LYNX STUDIO TECHNOLOGY Hilo 2 レビュー:性能/音質ともにアップデートされたAD/DAコンバーターの次世代モデル

LYNX STUDIO TECHNOLOGY Hilo 2 レビュー:性能/音質ともにアップデートされたAD/DAコンバーターの次世代モデル

 LYNX STUDIO TECHNOLOGYから、AD/DAコンバーターHiloの次世代モデル、Hilo 2が発売されました。本機は単なるコンバーターではなく、外部機器に接続することで多入出力のルーティングができるなど、オーディオI/Oのような使い方が可能というもの。音質を含めさまざまなブラッシュアップが施されたとのことで、チェックしてみました。

Thunderbolt、USB、DanteのI/Oを追加可能

 本機は2U分の高さで、横幅はハーフ・ラック・サイズ。別売りのラック・マウントを使えば19インチのラックにも装着できるように作られた金属製の筐体です。フロント・パネルには大型タッチLCDと少しクリック感のあるロータリー・コントローラーがあり、操作はこの2つで行います。リア・パネルにはアナログ入出力(XLR)、モニター出力(TRSフォーン)、S/P DIF&ADAT入出力(オプティカル)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、AES/EBU(XLR)を装備。後述の拡張カードを使わなければ、コアキシャル、オプティカル、AES/EBU、アナログを相互に変換する仕様。ヘッドホン出力はフロント・パネルに装備されています。

リア・パネル。左上は拡張用のLSlotポートで、写真ではUSBカードが挿入されている。その下が左からライン入力L/R(XLR)、ライン出力L/R(XLR)、モニター出力L/R(TRSフォーン)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、S/P DIF&ADAT入出力(オプティカル)、AES/EBU入出力(XLR)、ワード・クロック入出力(BNC)、DCバッテリー接続端子、電源接続端子

リア・パネル。左上は拡張用のLSlotポートで、写真ではUSBカードが挿入されている。その下が左からライン入力L/R(XLR)、ライン出力L/R(XLR)、モニター出力L/R(TRSフォーン)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、S/P DIF&ADAT入出力(オプティカル)、AES/EBU入出力(XLR)、ワード・クロック入出力(BNC)、DCバッテリー接続端子、電源接続端子

 サンプリング・レートは192kHzまで対応し、入出力ともフルスケール・トリム設定が可能。AD/DAコンバートの際に使用するアンチエイリアシング・フィルターを8種類の中から選択できる点も、完全にプロ仕様といった感じです。どのフィルターを選択するべきかは繊細な耳とデジタル・オーディオに対する深い知見が求められるところでしょう。

 またリア・パネルのLSlotにオプションのカードを挿入すれば、Thunderbolt、USB、DanteのI/Oを追加可能。これにより、外部からの最大16chの信号をデジタル・ミキサー機能でルーティングすることができるようになり、ASIO/CoreAudioによって、ドライバーなしでオーディオI/O、もしくはモニター・コントローラーとして使えるようになります。加えてThunderboltかUSBのカードを使用した場合、Windows/MacまたはiOS機器に、無料アプリHilo Remoteをインストールすることで、コンピューターやiOS機器から操作ができるようになります。アプリではメーター表示やルーティング、左右独立したレベル/パンの調整などが可能。タッチ・スクリーンでもできることですが、アプリは画面が大きい分ページの切り替えがなく、より使いやすいです。

無料のコントロール・アプリHilo Remoteは、Mac/Windowsに対応するほか、iOS版も用意されている

無料のコントロール・アプリHilo Remoteは、Mac/Windowsに対応するほか、iOS版も用意されている

独自技術SynchroLockで7ppmの高速同期

 内蔵クロックにはかなり気合いの入ったマスタリング・グレードのクリスタル・オシレーターが搭載されており、独自技術であるSynchroLock 2サンプル・クロックによって、不正確でジッターの多い外部クロックでも7ppmの精度で高速同期できるとのこと。外部クロックの受け渡しはリア・パネルのワード・クロック入出力(BNC)で行うことができます。通常のフェーズ・ロック・ループではジッターがせいぜい100:1以下であるのに対して、Hilo 2では3000:1までジッターを排除しているとのことで、かなりの自信がうかがえますね。

