注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店が語り合う本連載。今回はNEUMANN MA 1を紹介する。MA 1は、同社のDSP内蔵モニター・スピーカーのKH 80 DSPとKH 750 DSPで使用できる音響補正用の測定マイク。専用ソフトウェアと組み合わせて測定を行うことで、フラットな音響特性へと自動補正を行ってくれる。MA 1、そして対応するKH 80 DSPとKH 750 DSPについて、ゼンハイザージャパンの真野寛太氏と鈴木雅彦氏、ROCK ON PROの清水修平氏に語っていただいた。
Photo:Takashi Yashima(メイン)
NEUMANN MA 1
近日発売予定
●以前より測定マイクが発売予定であることはアナウンスされていましたが、ついにMA 1が発表となりました。まずは、NEUMANNのモニター・スピーカーから紹介いただけますか?
真野 NEUMANNが展開するスピーカーのKHシリーズは、同じSENNHEISERのグループ会社にあったKLEIN+HUMMELから引き継がれたものです。KLEIN+HUMMELは2005年にSENNHEISERグループとなりましたが、4後に閉鎖することとなり、NEUMANNへモニター部門を移管しました。NEUMANNはマイクとスピーカーで目指しているところが違います。マイクは真空管マイクやトランスレスなどさまざまな種類を用意し、エンジニアやクリエイターに使い方を委ねる“芸術表現の一部”として考えられています。一方で、スピーカーは必ず正確な音を出して色付けをしない、あくまで電気信号を客観的にとらえるものという考え方の下で製作されているんです。
鈴木 客観性を重要視して正確な再生にこだわっている分、どちらかというと地味な音に聴こえてしまうと思います。色付けを行わないという点では、“どこにも特徴が無い音”というのが特徴と言えるかもしれません。
真野 放送局のエンジニアの方には、“どこかの周波数帯域が突出しているわけではないので正確な音を判別でき、聴き疲れしにくい”と評価いただいていますね。ストレスが無く、集中して仕事が行えるのだと思います。
清水 キャラクターが無いので、一言では言い表せないスピーカーですよね。でも、優等生なタイプだと感じます。
● KHシリーズの中でMA 1に対応しているのは、DSPを搭載したKH 80 DSPとKH 750 DSPですね。
清水 KH 80 DSPは小さいモデルではありますが、パワーがある音だと感じました。
真野 4インチと小さい口径ですが、低域までしっかりと再生する能力を持っているスピーカーです。口径の違うほかのKHシリーズも目指しているサウンドは同じなので、部屋のサイズに合わせて選択していただけます。サブウーファーのKH 750 DSPは10インチとそこまで大きいサイズではありません。今はコンパクトなスタジオも増えており、小さいモニター・スピーカーをチョイスする方も多いですが、合わせてKH 750 DSPも導入し、低域まで見える環境を作っていただくのもよいですね。
清水 “小さいモニター・スピーカーで低域まで見たい”と希望される方にはサブウーファーを提案することもあります。一回り大きいスピーカーに置き換えるより、サブウーファーを使った方がチェックしやすい場合もあるんです。
真野 先日、Rock oN Companyでサブウーファーの比較試聴をさせていただきました。L/RスピーカーはKH 80 DSPを使い、サブウーファーだけKH 750 DSPと他社製品を入れ替えて聴き比べたんです。サブウーファーの音の違いはもちろんですが、その先のL/Rスピーカーの音もかなり変わったのが印象的でしたね。
清水 サブウーファーを入れると低域が見えやすくなるだけでなく、その上の帯域まで分かりやすくなるんです。低域をサブウーファーが担うことでL/Rスピーカーの負担が減る分、全体の解像度が上がります。
鈴木 KH 750 DSPはバスレフの無い密閉型になっているので、スピード感のある歯切れ良い低域を体感していただけると思います。
●正確な再生を目指して作られたKH 80 DSPとKH 750 DSPを、より再生環境に合わせた適切な音へと補正してくれるのが今回のMA 1です。音響補正に対応したスピーカーやソフトウェアなどは各社から出ていますが、その違いは感じられますか?
清水 スピーカーに内蔵されているDSPで処理をするのか、コンピューターのソフトウェア側で補正するのかで違いはあります。ソフトウェアでの補正では、その補正された音がオーディオ・インターフェースを通り、スピーカーから再生されますよね。しかし、NEUMANNなどの場合はオーディオ・インターフェースから出てくる音は処理されず、最終的にスピーカー側で補正が行われるので、そういう部分が出音に違いに関係しているのでしょう。使う人によって、作業のしやすさに影響があると思います。
●MA 1を使って補正を行う際はどのようなセッティングとなりますか?
真野 MA 1はオーディオ・インターフェースに接続して使います。コンピューターに専用ソフトウェアをインストールし、ネットワーク・スイッチを経由したイーサーネット接続でKH80 DSPやKH 750 DSPと通信して補正を行うシステムです。KH 80 DSPとMA 1は正三角形になるよう配置して、そこからMA 1の場所を動かしながら計6ポイントの測定を行います。
鈴木 ユーザーには測定結果のみ表示されて補正値は知らされないのですが、10ポイントのパラメトリックEQがありますので、好みに応じて自身で調整をすることも可能です。ちなみに、DSP非搭載のKHシリーズもKH 750 DSPを介して接続することで補正された音でのモニタリングができるようになっています。
●環境が整えにくい自宅のスペースで制作されている人も、MA 1の補正でクリアなモニター音を手に入れられそうですね。
真野 MA 1とは別に、以前からあるiPadアプリのNeumann.Controlを使った補正も可能です。アプリではスピーカーの位置などのモニター環境を入力していただくことで、自動補正を行います。
鈴木 MA 1でもNeumann.Controlでもしっかり補正はされますが、NEUMANNとしては“部屋の環境をまず整えること”が大切だと考えているんです。例えば、Lch側のスピーカーが壁に寄っていて、Rch側には壁が無いという場合、それぞれ違った補正が行われることになります。あるリスニング・ポイントでは正確な音で聴けるかもしれませんが、やはり良くない補正状態と言えるでしょう。なるべくシンメトリーかつ反射音が少なくなるような環境でスピーカーを配置してもらい、その上でMA 1を使ってもらうのが最良だと思います。
真野 環境面をユーザーに協力してもらうという姿勢ですが、良いモニター音を得るためには正しいことだと言えますね。デジタルでなくアナログ面でできることはまずやってみましょうと。
●待望の測定マイクが出たことで、KHシリーズでの正確なモニタリングがよりしやすくなりました。どういった方にKHシリーズおよびMA 1の導入をお勧めしたいですか?
真野 KHシリーズは聴き疲れしないスピーカーですし、やはり長時間の作業を行うような人にはぴったりだと思います。サウンドの個性は無いですが、その分、自分の作る音に向き合えるでしょう。
鈴木 正確なモニター音はなかなか実現しにくいものですが、MA 1を使うことで体験してもらいやすくなったと思います。MA 1で整えたモニター環境でほかの人の作品を聴くだけでも新たな発見があるはずですので、ぜひ使ってみていただきたいです。
清水 今は自宅作業も増えていますし、KH 80 DSPとKH750 DSPの2.1chシステム、そしてMA 1を使って解像度を高めた制作環境をお客様に提案していきたいですね。
Rock oN NEWS
大改修を終えたRock oN渋谷店は“作りたい音を自分で作れる”新しいスタイルのショップとして生まれ変わっています。店内のお好みの機材を持ち運び、自由に組み合わせて欲しい音をご自身で作って試すことが可能となっています。
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