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API SR22 / SR24 / T12 / T25 〜Rock oN Monthly Recommend vol.40

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 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回紹介するのはAPIが新たにリリースしたSR22、SR24、T12、T25の4製品。それぞれ2chコンプレッサー、2ch4バンドEQ、2chマイクプリ、2chコンプレッサー&リミッターとなっており、API Selectというシリーズに属するアウトボードだ。レギュラー・ラインとは一味違ったこれらの製品について、ミックスウェーブの長岡飛雄氏、メディア・インテグレーションの佐々木一成氏に話を聞いた。

 

●まずはAPI Selectシリーズについて教えてください。

長岡 APIのセカンド・シリーズという立ち位置です。レギュラー・ラインについてはAPIのフィロソフィー……ディスクリート、OPアンプの2520、オリジナルのトランスを採用するなど、APIコンソールの血統を受け継いだものがラックやAPI 500互換モジュールになっています。一方、API Selectは手に入りやすい価格帯に落とし込んでいるというだけでなく、より自由度を持たせて作っているラインです。今回の4製品以外にはTranzformer GTR、Tranzformer CMPといったペダル・エフェクトもラインナップしています。

佐々木 新しい風になるようなラインですね。APIの中でも若いチームが設計していたりするのですか?

長岡 回路設計に関してはベテランが担当したりもしていますが、コンセプトなどについては若いスタッフが考えているようです。今までの考えにとらわれることなく、より市場に耳を傾けて作られている気がしますね。

 

●今回の4製品には、それぞれSR、Tという型番が付いています。どのような違いがあるのでしょうか?

長岡 SRの2製品は、過去にAPIが手掛けていたコンプとEQを元に、パーツなどをリフレッシュして作られたものです。Tの2製品は真空管を搭載したモデルで、全く新しいコンセプトの下で製作されています。

佐々木 最初に見たときは、低価格ラインを作り、その中で真空管の搭載/非搭載で分けているのかと思いましたが、それぞれ全く違うものなんですね。

 

●ではそれぞれの製品にフォーカスしてお聞きしていきます。SR22はどのようなコンプレッサーなのでしょうか?

長岡 APIは1999年にATIというグループの傘下に入りました。ATIではParagonという有名なPAコンソールを開発しており、そのコンソールの機能を抜き出してラック化しようと、APIがJDK AUDIOというブランドを作ったんです。そこで生まれたR22という製品を元に開発したのが、今回のSR22。フロント・パネルが一新され、コンポーネントの見直しも行われています。比較的ナチュラルなコンプ感で、過剰にかけても音が破綻(はたん)しにくいです。サイド・チェイン・フィルターのTHRUSTという機能を備えていて、低域の自然さをキープしたままコンプレッションすることができます。

API SR22

171,600円

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2chコンプレッサー。PAコンソールのATI Paragonと同じコンプレッサー回路が採用されている。2つのチャンネルをリンクして、ステレオ・コンプレッサーとして使用することも可能だ

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ノブはTHRESHOLDとRATIO、GAINの3つとシンプル。入力音に合わせてナチュラルなコンプレッションが得られるという。ハイパスを通した音をサイド・チェイン入力として使うことができるTHRUST機能も備わっている

 

●SR24もJDK AUDIO製品が元になっていますか?

長岡 もちろんその技術は受け継がれているのですが、SR24はAPIがOEMをしていたAPSIというブランドのEQ、562を元にしています。非常に音楽的に効いてくれて、イメージ通りの音作りがしやすい4バンドEQです。APIのレギュラー・ラインのEQだとパンチやアタック感が強過ぎるという場合は、SR24のナチュラルな効き具合が合うかと思います。全体の質感を広いQ幅で調整できるような印象です。

佐々木 SRの2製品はT12/T25と比べてさらに低価格ですね。どのようなターゲット層を考えているのですか?

