ウェーブ・シェイピング可能な2つのDCO
アナログ・フィルターはCURTIS製
Prophet Rev2 Moduleは2基のオシレーター(DCO)を備え、4種類の波形はすべてウェーブ・シェイピングが可能。9オクターブにわたってタフに発音する。オシレーター部にあるOSC SLOPノブではランダムなデチューンを生み出せ、音にアナログらしいピッチの揺れを付加できる。また両オシレーターをシンクさせれば、複雑な倍音を生かした音作りが可能だ。オシレーター1には1オクターブ下のサブオシレーターとホワイト・ノイズ・ジェネレーターが備わっているので、音の厚みは完ぺき! ローパス・フィルターは4ポール(−24dB/oct)と2ポール(−12dB/oct)の切り替え式で、4ポール時に自己発振させることができ、SEQUENTIAL Prophet-5にも搭載されていた由緒あるCURTIS製フィルターが選ばれている。フィルター部のAUDIO MODノブ(同社Mophoでもおなじみ!)により、高域を大胆にキレ良く強調できるのも特徴だ。
Prophet Rev2 Moduleの一番の魅力は、16ボイスという同時発音数の多さと、2つの音色をスタック、またはMIDIキーボードの任意の鍵盤でスプリットして同時に演奏できるバイティンバー機能だ。本機では1つのプログラム(プリセット音色)につきAとBの2つのレイヤーが備わっており、それぞれに別々のサウンドを保存することができる。両方のレイヤーを同時に使う場合、それぞれを8ボイスで鳴らせるため、例えばコードを弾くときに音が途切れるというアナログ・シンセにありがちな心配は無い。ライブで使うことを考えたときに、レイヤーBがメイン・アウトとは別に出力できるのも素晴らしい。
またこのボイス数の多さを生かし、内蔵のステップ・シーケンサーを走らせながら左手でレイヤーA、右手でレイヤーBを演奏することもできるので、パフォーマンスの幅がかなり広がる。もちろんUNISONボタンで16のボイスを重ねて超極太モノシンセとして使ってもいいし、コード・メモリーを使用して今どきのサウンドを作ってみてもいいだろう。
シーケンサーは全プログラムに組み込まれているので、音色の特性を知りたいときにはTYPEボタンでPolyモード(1tr/最大64ステップ/6音ポリ)に設定し、PLAYボタンを押してフレーズを聴いてみよう。またTYPEボタンでGatedモードに切り替えれば、先のポリフォニック・シーケンサーがゲート・シーケンサー(4tr/最大16ステップ)に変化。これはモジュレーション・ソースとしても機能し、4つのトラックを異なるステップ数で同時に走らせれば複雑なモジュレーションを生み出せる。この内蔵シーケンサーはレイヤー単位で使えるため、各レイヤーで異なるパターンを扱うことも可能だ。
プログラムについては、ファクトリー・バンクとユーザー・バンクのそれぞれに同じものが128種類×4バンクの計512種類入っているのだが、上書き保存できるのはユーザー・バンクのみで、ファクトリー・バンクはいつでも音作りの出発地として使える。ライブなどのたびにお気に入りのサウンドが変化しても、オリジナルの音色が残っているのはありがたい。また、あるプログラムに異なるプログラムのレイヤーを呼び出して使用/保存できるので、とても便利だ。
3つのエンベロープ・ジェネレーターや
8つのモジュレーション・スロットを装備
Prophet Rev2 Moduleは、アタック/ディケイ/サステイン/リリースにディレイを追加した5ステージのエンベロープ・ジェネレーター(以下、EG)を3つ装備している。ローパス・フィルター、VCA、その他のデスティネーションのそれぞれに向けたもので、ディレイとアタックの組み合わせにより音の立ち上がりなどを微調整するのはとても楽しい。アンプ・エンベロープにはPAN SPREADという特徴的なツマミがある。これを上げることで各ボイスが異なる方向へ広がっていき、リッチなステレオ感が得られる。本機はステレオでアウトプットするのが断然お勧めで、音色によって全く異なる左右の立体感をデザインできることに驚かされた。
内蔵エフェクトに関しては、ディレイがクラシック・モノディレイ、クリアなデジタル・ディレイ、味のある余韻作りに適したBBDディレイの3種類。リバーブはデジタル・リバーブの1種類で、フェイザーが3種、フランジャーが2種、ディストーションやコーラス、ハイパス・フィルターなども備えている。さらにリング・モジュレーターがオシレーター部ではなくエフェクト部に装備されているのだが、こちらはかつてトム・オーバーハイム氏が手掛けたリング変調器のエミュレーションとなっていて、激しい色付けが可能。以上のエフェクトも、シーケンサーと同じくレイヤーごとに設定できるようになっている。
そのほか、MODULATIONセクションの下にLFOを配置し操作性を高めている点、LFO AMOUNTのツマミが左手の届きやすい場所にあって演奏中にいじりやすいところなども良いと感じた。モジュレーション・スロットは全8つ(!)なので、多様なソースとデスティネーションの組み合わせにより、もはや作れない音は無い。ビンテージ感のあるおなじみの重厚サウンドから実験的なアンビエント・サウンドまで自由自在に生み出せる、新しい世代の完ぺきなシンセと言える。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年4月号より)