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IK MULTIMEDIA iLoud MTM MKII レビュー:キャリブレーション機能を持つコンパクト・モニター・スピーカーの第2世代機

IK MULTIMEDIA iLoud MTM MKII レビュー:キャリブレーション機能を持つコンパクト・モニター・スピーカーの第2世代機

 IK MULTIMEDIAのコンパクト・リファレンス・モニター・スピーカーと言えば、iLoud Micro Monitor、iLoud MTMなどが挙げられます。今回はiLoud MTMの後継機、iLoud MTM MKIIの操作性や音の質感、ミックス作業での使用感などをお伝えいたします。

卓上スピーカーとしてもちょうどいいサイズ感 専用ソフトX-Monitorからシステムをコントロール

 iLoud Micro Monitor、iLoud MTMは、そのサイズを超えた低音域の再現力と正確なサウンドで、音楽制作初心者、プロのレコーディング/ミックス・エンジニアからハイファイ・オーディオ愛好家まで、幅広い層の支持を得てきました。5〜8インチのスタジオ・モニターにも匹敵するというコンセプトから、第2世代となってさらなる磨きがかかったのがiLoud MTM MKIIです。

 資料によると、独自の音場補正アルゴリズム=ARCも初代より大幅に改善され、このARCをベースとするキャリブレーション機能の搭載によりドライバーの品質も向上したとのこと。最先端DSP技術によってスピーカーの動作を完全にコントロールし、フラットな周波数特性を実現。また、各スピーカー間のタイム・アラインメント設計により、全帯域にわたりひずみのない、リニアな位相特性になっているようです。

 本機は初代iLoud MTMと同じく、3.5インチ・ミッドウーファー/1インチ・ツィーター/3.5インチ・ミッドウーファー(MTM)というドライバー構成です。上下左右対称に配置することで、一般的な2ウェイ・システムより焦点の合った音像が得られる構造になっています。外形寸法は130(W)×264(H)×160(D)mmで、卓上スピーカーとしてもちょうどいいサイズ感に思います。

 背面にはLF EXTENSION(ハイパス・フィルター)、LF/HFのトリムなどの各種スイッチを装備。

リア・パネル。上部のスイッチは左から、LF EXTENSION(ハイパス・フィルター:60/50/40Hzと、長押しで80Hz)、LF(ローシェルフ:100Hzを+2dB/FLAT/−3dBから選択)、HF(ハイシェルフ:8kHzを+2dB/FLAT/−3dBから選択)、CAL PRESET(DESK:コンソールやデスクの典型的な音響効果を補正するプリセット設定/FLAT/CAL:ユーザーによるカスタム・キャリブレーション設定。ボタン長押しでX-Monitorを使わずに1ポイントでのキャリブレーションも可能)、SENS(入力感度:+4dBu/−10dBV)。その下にボリューム・ノブ、XLR/TRSフォーン・コンボ入力、ARC MIC IN(測定用マイクのTSミニ入力)、USB-B端子、AC接続、電源スイッチ

リア・パネル。上部のスイッチは左から、LF EXTENSION(ハイパス・フィルター:60/50/40Hzと、長押しで80Hz)、LF(ローシェルフ:100Hzを+2dB/FLAT/−3dBから選択)、HF(ハイシェルフ:8kHzを+2dB/FLAT/−3dBから選択)、CAL PRESET(DESK:コンソールやデスクの典型的な音響効果を補正するプリセット設定/FLAT/CAL:ユーザーによるカスタム・キャリブレーション設定。ボタン長押しでX-Monitorを使わずに1ポイントでのキャリブレーションも可能)、SENS(入力感度:+4dBu/−10dBV)。その下にボリューム・ノブ、XLR/TRSフォーン・コンボ入力、ARC MIC IN(測定用マイクのTSミニ入力)、USB-B端子、AC接続、電源スイッチ

 入力はXLR/TRSフォーン・コンボ端子で、ARC MIC IN端子には、ペア以上に付属または別売りの測定用マイクをつなぎます。USB端子からコンピューターと接続すると、キャリブレーションや各種システムにアクセスする専用ソフトX-MonitorでiLoud MTM MKIIをコントロール可能です。

iLoud MTM MKIIやiLoud Precisionの専用ソフト、X-Monitor。Mac/WindowsとUSB-B端子を接続すれば使用できる。ARCキャリブレーションのほか、20種類以上を収録する定番スタジオ・モニター用設定の切り替え、EQのカスタマイズ、ファームウェアのアップデートなどを行える

iLoud MTM MKIIやiLoud Precisionの専用ソフト、X-Monitor。Mac/WindowsとUSB-B端子を接続すれば使用できる。ARCキャリブレーションのほか、20種類以上を収録する定番スタジオ・モニター用設定の切り替え、EQのカスタマイズ、ファームウェアのアップデートなどを行える