追従性の高い4種類のレベル・メーター

 まずはスタジオのAVID Pro Toolsと併用してみました。フロント・パネルのスタンバイ・ボタンを押すと、ほんの数秒でスクリーンにスタート・アップ画面が現れ、起動は完了します。D/AのチェックをするためにAES/EBUへの入力をアナログ出力から出してクロックを選択したのですが、そのルーティングをタッチ・スクリーンで行ってみました。スクリーンは反応が早く、操作性も抜群ですが、いろいろ機能を詰め込んでいるためボタンがやや小さく感じるかもしれません。ルーティングが済んだら、レベル・メーター画面を表示させておくのがいいと思います。メーターは4つのモードが用意されています。通常のVUメーターの動きをするAnalog VU、周波数ごとのレベルを見られる30バンドのスペアナ的なRTA、ピーク・ホールド付きのメーターを模したHorizontal Bar Style、そして全チャンネル表示のAll I/Oです。どれもレスポンスが非常に良く、DAWのプラグインとは一線を画す追従性が気持ち良いです。

聴いた瞬間に“あれ!”と思うほどクセがない音質

 ちょうどミックス中の音源があったので本機から出力してみたところ、パッと聴いた瞬間に“あれ!”と思うほどの違いを感じます。非常にきめが細かく、下から上まで素直に出ている印象。それまで良いと思っていた音が、膜が1枚かかっていたように感じるほどです。これまでもクロックに気を付けていたつもりでしたが、Hilo 2はさらに上を行く音で、特に空間系のフォーカスがピシッと合っていて奥行きに透明感が出ました。いやあ、これは良いです。音質にクセのようなものが全くなく、良い意味で色がないと感じました。ヘッドホン・アンプの音も素晴らしいです。単体機に迫るリファレンス・クオリティのアンプが採用されているとのことですが、それも納得です。正確にデジタル信号をアナログ信号に変換できているのでしょう。A/Dも印象は全く変わらずで、どんなソースを入れても瑞々しく良い音がしました。

 また、なぜこのサイズなんだろうと思っていましたが、DCバッテリー端子が用意されていることから、フィールド・レコーディングでの使用など、持ち運びのことが考えられているんですね。ただし、5.4kgとそこそこ重量があるうえに、発熱も多めなので運搬しての使用では注意する必要があります。とにかく、音の出入り口を良い音にしたいという方にはお薦めできる製品です。

 

林田涼太
【Profile】 いろはサウンドプロダクションズ代表。録音/ミックス・エンジニアとして、ロックやレゲエ、ヒップホップとさまざまな作品を手掛ける。シンセにも造詣が深く、9dwのサポート(syn)としても活動。

 

 

 

LYNX STUDIO TECHNOLOGY Hilo 2

LT-USBプリインストール版:660,000円/LT-TB3プリインストール版:770,000円/LT-Danteプリインストール版:792,000円

LYNX STUDIO TECHNOLOGY Hilo 2

SPECIFICATIONS
ライン入力A/D
▪高周波歪率:−116dB@1kHz、20kHzフィルター、+22dBuトリム ▪ダイナミック・レンジ:122dB(A-weighted、−60dBFSシグナル・メソッド) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±0.01dB) ▪最大クロストーク:−140dB@1kHz、−1dBFSシグナル

ライン出力A/D
▪高周波歪率:−116dB@1kHz、20kHzフィルター、+22dBuトリム ▪ダイナミック・レンジ:122dB(A-weighted、−60dBFSシグナル・メソッド) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±0.02dB) ▪最大クロストーク:−135dB@1kHz、−1dBFSシグナル

その他
▪外形寸法:216(W)×83(H)×254(D)mm ▪重量:5.4kg

製品情報

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