歌詞の言葉が前に出てくるイメージで
歌い手の個性を引き出してくれるマイクです
オーストリアのウィーンにて、2009年に設立されたLEWITT。気鋭のマイク・メーカーとして、ハイクオリティかつ先進的な性能を持つプロダクトをこれまでに開発してきた。特にセルフ・ノイズを極限まで抑えたクリアな音質は、クリエイター、エンジニアを問わず多くのユーザーに評価されている。この連載では、クリエイターやエンジニアにマイクをテストしてもらい、レコーディングを通して感じたLEWITTの魅力を語っていただく。
Photo:Hiroki Obara
Overview
LCT 240 Pro
オープン・プライス(市場予想価格:18,333円前後)
0.67インチのダイアフラムを搭載するコンデンサー・マイク。指向性はカーディオイドで、最大音圧レベルは142dB SPL、ダイナミック・レンジは123dBとなっている。ボーカルやナレーション、楽器などオールマイティに対応でき、高いコスト・パフォーマンスを誇るため、初めてコンデンサー・マイクを使うという人にもお薦めできるモデルだ。マイク本体のほか、ショック・マウントやウィンド・スクリーン、収納バッグも付属。カラーはブラックとホワイトの2種類を用意する。
Overview
LCT 440 Pure
オープン・プライス(市場予想価格:27,593円前後)
1インチのラージ・ダイアフラムを内蔵するコンデンサー・マイク。指向性はカーディオイドで、最大音圧レベルは140dB SPL、ダイナミック・レンジは133dBだ。LCT 240 Proと同じくさまざまなソースに対応できるモデルで、上位機種と同じ優れた回路設計により、スタジオ・クオリティの音質を実現している。マイク本体以外には、ショック・マウントやウィンド・スクリーン、ポップ・ガード、収納バッグをパッケージ。カラーはブラックのみをラインナップしている。
歌録りに必要なものがワン・パッケージに
テストを行うのは、ニューウェーブをルーツとし、作詞/作曲/編曲/プロデュースまで自ら行うシンガー・ソングライターの加納エミリ。普段は自宅の制作スペースでデモ制作を行っており、仮歌も録音しているそうだ。
「あくまで仮歌なので、オーソドックスなコンデンサー・マイクを選んで使ってきました。スタジオでレコーディングした音と比べると、自宅で使っているマイクは高域が強く出たり、低域のニュアンスに違和感が出ることもあるので、EQなどの処理に時間がかかってしまいますね。仮歌であってもはっきりと歌が伝わるようにしたいので、ピッチ調整やプラグイン処理はしっかり行っているんです」
今回加納に使ってもらったモデルは、ホーム・レコーディングに適したLCT 240 ProとLCT 440 Pureの2本。コスト・パフォーマンスに優れ、初心者でも導入しやすいマイクになっている。
「どちらのモデルもとても軽いですね! 四角い形でコンパクトなので、持ち運びをするときにかさばらないのもうれしいポイントです。ライブやレコーディングのときは大荷物になってしまうこともありますから。また、どちらも純正のショック・マウントが付いてきますし、LCT 440 Pureはポップ・ガードまで付属しています。歌録りに必要なものがワン・パッケージになっているのが良いですね」
セルフ・ノイズが少ないのがメリット
実際に歌録りを試した結果、「LCT 440 Pureが声に合っていた」と加納は語る。
「私はどちらかと言うと歌声が低めなので、高域を押し出してくれるようなマイクだとあまり相性が良くないというか、しっくり来ない感じがあるんです。LCT 440 Pureは低域までしっかりとらえてくれるので、私の声の良い部分を引き出してくれていました。ハスキーな歌声も繊細に収音してくれるイメージです。LCT 240 ProはLCT 440 Pureと比べるとすっきりとした音ですが、低域もちゃんととらえてくれます。高域が特徴的なボーカルはLCT 240 Proの方が合うかもしれませんね」
LEWITTの音質の良さだけでなく、そのセルフ・ノイズの少なさにも驚いたと加納は言う。
「自宅で録音する人にとって、セルフ・ノイズの少なさはとてもメリットになると思いますね。自分で録って、ミックスもして……と作業をしている中で、かなり後になってから初めてノイズに気付いたりすることもあります。良いテイクが録れたときにそういうことがあると悲しいですよね。ノイズの心配が少しでも減るのはありがたいです。クリエイターだけでなく、エンジニアも重宝するマイクだと思います」
スタジオ・クオリティかつホーム・レコーディングでも取り扱いやすいLCT 240 ProとLCT 440 Pure。加納も今回のテストを通じ、そのポテンシャルの高さを感じたようだ。
「私がこれまで自宅で使ってきたマイクと比べて、歌にパンチやアタック感が出ていました。さらに、とてもクリアな音質も相まって、歌詞の言葉が前に出てきてくれるようなイメージです。タイプは違いますが、どちらも歌い手の個性を引き出してくれるマイクだと思います。LCT 240 ProやLCT 440 Pureを選べば、しばらくマイクで悩むことは無いかもしれませんね」
加納エミリ
【Profile】北海道札幌市出身のシンガー・ソングライター。自身で作詞曲からアレンジ、プロデュースまで手掛け、ニューウェーブやテクノ、インディー・ロックをルーツとした楽曲を制作している
『助けて!神様。~So Help Me,GOD!』
鈴木祥子
(なりすレコード)
※サウンド・プロデュースを担当
LEWITT 製品情報
関連記事