定位が分かりやすく立体的な音像 キャリブレーション後はローミッドが判別しやすい

 ここからX-Monitorを使ってキャリブレーションを行い、モニターの質感を確認していきます。X-Monitorでの補正も気になりますが、iLoud MTM MKIIそのままの質感も体感したいので、キャリブレーション前後をいつもの環境と比較していきます。

 本題に入る前に、X-Monitorの操作がすごくシンプルで扱いやすかったことをお伝えしておきます。4つのポジションを順番に測定し、フラットな周波数特性に補正していきます。X-Monitor上にBEFORE/AFTERが表示されるので、補正前と後の違いを視覚でもすぐに確認可能です。もちろんサウンドのオン/オフも切り替えられます。

 では実際にリファレンス音源を流して聴いてみましょう。まずはキャリブレーションなしから。第一印象は、シンプルに音が良い! このくらいのサイズのスピーカーはもう少しザラつき感というか、解像度が鈍く感じることが多いのですが、音のきめがとても細かく、前に押し出されている印象を受けました。そして何より、低音がすごくしっかり出ている。物足りなさなどは全く感じなかったですし、変にボワつくこともなく、楽曲が鳴らす低音がストレスなくしっかりと出ていました。音の解像度が高いおかげなのか、定位も分かりやすく立体的な奥行きもあり、ミックスしてみても各楽器のバランスがとても取りやすかったです。若干ローミッド辺りが見えにくいかなと思いましたが、キャリブレーションなしでこれなら調整次第ではもっと良くなるかも……。

 ということで、キャリブレーション後の音も確認。補正値で言うと、やはり100〜200Hzを中心に、ミドルからローミッドが特に補正されていました。聴いてみた印象は、ニアフィールド・モニターとしてはキャリブレーション後の方が扱いやすそうです。こちらも音のザラつきやくすみ感などもなく、各帯域が鮮明に飛んでくる印象でした。ミックスも行ってみたところ、ローミッド辺りの余分な処理が減った印象で、欲しいところとそうでないところが分かりやすかったです。そのローミッド処理のためか、ハイの辺り……特に4kHzより上のほうが強く前に。このままだと長時間のミックスでは耳が疲れるかもしれないという印象も。ただ先ほどもお伝えしたように、X-Monitorは環境に合わせてさらに細かく調整可能なので、ベストなモニター環境を作れそうです。

 結論として、普段の慣れたモニター環境と比べても全く違和感なくミックスできました。むしろiLoud MTM MKIIを卓上のニアフィールド・スピーカーとして使用することで、EQによる変化がどの帯域でも捉えやすく、より細かなミックスにつながると思います。X-Monitorやキャリブレーションでの調整によりどんな環境にも対応できるのも魅力的で、iLoudシリーズが幅広い層の方々に支持されるのも納得です。僕自身、よく聴かせるために音を誇張しているようなスピーカーが苦手で、その手の機種のときはミックスで苦労することもあるのですが、iLoud MTM MKIIのようにそのままの音をさまざまな環境で再現してくれるスピーカーは、長年愛されていくのではないかなと感じました。

 

井上典政(jizue)
【Profile】2023年に9thアルバム『biotop』を発表、TVドラマ『9ボーダー』 のサントラも手掛けるインストゥルメンタル・バンド、jizueのギタリストでdeco recording studio主宰のエンジニアとしても活動。

 

 

 

IK MULTIMEDIA iLoud MTM MKII

74,800円/1台、148,500円/ペア(ARC MEMS測定用マイク付属)、748,000円/Immersive Bundle(11台+測定用マイクのセット)

IK MULTIMEDIA iLoud MTM MKII

SPECIFICATIONS
▪スピーカー・タイプ:2ウェイ/3スピーカー ▪LFドライバー:3.5インチ・ミッドウーファー×2 ▪HFドライバー:1インチ・ツィーター ▪スピーカー1台あたりの内蔵アンプ数:2(クラスD) ▪出力:70W RMS(LF)+30W RMS(HF) ▪クロスオーバー周波数:2.8kHz ▪周波数特性:48Hz~28kHz ▪外形寸法:130(W)×264(H)×160(D)mm ▪重量:2.5kg(1台につき。フット・スタンドも含む)

製品情報

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