今回はTRACKTIONからリリースされたDan Dean Essential Bass Collectionを紹介。B.B.キング、ペギー・リーらとの仕事で知られるベーシスト、ダン・ディーンのベースを丁寧にサンプリングしたソフト音源です。Mac/Windows/Linuxに対応し、AU/VST2&3で動作します。
100種類を超えるプリセットを収録
クリアなサウンドのAlembic Spoiler、響きと伸びやかさが特徴のAlembic Fretless、バランスと繊細さを併せ持つサウンドのFender Precision、深くてザラザラした音色のFender Telecaster、典型的なジャズ・ベースのLull Jazz、パンチのあるWashburn Fretlessという6モデルを収録するDan Dean Essential Bass Collection。立ち上げると、デフォルトでAlembic Fretlessが表示されます。6モデルとも画面レイアウトやパラメーターは同じものを搭載し、プリセットや各モデルの切り替えは、画面最上段のフォルダ・アイコンをクリックすると出現するBrowser画面から可能です。
Browser画面では、左端にあるPackという欄で音色がドライかエフェクティブかを選択できます。またこの右側にあるCategory/Style/Characterといった欄では、各ベースのモデルをはじめ、指弾き/ピック弾きといったプレイ・スタイル、アコースティック/エレキなどのキャラクターを選べます。DanDean Essential Bass Collectionはディーン氏が作成した100以上のプリセットを収録していますが、このBrowser画面でフィルタリングしていくことで目的とする音色へスピーディにたどり着けることでしょう。
7種類のアンプ・エフェクトを搭載
画面左下にあるAMPLIFIERでは、Acoustic Bass/Vintage/Round/Wooden/Modernなど、7種類のアンプ・エフェクトを選ぶことができます。
AMPLIFIERの文字の左側にある四角いアイコンをオンにすると、ローエンドや倍音が増幅され、臨場感のあるサウンドをワンクリックで演出可能です。AMPLIFIERの上部にはFX LEVELがあり、ここではラインとアンプの音のミックス具合を調整できます。
画面右側にあるPITCHのOCTAVEでは±1オクターブ、SEMITONEでは±12半音ずつ調節が可能。右隣のPITCH BENDでは、ベンド幅を±60半音で指定できます。
ENVELOPEにはディケイとリリースのパラメーターがあり、DECAYを左に回し切るとミュート奏法っぽいサウンドとなりました。使用頻度の高そうなミュート奏法のプリセットが見当たらないと思っていましたが、DECAYで対応できるわけですね。またRELEASEを調整することで、ベースのグルーブをガラッと変えることができるため重宝するでしょう。OUTPUTにはVELOCITYとREL NOISEがあり、REL NOISEではノート・オフした際に発生するノイズ(ゴースト・ノート)の音量を増減可能です。
画面右下にあるGLIDEセクションでは、メニューからグリッサンド奏法/ポルタメント奏法を選択でき、GLIDE RATEでノート間を移動する際の時間を調整することができます。GLIDE RATEの値が低いとリアルなグリッサンド/ポルタメント奏法のサウンドに、することができるでしょう。LEGATOを有効にすると、レガート奏法時のみにグライドが適用される仕様に。例えば、スタッカートで演奏した際はグライドが無効となります。つまり、レガート奏法時のときだけグリッサンドされるので、この機能は非常に理にかなっていると言えますね。
なお、キー・スイッチによって4種類のスライド・アップ/ダウンも可能です。ベース演奏のポイントとなるパラメーターはすべてメイン画面に配置されているので見やすく、直感的な操作ができると感じました。
内蔵エフェクトについても見てみましょう。画面最上段のフォルダー・アイコンから2つ右隣にある横フェーダーのようなアイコンをクリックすると、エフェクト設定画面へ切り替わります。左端には4バンドEQのセクションがあり、この右隣には4つのエフェクト・スロットが並びます。
4つのエフェクト・スロットには、コンプ/ディストーション/コーラス/フェイザー/フィルター/ディレイ/リバーブといった内蔵エフェクトをアサインすることが可能です。まさにエフェクト・ペダルの感覚で使用することができるわけですね。特筆するならば、コンプはアタック/リリースの効きがよく、トランジェントのコントロールが行いやすいと感じました。さらにディストーションや空間系のエフェクトに関しても、単体で欲しいと思うくらいどれもが高品位なものだと言えます。
Dan Dean Essential Bass Collectionはリアルなベースからエフェクティブなベースまで幅広くカバーできるため、さまざまな音楽ジャンルで活躍することでしょう。制作の現場では、ベースに特化したソフト音源は既に定番のものが幾つか決まっている印象がありますが、それらの選択肢の一つにしてもよいくらい魅力的な製品だと感じます!
阿瀬さとし(Cojok/Smash Room)
【Profile】作曲家/マニピュレーター/ギタリスト。Kco(vo、acg)とのアコトロニカ・ユニット=Cojokでギターとプログラミングを担当し、CMソングや劇伴の制作、ライブ・マニピュレーションもこなす。
TRACKTION Dan Dean Essential Bass Collection
14,300円
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.11以降(64ビット)、AU/VST2&3対応のホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 10/11(64ビット)、VST2&3対応のホスト・アプリケーション
▪Linux:Ubuntu 18.04で動作確認(64ビット)、VST2&3対応のホスト・アプリケーション
▪共通項目:インストール時に5.7GB以上の空きディスク容量が必要