予想価格:53,300円前後)
名盤のシャウトに多く使われてきた、メタルにおける伝説的なダイナミック・マイクのSHURE SM7B。コンデンサー・マイクだとシャウトがうまくまとまらない、といった悩みを持つ方にお薦めです。実際に長年レコーディングに使用してきましたが、ハンド・マイクでも扱えて、音圧の高いシャウトを余裕で受け止めます。また、ハイハットやギター・アンプとも相性が良いため、汎用性が高いのもポイント。この価格帯で長く使えるマイクは貴重な存在です。スウィート・スポットの狭さだけが弱点ですが、その分周りのノイズを拾わず声にフォーカスします。収音軸さえ守ればコンデンサー・マイクに引けを取らない解像度でキャプチャーできる上、パンチ力を得ることが可能です。もともとはナレーションに向けて作られたマイクということで、重厚な雰囲気で声を引き立ててくれるのも納得できます。
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