フックアップが運営するオンライン・ストアのbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのはPSP AUDIOWAREのモジュール型チャンネル・ストリップ・プラグイン、PSP InfiniStrip Windです。7つの専用スロットと、任意のスロットをインサート可能な2つのスロットを備え、プリアンプやフィルター、ゲート、コンプ、EQ、リミッターなど全部で25種類のモジュールを自由に組み合わせることができます。Mac/Windowsで動作し、AU/AAX/VST2&3プラグインとして使用可能です。それでは、詳しく見ていきましょう!
ワークフローと見やすさを考慮した
3つの異なる表示モードを搭載
PSP InfiniStrip Windは、クリックしたものだけが見える“mini view mode”、選択したモジュールだけが見える“resizeable view mode”、プラグイン画面全体が見える“full view mode”といった、ワークフローと見やすさに合わせて選べる3パターンの表示モードを搭載。API 500互換モジュールをほうふつさせるデザインも、エンジニア心をくすぐります。立ち上げてみると、プリアンプ、フィルター、コンプ、EQというスタンダードな順番で各モジュールがインサートされており、かつresizeable view modeになっているため即座にミックスに取りかかることができます(画面①)。
プリアンプ・モジュールはGain、Pre 60s、Pre 70s、Pre 80s、ADC 90sの5種類があり、それぞれにAUTOボタンが付いているのが特徴(画面②)。信号を入力してAUTOボタンを押すと、REFERENCEノブで設定したゲイン・レベルに自動調整してくれます。すぐさま理想の音に仕上げたいときにこういった機能はとても効果的。スピーディにミックスを進めることができます。
ちなみに僕は、PSP AUDIOWAREのコンプ/リミッター・プラグインのVintageWarmer 2を愛用しています。理由は音のひずみ具合が素晴らしいから。つやを残したままザラついた質感を付加できるのが魅力なのですが、PSP InfiniStrip Windのプリアンプ・モジュールの下部に搭載されたDRIVEノブとNOISEノブでも、その質感を再現できるのがうれしいですね。温かみのあるアコースティック・サウンドにしたいときはPre 60s、NEVE好きにはPre 70s、SOLID STATE LOGIC好きにはPre 80s、くっきり奇麗な音に仕上げたいときはADC 90sをチョイスするとよいでしょう。
操作性の面で優れていると感じたのは、パラメーター値はそのままで、これら5種類のプリアンプ・モジュールを変えられるところ。コンプやEQ、リバーブなどである程度音が出来上がったあとにプリアンプの種類だけを変えられるのは、最後の微調整としてとても役立つことでしょう。
PSP InfiniStrip Windのフィルター・モジュールは、シンプルなパラメーター構成のBasic Filters、ローパス/ハイパス・フィルターに1バンドEQが備わるPro Filters、これにサイド・チェイン機能が付いたS.C.Filtersの3種類があります(画面③)。どれも輪郭がくっきりしたフィルターで、さすがPSP AUDIOWAREのサウンドです。
ゲート・モジュールはExpander、Gate、Duckerの3種類があり、どれもナチュラルな効き具合で好印象(画面④)。スネアの録音で入り込んだハイハットを抑えるためのゲートのほか、タムやフロア・タムをたたくときだけに開くゲートなどにおいては、極端ではなく自然に処理されるのがうれしいです。特にスレッショルドのニー(Knee)を調整するためのSHAPEノブの効き具合が絶妙で便利だと感じました。
コンプ・モジュールには光学式をモデリングしたOpto Pressor、FETをエミュレートしたFET Pressor、VCAを再現したVCA Pressorの3種類があります(画面⑤)。Opto Pressorはつやがあり癖が無いキャラクター。FET Pressorは、マットで程良くエッジがある音質です。VCA Pressorは芯がありながらもナチュラルに効くというイメージで使い分けるとよいでしょう。
世界中のトップ・エンジニアが設計した
150種類以上のプリセットを収録
EQモジュールは3種類が付属。4バンドで、カーブ・タイプやQ幅をセレクトできるChannelQ、Q幅をスライダーで細かく調整できるPreQursor、レトロな音質を得られるRetroQがあります(画面⑥)。個人的にはRetroQで大まかな形を作ってからPreQursorで微調整すると、満足いくサウンドが得られました。
リミッター・モジュールには、自然でつややかな効き具合のOpto Lim、くっきりした印象のVCA Lim、つや感と倍音が得られるBrickWallのほか、ざらついた質感を負荷できるSaturatorがあります(画面⑦)。たまに飛び出すピーク部分だけを抑えたいときは、Opto LimとVCA Limを使い分けられるので便利です。
さらにPSP InfiniStrip Windにはマスター・コントロール・フェーダー・モジュールのMaster Controlのほか、スペシャル・モジュールとして、シビランスを抑えるDe-esser、ハム・ノイズを除去するDe-hummer、ダイナミックEQのReactivEQが備わっています(画面⑧)。特にReactivEQは、ゲートよりもさらに細かく、かつ自然に音を分離させるのに適したツールといった印象です。
ここまで紹介した各モジュールを、ドラムやギター、ボーカルなどさまざまな楽器に試してみましたが、全体を通してオープン・リール式のテープに通しているかのような温かみのある質感がよく出ていると思います。デジタル的な奇麗さというよりも、粒立ちの良いアナログライクなサウンドに仕上げることができるため、PSP InfiniStrip Windは生楽器を多用するような楽曲にも効果を発揮するでしょう。アレンジしながらミックスも詰めていくスタイルのユーザーにももってこいです。
最後に大きな目玉の一つであるプリセットについて。PSP InfiniStrip Windには、世界中のトップ・エンジニアが設計した150種類以上のプリセットが収録されています。モジュールをインサートする順番や組み合わせ方はとても参考になりますし、プリセットを作成したエンジニアの写真や情報にもアクセスできるため、知識を深めることも可能です。
こういった点も含めて、PSP InfiniStrip Windはあらゆるクリエイターやエンジニアにお薦めできるツール。レイテンシーはほぼゼロなので、録音しながら細かいミックスを詰めていくこともできます。PSP InfiniStrip Windは、まさにスピード感と自由度が合わさった、現代的なプラグインだと言えるでしょう。
PSP AUDIOWARE PSP InfiniStrip Wind
価格:22,080円
Requirements
■Mac:OS X 10.8〜macOS Catalina 10.15以降(32/64ビット)、AU/AAX/VST2/VST3対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 7/8/10(32/64ビット)、AAX/VST2&3対応のホスト・アプリケーション
■共通:最新版iLok License Managerのインストールが完了している環境
yasu2000
NYのBushwick Studioを経て、現在はbig turtle STUDIOSのレコーディング/ミックス・エンジニアを務める。origami PRODUCTIONS所属のアーティストのほか、あいみょんなどを手掛けている。
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