長岡 やはり自宅制作をされている方などですね。アメリカではミュージシャンが自宅に居る時間が増えたこともあって、ハードウェア導入率がすごいみたいで。しかし、ハードウェアをいろいろとそろえるのはとてもお金がかかることです。リーズナブルでありながら価格以上の性能を持ったアウトボードを作ろうと生まれたのがSR22とSR24になります。コンソールも開発し、膨大な高品質パーツを保有しているAPIだからこそできた製品です。操作性もシンプルで余計な機能も付いていないので、比較的クリエイターに向いたコンプとEQだと思います。

API SR24

171,600円

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1970年代後半~1980年代前半に作られていたAPSI 562モジュールを再現した2ch4バンドのパラメトリック・イコライザー。各バンドの周波数とゲインのノブは無段階での調整ができる

 

●続いては真空管を搭載したT12とT25です。APIが真空管を搭載するというのは驚きですね。

長岡 T12とT25は、筐体を開けて回路を見たときに“これはいいな”と感じました。広大なスペースの中で回路の居場所にゆとりを持たせているんです。API製品は制約されたスペースの中にパーツをぎっしり詰め込む技術に長けており、その上で求められる特性を出しているという傾向がありました。そういった流れから解き放たれて、“自由度を持った設計をする”という意図が感じられたんです。

 

●T12はマイクプリです。APIのパンチ感に真空管の特性が加わったハイブリッドなサウンドになっているのですか?

長岡 APIに足りない部分を補ってくれるイメージです。APIのスピード感やトランジェントの良さに、真空管を使った倍音が乗ってくる。とても抜けが良いサウンドです。ゲインを上げれば真空管らしいコンプレッションも加わります。また、DIの音がすごく良い。ちゃんとピークが取れる感じで、アンプ・シミュレーターの前などにT12を通すのはお勧めできます。

佐々木 真空管の回路はどこに位置しているのですか?

長岡 プリアンプ・ステージとアウトプット・ステージの2カ所に用意されています。マッチドペアとなっており、そこにも抜かりありません。

API T12

286,000円

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2chの真空管マイクプリ。プリアンプ・ステージに12AT7WC、アウトプット・ステージに12BH7を搭載する。またインプット・トランスにはAP2516、アウトプット・トランスにもカスタム製のものを採用した

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Hi-Zインプットも搭載。真空管DIとしても活用できる。マイク入力インピーダンスも切り替えができ、ここでもサウンド・キャラクターの調整が可能だ

 

●コンプレッサーのT25も真空管を搭載していますが、FETと表記されていますね。

長岡 コンプ回路はFETとなっていて、真空管はアウトプット・ステージにあります。FETコンプはアタックもリリースも速いですが、アタックが漏れてしまったときに音楽的に聴こえないことがあります。その漏れてしまったピークがアウトプットの真空管で丸まるわけです。FETと真空管コンプの良いとこ取りと言えるでしょう。APIサウンドを保ちつつ真空管のドライブも合わせ、より幅広い音を実現した機種です。アウトプット・トランスもあるので、プッシュすることでトランスと真空管両方の倍音を付加するといった積極的な音作りも行えます。

API T25

286,000円

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2chのFETフィードバック・スタイルのコンプレッサー/リミッター。T12と同じく真空管12AT7WCと12BH7を採用している。デュアル・モノラルまたはステレオ・モードで使用可能

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FETコンプのため、アタック・タイムが20μs〜0.8msと速い。SR22と同じくTHRUST機能があるほか、より高域部分を抑えることに特化したディエッサー機能も有する

 

●APIの新たな考えが具現化された4製品で、これまでのAPIのイメージにとらわれず、いろいろな方に使ってもらえそうなラインナップですね。

佐々木 それでいて低価格なのが魅力です。例えば、安めのマイクだと高域がシャリシャリしていて太さが足りないから真空管マイクを買う、という人もいますが、まずはマイクプリをT12にしてみるというのも選択肢としてありだと思います。

長岡 安いなりのクオリティではなく、上位機種にも使われるようなパーツを使って仕上げられているのも好感が持てます。若い世代のアイディアを取り入れ、“新しいことをやっていかなければ”とAPI自身が考えを持って作ったことが伝わるプロダクトになっていると感じますね。

 

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ミックスウェーブの長岡飛雄氏(写真左)、メディア・インテグレーションの佐々木一成氏

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