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SAKA-SAMA × 米津裕二郎 〜360 Reality Audioプロダクション・レポート

SAKA-SAMA × 米津裕二郎 〜360 Reality Audioプロダクション・レポート

エンジニアの米津裕二郎氏がタッグを組んだのは、TRASH-UP!! RECORDSの屑山屑男氏がプロデュースするアイドル・グループで、寿々木ここね(写真左)と朝倉みずほ(同右)からなるSAKA-SAMAだ。作詞/作曲をmekakushe、アレンジをTomgggが手掛けた今回の楽曲「ライラック・ランデブー」は、グリッチ・サウンドを存分に取り入れたエレクトロニック・ミュージックと切ないメロディの融合作。360 WalkMix Creator™の球体空間内を各パートがのびのびと動き回る。

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360 by deezerでもお楽しみいただけます。

【動画】SAKA-SAMA × 360 Reality Audio

【動画】米津裕二郎 × 360 Reality Audio

短い音の方がパンニングしたときに映える

 完成した曲を聴いて「歌を録るとき、こんなふうになるとは全く想像できませんでした……」と驚くのは寿々木。続けて「普段聴いている音楽と全然違う。頭にとても近い距離で音が鳴るんです!(笑)」と朝倉が語る。彼女らの反応を見て“ニヤリ”と笑う米津氏は、今回のメンバーについて語る。

 「ブッ飛んだ曲かつ、良い曲であることを両立させたいと考えたときにすぐ思い浮かんだのがSAKA-SAMAでした。そこで作詞曲をmekakusheさんにお願いしたいとプロデューサーの屑山さんに提案したんです。すると今度はmekakusheさんから“そういうことならアレンジはTomgggさんがぴったりですよ”とご提案いただき、今回のメンバーがそろいました」

 この話を受けたTomgggは笑顔でこう答えてくれた。

 「僕は大学では“立体音響”をずっと学んでいたんです。当時、立体音響と言えばアート系の作品が主流だったのですが、今回はそれを“ポップス”で、しかも“アイドル”が歌う曲でできるので、ものすごくうれしかったですね!」

 「アイドルだからこそできる自由さがある」と言う屑山氏に続いて、「つまらないことはしたくなかった」と話す米津氏。

 「Tomgggさんへのオーダーは必要最小限にとどめようと思い、“長い音より短い音の方がパンニングしたときに映えるかもしれない”ということを伝えさせてもらいました」

 米津氏は、mekakusheから“楽曲に込めた思い”をこう聞いたという。

 「ライラックの花言葉“初恋”がキーワード。SAKA-SAMAのお二人はアイドルでありながらアーティスティックな面も持ち合わせていて、今回はその両方の良さを堪能できる楽曲になったと思います」

Tomggg(写真左)とSAKA-SAMAのプロデューサー屑山屑男氏(同右)。屑山氏は「僕は映画が好きなのでこれまでに5.1chのホーム・シアターを体験したことがあるんですが、360 Reality Audio はそれよりもはるかに刺激的な体験でしたね!」と話している

Tomggg(写真左)とSAKA-SAMAのプロデューサー屑山屑男氏(同右)。屑山氏は「僕は映画が好きなのでこれまでに5.1chのホーム・シアターを体験したことがあるんですが、360 Reality Audio はそれよりもはるかに刺激的な体験でしたね!」と話している

オブジェクトを周波数帯域ごとに分けて鳴らす

 米津氏の元へ集まったトラックは、バスでまとめた結果、約120近くに上ったそう。まずはステレオ・ミックスを完成させた後、ステムにまとめて書き出し、今度は360 WalkMix Creator™上でそれらをミックスしたという。

 「360 Reality Audioのミックスはスピーカーを使わずにヘッドホンのみで行いました。リスナーもヘッドホンやイヤホンで聴く人の方が多いでしょうし、音処理としてやらなきゃいけないことは既にステレオ・ミックス時に終わっているので。あとはもう皆さんが聴く環境で調整していけば、きっと良い形で届けられるだろうと。モニタリング用のヘッドホンにはソニーのWH-1000XM4を中心に、一般的なイヤホンなども幾つか使っています」

「ライラック・ランデブー」の360 WalkMix Creator™画面。今回、米津氏は360 Reality Audio認定ヘッドホン、ソニーのWH-1000XM4を中心に、ヘッドホン/イヤホンのみでミックスしたそうだ

「ライラック・ランデブー」の360 WalkMix Creator™画面。今回、米津氏は360 Reality Audio認定ヘッドホン、ソニーのWH-1000XM4を中心に、ヘッドホン/イヤホンのみでミックスしたそうだ

 最初は試行錯誤しながらオブジェクトを配置していったと語る米津氏。

 「ここに置いたら気持ち良いな、っていう感覚優先で進めました。一つ分かったのは、オブジェクト・ベースのオーディオは、音量を上げても音像が大きくならず、単にうるさくなるだけということ。そのためAVID Multiband Splitterというプラグインで、楽器を周波数帯域で分けてオブジェクトを増やしています。それらを違う位置にパンニングすることで音像を大きく表現することができるんです。キック、ベース、ピアノやシンセでこういったアプローチを行っていますね」

 そう語る米津氏だが、リバーブはほぼ使わなかったそう。

 「オブジェクトを置く位置によって響きが変わるため、それだけで十分空間の表現ができました。これは素晴らしいですね。それと楽曲の音圧に関しても特別なことはしていません。既に2ミックスを行ったステムを使用していたので、ある程度は勝手に仕上がると思っていたのと、こういった作品は一般のステレオ作品と違うステージに居ると考えているからです。楽しみ方はリスナーが決めることだと思っています」

 最後に米津は、イマーシブ・オーディオ・ミックスにおける自身のこだわりをもう一つ教えてくれた。

 「現実世界では発音体は常に振動しているので、オブジェクトも絶対に微動している方がいいと思っていて。そうすることで音に奥行きが出て、空間の認知度もが上がるんです。音が生き生きとしてくるので、ぜひ試してみてください」

AVID Pro Tools上でキーボードに描かれたAzimuthとElevationのオートメーション・トラック。振動を再現している

AVID Pro Tools上でキーボードに描かれたAzimuthとElevationのオートメーション・トラック。振動を再現している

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