『PHONK LIBRARY』はその名の通りフォンク向けのサンプルライブラリーで、ドラムやベース、メロディのループやワンショットを収録する。
フォンクという音楽の醍醐味は、極端な音質にあると言えるだろう。カセットテープやVHSテープを通して90’sのミックステープの音質を再現するタイプや、ロシアなどでよく見られる音量を上げて音を割るタイプ、音をスクリュードして引き伸ばすタイプなど、その音質の制作手法はさまざま。ただこれらは音質の劣化であり、弊害も存在する。それは音がスカスカになったり埋もれたり、“鳴るべき部分が鳴らない”ということ。そうなると、スマホのスピーカーではうまく聴こえないし、クラブでもプレイされにくい。これが、フォンクがアンダーグラウンドにとどまっている一因であるように思う。
そんな粗悪な音を楽しむフォンク勢だが、スタジアムを埋め、クラブでヘビープレイされるようなアーティストもいる。彼らの曲は、フォンクらしい音質でありながら“あるべき音”がしっかりと鳴っている。それは“単なる劣化”ではなく“コントロールされた劣化”だからである。『PHONK LIBRARY』は、このような曲作りに最適と感じた。荒れているが芯もあるのでさらにひずませても音が痩せず、存在感のある音作りができる。また、メロディのループから前のめりな勢いを感じるので、ドリフト系やロシア勢を意識したのでは?と思った。その辺りの曲作りをしたい方にはもちろん、初心者から玄人まで、幅広くお薦めできる。
FULLMATIC XX / FULLMATIC / LORD FULLMATIC
【Profile】DJ/ラッパー/ビートメイカー。“PHONK日本代表“とも呼ばれる国内PHONKオリジネーター。自主レーベルであるSCISSORHANDS ENT. 代表。
BFRACTAL MUSIC
PHONK LIBRARY
2,827円
(為替レートによる価格の変動あり)
▪メディア:ダウンロード販売 ▪容量:約350MB ▪データ・フォーマット:WAV、MIDI