ハイエンドなオーディオI/Oを提供するAPOGEEから、シリーズ第3世代となるDuet 3が登場した。コンパクトかつ、上位モデルと同等のサウンド・クオリティを実現し、新たにDSPを内蔵。同社の対応プラグイン・エフェクトを使ったかけ録りが行えるのもポイントだ。この連載では、クリエイター/エンジニアにDuet 3を試していただき、その秘められた能力を探っていく。今回Duet 3をテストするのは、米津玄師やOfficial髭男dism、藤井風、Yaffle、小袋成彬、iriらの作品に携わるエンジニア、小森雅仁氏だ。
Photo:Takashi Yashima
APOGEE Duet 3〜DSPのパワーを得た第3世代
Duet 3(80,300円)は2イン/4アウトのオーディオI/O。トップ・パネルはインジケーターと大きなロータリー・エンコーダーのみを装備するというシンプルなデザイン。表面には強化ガラス(ゴリラ・ガラス)を採用し、持ち運び用途も考えられた堅牢な設計となっている。ブレイクアウト・ケーブルを介して入出力が可能。別売りのDuet Dock(22,000円)を装着すれば、リア・パネルに各接続端子を備えることができる。USB-Cポートは2系統を用意し、USBバス・パワーだけでなく、外部電源供給でも駆動する。
見た目が良いだけでなくAD/DAの質も高い
APOGEEのプロダクトはまずデザインの良さに目が行きます。Duet 3は、オーディオ・インターフェースでよく見られるようなパネル前面に端子や操作子が並ぶタイプではなく、大きなエンコーダーが一つだけあるシンプルなデザインです。モニター・コントローラーのように操作できるのが良いですね。
AD/DAはしっかりとしたクオリティのものが搭載されており、録りからミックスまで一貫して使えるオーディオ・インターフェースになっています。Duet 3と同じくらいの入出力数を持つ安価なオーディオ・インターフェースはたくさん出ていますが、AD/DAの質はどうしても価格に比例してしまうところがあります。録音後にA/Dのクオリティをリカバーするというのは難しいため、できるだけその性能にはこだわりたいところです。僕はアーティストが宅録したさまざまな素材をもらってミックスをすることも多いですが、Duet 3レベルのA/Dと、このクリーンなマイクプリ&DIで録音したものならミックスで困ることは無さそうです。オーディオ・インターフェースで悩んでいるクリエイターにはぜひお薦めしたいですね。
D/Aの傾向としては、これまでのAPOGEE製品と同じく低域と高域に気持ちの良い伸びを感じるのが特徴で、フラットでモニター的というよりは、聴いていて気分が盛り上がるような音です。とはいえ、AD/DA共に極端な色付けがあるわけではないので、アコースティックな音楽からモダンなトラック制作まで幅広く対応できそうです。
メイン・アウトとヘッドフォン・アウトで個別にミックス・バランスを作れるのは、録音現場のことを考えた親切な設計です。また、ヘッドフォン・アウトはインピーダンスの高いヘッドフォンでもしっかりドライブできます。安価なオーディオ・インターフェースだと、ヘッドフォン・アウトの音場が狭かったり、変に中高域が強調されてしまったりするのですが、Duet 3ではそんなことはありません。また、DSPを搭載してかけ録りエフェクトが使えるようになったのは、前モデルからの大きな進化です。個人的には、今後のアップデートでSymphony Desktopのようにモニターにのみエフェクトがかけられるようになってくれるとうれしいですね。
Duet 3は所有欲を満たしてくれような格好良いプロダクト・デザインで、かつ基本的な性能もしっかりした魅力的な製品です。
Headphone Output
コンパクトなDuet 3は出先での作業にピッタリ。Duet 3のヘッドフォン・アウトは0Ω出力に対応しており、ロス無くサウンドをモニターできる。「インピーダンスの高いヘッドフォンもしっかりと駆動できます」と小森氏。