注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞く本連載。今回はAPOGEEのオーディオ・インターフェース、Duet 3を紹介する。コンパクトかつAPOGEEならではのハイクオリティな音で制作ができるDuetは、自宅制作を行うクリエイターから、出先で作業をするエンジニアまで、さまざまなユーザーとシーンで使われてきたモデル。第3世代となるDuet 3ではさらにそのコンパクトさを追求しただけでなく、DSPまで搭載して性能の向上も見せてくれている。メディア・インテグレーションの並木大輔氏とRock oNの天野玲央氏に話を聞いた。
Photo:Hiroki Obara(メイン)
APOGEE Duet 3
77,000円(9月30日までのイントロ価格。10月1日以降は80,300円)※8月17日追記
●APOGEEというと海外アーティストが好んで使っている印象があります。
並木 昔からUSA製というのを売りにしているメーカーです。このDuet 3は中国製ではありますが、APOGEEは基本的にメイド・インUSAで開発してきています。また、コンバーターを作ってきた会社として30年以上の歴史を誇るので、音質の良さというのは広く知られているんです。Duet FireWireが出たときはものすごく反響がありましたね。APPLE Macと並べたときのデザインの親和性の高さも、これだけの評価をいただいている理由と言えます。前モデルのDuetもこれまでに相当な台数を販売してきました。モバイル用途が一番多いのかと思いますが、さまざまなシチュエーションに合わせて使えるのがDuetの魅力です。コンバーターの質が非常に高いので、DAコンバーターとして使われる方もいらっしゃると思います。
天野 一番の決め手になるのは音質ですね。SymphonyでもDuetでも、同価格帯の他社製品と比較試聴して、最終的にAPOGEEを選ばれるお客様は多いんです。Macとの親和性は、デザインだけでなく動作の安定性も挙げられます。“Macで使うならAPOGEE”というイメージもありますから。もちろんDuet 3はWindowsでも使用可能です。
●APOGEEの音質というのはどういったイメージでしょうか?
天野 明るいけど上品な感じがするというか。もちろん人それぞれの好みがあって、もう少し低域にパンチがあるサウンドの方が良いと感じる人もいると思いますが、APOGEEは高域の抜けが良く、音源全体に軽く照明を当てたように、少し明るくなるような印象です。
並木 APOGEEはひずみ率も低く作られており、とにかくノイズが少ないです。A/DやD/Aでコンバートをしたときの音質劣化をどれだけ抑えるのかということに重きを置いているメーカーなので、音のクリアさやみずみずしさというのはAPOGEEのどの製品にも共通していて、今回のDuet 3にも引き継がれていると思います。
●Duet 3はよりコンパクトなボディとなりましたね。
並木 MacBook Proの厚さと同じくらいですし、並べたときの親和性はさらに高くなっていると感じますね。持ち運び用途も考えているので、傷付きにくい強化ガラスを採用しています。それが見た目の高級感にもつながり、ユーザーの所有欲も満たしてくれるんじゃないかと思いますね。
天野 入出力はブレイクアウト・ケーブルを使うことになりますが、使い勝手についてはAPOGEEもしっかり考えていて、本体に取り付けて使える、各接続端子が用意されたDuet Dockがリリースされます。最初から本体に端子や操作子をすべて搭載しないことでモビリティを保っていますね。出先ではレコーディングではなく、音の確認くらいで使ったりということも多いと思いますし、使い方による選択ができるのは他社製品ではなかなか無いことでしょう。
●本体上にはロータリー・エンコーダーが1つ備わっているだけです。ここではどのような操作ができますか?
並木 押し込んでチャンネルを切り替え、回すことで調整するというシンプルさです。メイン・アウトとヘッドフォン・アウトのボリュームや、マイク・ゲインのコントロールが行えます。
●詳細な設定はソフトウェアのApogee Control 2で行うわけですね。
並木 2系統のミキサーが備わっており、メイン・アウトとヘッドフォン・アウトへ別々の信号を送ることが可能です。ライブでモニターへ送る音とPA側へ送る音を分ける、ということももちろんできます。
天野 Apogee Control 2は操作しやすいデザインになっていると思います。中には、ページをめくっていかないと目的の機能にアクセスできないソフトウェア・ミキサーもありますが、Apogee Control 2は基本的に一画面で完結していて、動かしたいところにすぐ手が届く。画面の一番右側にメイン・アウトとヘッドフォン・アウトのボリュームがあって、DAW画面の右側を縮小しておくことで常にそこへアクセスできるのが個人的には便利だと感じます。
●入力は2インとなっています。マイクプリのサウンドはいかがでしょうか?
