50種類のスタイルで収録されたフレーズを
キー・スイッチで即時演奏可能
まず、CarbonはPlayerとInstrumentの2つのモードを搭載しており、これらは画面上部にあるPlayer/Instrumentタブでスムーズに切り替えることができます。Playerモードでは、50種類のスタイルで収録された各フレーズをキー・スイッチによってリアルタイムに演奏することが可能。キーボードのC1〜F2はCOMMON PHRASESと呼ばれ、リズミカルなシンコペーションや高速オルタネイト・ピッキング、ロング・トーンなど基本的なフレーズを演奏することができます。個人的には、C1のSilenceキーが一時的なブレイクを直感的に挟むことができて便利だと感じました。
またC#1〜E3までにアサインされたフレーズは、DAWのトラック画面に直接ドラッグ&ドロップすることによって、手軽にMIDIデータとしてエクスポートが行えますので、こちらも実用的な仕様になっていると思います。
F#2〜F3はSTYLE PHRASES。ここには各スタイルに収録されたフレーズの中でも、特に個性のあるフレーズがアサインされています。F#3〜D#6はPLAY RANGEと名付けられ、単音のSingleモードと最大4和音で演奏できるChordsモードが選択可能です。
続いてInstrumentモードを見てみましょう。ここではマルチサンプリングによる単音を4つまで同時発音でき、オリジナル・フレーズの演奏が行えます。こちらもキー・スイッチによってレガート・モードのオン/オフのほか、ハーフ/フル・ミュート、サステイン、オルタネイト・ピッキング奏法などの切り替えが可能です。
ちなみにPlayer/Instrumentモードの両方にはKey機能が備えられており、ここでキーを設定しておけば、もし間違えたノートを入力してもスケールから外れることなく演奏できるので役に立つでしょう。
4つまでレイヤーできるLayerer機能
中高域が鋭く抜けが良いサウンド
基本的にギターはクリーン・トーンで収録されており、ディストーション・サウンドはアンプ/キャビネット/ディストーション・エフェクトなどを統合したウルトラ・アンプという機能でスピーディに生成することができます。具体的には、画面下段のやや左側にあるCONDITIONノブで5種類のディストーション・サウンドを選択し、そのひずみ具合を左隣のSEVERITYノブで決定するという流れ。楽曲の雰囲気に合わせて簡単に設定できるので、作業の効率化につながるでしょう。
さらにCarbonですごいのはFINISHER機能。ここにはディレイ/フランジャー/ディストーションなど、20種類のエフェクトを組み合わせたプリセットが約70種類収録されています。画面下段右端にあるMODEノブでプリセットを選択し、右隣にあるFINISHERノブでエフェクト量を調整することができます。プリセットによってはギターとシンセの中間にあるような、とても個性的な音色に変化させることも可能です。
画面再下段にはLayerer機能を搭載。ここではレイヤーさせるギターの数を1〜4つまで設定でき、Virtual Guitaristという製品名にもあるように、バーチャル空間内で各ギターの定位を細かく調整することができます。
素晴らしいと思ったのは、画面中央付近に位置するFocusノブ。製品説明には“4つの設定を持つモーフィングEQを一つのノブで制御している”と書かれておりますが、どのポイントに合わせても実用的なEQ処理が施されたサウンドになる印象でした。
Focusノブの右隣にあるFilterノブは、左に回すとローパス・フィルター、右に回すとハイパス・フィルターになります。どちらも深いかかり具合で、イントロや曲間などあらゆる場面で効果を発揮できることでしょう。
個人的にうれしいと感じたのは、画面右上にあるMicro Timing機能。Playerモードのみでしか使えないこの機能は、ピッキングのニュアンスをプッシュ/プルで調整できたり、スウィングをかけることができます。
Carbonは、全体的に中高域がとてもシャープで抜けが良いサウンドです。シンセなどのデジタル音源を取り入れたロックやサウンドトラックを作る際、普通に録音したギターだとなかなか曲になじみにくく、ほかのパートに埋もれてしまうことがありますが、そんなときにこそCarbonはその力を存分に発揮してくれるでしょう。そのため、Carbonはインダストリアル・ロックやEDMとも相性が良いと言えます。
私自身ギタリストでもありますが、Carbonは単なるエレキギターのシミュレートを超え、Carbonでしか出せないオリジナリティあふれるサウンドを表現できると感じました。ギターが弾ける人/弾けない人に関係なく、制作時において即戦力のプラグインとなってくれることでしょう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年2月号より)