ハンマリングなど豊富な奏法を収録
高品質なアンプ・シミュレーターも内蔵
Ample Guitar PF IIIは、PAUL REED SMITHの代表機種であるCustom 24というエレキギターをシミュレートしています。PAUL REED SMITHと言えばカルロス・サンタナなどの実力派が愛用していて、ギタリストなら誰でもあこがれる高級メーカーですよね。
Ample Guitar PF IIIを立ち上げるとギターを横に置いたグラフィック・インターフェースが現れ、おしゃれなフレット・インレイと木目のボディに思わずにんまり。画面に“PEREGRINE FALCON”と記載されていますが、指板に埋め込まれているインレイが鳥のPeregrine Falcon(ハヤブサ)を形取っているのが由来だそうです。
実際に鳴らしてみると、まずその音質がリアルで驚きます。奏法もサステインやハンマリング、ミュートといった一般的なものに加えて、ナチュラル・ハーモニックスやスライドなど多彩に用意。それらを切り替えてかなりリアルなギター演奏をシミュレートできます。最近の洋楽ポップスなどでよく使われる、サンプリングや打ち込み的なギター・リフがポンポンできてしまいました。ラウンド・ロビン、開放弦の鳴らし方、ストローク・ノイズの追加などさまざまな設定があり、きめ細やかなこだわりを随所に感じます。音程の無いカッティングのノイズなどの音にも味がありました。
ピックアップのポジションはフロント/リア/フロント+リアの3種類が指定可能。ただ切り替え時にデータを読み込むタイムラグがありますので、ポジションを素早く切り替える演奏を行う必要があれば、複数立ち上げてそれぞれで打ち込みを行うとよいでしょう。
アンプ・シミュレーターも内蔵しており、アンプは5種類、キャビネットは7種類あります(画面①)。いずれも単体のアンプ・シミュレーター・プラグインの品質に迫るものです。キャビネットの機能も充実しており、オンマイク×2本とルーム・マイク×1本、DIの計4本の組み合わせで自由にバランスやパンニング、位相反転が設定できます。オンマイクのみ8種類からマイクの種類を選択可能です。
内蔵エフェクトはEQとコンプ、ディレイ、リバーブという基本的なものがそろっています。コンプでは波形、EQではアナライザーが表示され、空間系もインターフェースが凝っているなど、ここにもこだわりが感じられました。いずれも音質はクリーンでハイファイな仕様ですので、もし積極的な音作りやキャラを加えたい場合は外部エフェクトで行うとよいでしょう。
ストロークやアルペジオを組み合わせた
シーケンスを作成できるStrummer
Ample Guitar PF IIIはStrummerと呼ばれるシーケンス機能を搭載しています。コードのストロークやアルペジオなど細かく演奏を指定し、さまざまな奏法とも組み合せ可能。奏法はキー・スイッチで切り替えて、MIDIキーボードを演奏しながら複雑なフレーズを自在に組み立てられます。時間さえあれば無限に可能性を追求できそうです。
8小節までの短いフレーズ演奏に特化したRifferと呼ばれるシーケンス機能も充実しており、奏法やベロシティなどを細かく編集できます。作成したシーケンスをMIDIデータとしてDAW上にドラッグして張り付けることも可能です。500種類のプリセットも収録しています。
またTab Playerという機能では、AROBAS MUSIC Guitar Proフォーマットのファイルを読み込んで自動演奏が可能です。Ample Guitar PF IIIに付属していたイーグルス「ホテル・カリフォルニア」のGuitar Proファイルを試しに読み込んで再生してみて、またにんまり。こちらもDAWにMIDIデータを張り付けることが可能です。
私は現在2016年のAPPLE MacBook Pro(INTEL Core I7、2.9GHz)を使用しています。AVID Pro Tools Ultimate 2019上でAmple Guitar PF IIIを1つ立ち上げ、内蔵エフェクトを一通り使った状態のプリセットを演奏しても、CPUメーターが20%を上回ることはありませんでした。これだけの充実した機能に対するCPU使用効率としては、とても良い印象を受けます。
とにかく優れた音質と有り余る機能で魅力にあふれたギター音源です。他社にも素晴らしいギターのプラグインは多数ありますが、一味違う音色や奏法でこだわりを追求したい方にはぜひお薦めしたいと思います。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年3月号より)