天野 A/DもD/Aと共通するサウンドの特性だと思いますが、クリアで正確と言えど冷たいわけではないです。聴いていてさっぱりと気持ちが良いと言うと抽象的ですが、ちゃんと音楽への熱が入るような変換をしてくれるイメージ。音像がとても大きく録れる印象です。ボーカルなどを録音するときはすごく良いと思います。主役として太く音が入ってくれるんです。
並木 原音忠実といっても、多少のツヤが付いて、音数の多いミックスの中でも際立ってくれるような感じはありますね。
●以前のDuetではA/Dの前段にソフト・リミット機能があり、クリップを防ぐと同時アナログの温かみの再現も行われていました。Duet 3でも引き継がれていますか?
並木 はい、搭載されています。さらに大きなポイントとしては、Duet 3にDSPが搭載されてApogee FXを使えるようになったことが挙げられます。ソフト・クリップでは単にリミッターという機能でしたが、Symphony ECS Channel Stripというチャンネル・ストリップ・プラグインでは細かくコンプやEQの設定ができ、Apogee Control 2上に立ち上げることでかけ録りをすることが可能です。よりレコーディングの自由度が広がったと言えるでしょう。最近では、録った後にプラグインを使うのがほとんどで、かけ録りになじみが無い方も多いと思います。しかし、録音する段階で音にどこまでこだわるのかというのは、プロのエンジニアにとっては大事なこと。完成系をイメージしながらレコーディングをするという楽しみもDuet 3で感じてもらえるはずです。
●曲作りにおいて、かけ録りというのはどのような影響があるのでしょうか?
天野 完成系に近い音でモニターしながらレコーディングができるというのがメリットの一つです。例えば全くコンプをかけずにボーカルを録るとすると、歌い手のモニターでは小さい音はすごく小さく、逆に張り上げた声はすごく大きく聴こえてしまいます。どこにモニターの音量を合わせればよいか分からない、ということにもつながると思いますし、そういうちょっとした迷いがレコーディングのクオリティにも影響してくるものです。モニターが良くなることで歌や演奏にも影響するので、最初からベストを目指そうとしたら必然的にかけ録りをすることになると思いますね。他社オーディオ・インターフェースでも、ソフトウェア・ミキサーにコンプやEQが付いていたりしますが、Symphony ECS Channel Stripのインターフェースは操作がしやすく、パラメーターも多過ぎないので、かけ録りをする上でわずらわしさというのもありません。
並木 近年のAPOGEEハードウェアはブラック・カラーが多いですが、APOGEEと言えばグレーにパープルのノブというイメージを持つ方も多いと思います。Symphony ECS Channel Stripは、まさにそのカラーを採用しているんです。
●Symphony Desktopでは、Apogee FXを使ったかけ録りのほか、モニターにだけエフェクトをかけ、録音は素のまま録ることができましたが、Duet 3でも可能ですか?
並木 現状ではかけ録りのみの対応となっています。技術的には可能だと思いますし、将来的にモニターだけに使うということできるようになるかもしれません。
●DSPを使ったエフェクトというのは他社にもありますが、APOGEEならではの特徴は感じられますか?
天野 他社であれば実機のモデリングというのが多いですが、Symphony ECS Channel Stripで言えばボブ・クリアマウンテンと一緒に作り上げているというのが違いになっている部分だと思います。スタジオでの実機を使う感覚となると実機モデリング系は扱いやすいですが、みなさんが実機を知っているわけでもないですし、単にかけ録りを良い音でしたいということであればSymphony ECS Channel Stripの方が使いやすいのではないかと感じますね。
●モビリティだけでなく、DSPも搭載して性能が向上したDuet 3ですが、どんなユーザーに訴求したいですか?
天野 良いマイクプリ、そしてレコーディングのクオリティを上げることができるDSPプラグインが使えるオーディオ・インターフェースということで、やはり自分で録音を始めたけれど音質に満足していない方にはお薦めしていきたいですね。
並木 SymphonyやSymphony Desktopをお持ちの方も、同じAPOGEEクオリティで外出先で録れる/聴けるというセカンド・オーディオ・インターフェースとしてお使いいただけます。また、制作だけでなく音楽鑑賞用途のDACとして広がってくれるといいなと考えていますね。
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