ANTELOPE AUDIOからオーディオ・インターフェースZenシリーズの最新機としてZen Quadro Synergy Coreが発売されました。何やらUSB端子が2つ用意されている様子。利用シーンを想定しながらチェックしていきます。
14イン/10アウトの入出力と多くの機能を凝縮 2台のデバイスをそれぞれ同時に接続可能
本機は幅210mmのサイズに14イン/10アウトを実現したオーディオI/Oで、最高24ビット/192kHzに対応し、バス・パワーで駆動します。Synergy Core技術を用いたエフェクトSynergy Core AFXが使用できたり、事前に設定しておいたエフェクトや内部ミキサーのプリセットを呼び出してスタンドアローンで使うことができたりと、従来のZenシリーズ機の特長を踏襲しているようです。
フロント・パネルにはマイク/ライン/Hi-Z入力(XLR/フォーン・コンボ)とヘッドホン出力(ステレオ・フォーン)が2つずつ。本体左にはADAT入力(オプティカル)が実装されます。
リア・パネルにはマイク/ライン入力(XLR/フォーン・コンボ)が2つ、モニター出力L/R(フォーン)、ライン出力L/R(フォーン)、S/P DIF入出力(コアキシャル)に加えUSB-C端子が2つ。
USB 1はWindows/Mac、USB 2はパソコンとiOS/Android機器との接続に対応し、同時使用が可能な“Dual-USB”仕様です。なお出力に関して、ヘッドホン出力1とモニター出力は同じなので(個別にボリューム設定可)、アナログ出力はステレオ3系統です。
トップ・パネルはディスプレイ、ロータリー・コントロール、3種のファンクション・ボタンという構成。これらで入出力の切り替えやボリューム調節などが行えますが、コントロール用ソフトウェアAntelope Launcherから起動するコントロール・パネルによって、パソコンでより詳細に操作が可能です。
さて、まずはAPPLE MacBook Proに接続して既存の楽曲を聴いてみたところ、一聴して気が付くのは、左右の定位の良さと出音の明瞭感です。トラック数の多い楽曲でも個々の音が容易に聴き分けられ、シンバルや打楽器のリアルさ、シンセやリズム・マシンの質感、リリースまで解像度が高く感じられるのは、AD/DAコンバーターや独自の64ビットAFCクロッキング・テクノロジーによるものなのでしょうか。ヘッドホンからの出力は音像が近く腰高に感じますが、まとまった低域もあり、分離も良く聴きやすいです。
“あらゆるソースを素直に受け止める”マイクプリ 配信や制作のシステム拡張に便利なDual-USB
続いて、本機をDAWとDJソフトを軸にしたライブ・セットに組み込んでみました。モジュラー・シンセを元にした複雑な音源を鳴らしてみると、音の立ち上がりから減衰までの間、フォーカスが合っているようで、ずっと聴いていられる心地良さ。マイクプリの音質は、張りがありながらもクリアな印象で、ボーカルはもちろん、あらゆるソースを素直に受け止めてくれそうです。また本機は3系統のステレオ出力を備えていると述べましたが、それによりハードウェア・エフェクターに対してセンド&リターンを組むこともできました。
Dual-USBの利便性を確認するため、APPLE iPadをライブ・セットに追加します。普段からライブでiPadを用いることがあるのですが、別途オーディオI/Oやケーブルを用意する必要があり、ちょっと面倒なんですよね。しかし本機はUSBでつなげるだけ! USB 2は、USB 1からは独立して2イン/2アウトのオーディオI/Oとして機能し、iPadへの給電も可能です。iPadでサンプラーのアプリを使ってみたところ、DAW側の音のサンプリングもすぐできました。このとき驚いたのが、DAWとiPadアプリのサンプリング・レートが一致していないこと。しかし、それでもトラブルもなくデータをやりとりできています。これは、最近のファームウェア・アップデートで実現した仕様だそうです。
さらに“APPLE iPhoneでの配信にも利用できるのでは?”と思い立ち、テストしてみました。パソコンとUSB 1を接続してDAWにギターを録音し、そのギターとバック・トラック、さらにマイク入力から収録したトークをミックスして、USB 2に接続したiPhoneに送って配信するシステムです。今回はInstagram Liveでテストしたので、内部ミキサーでモノラル・ミックスにして出力先をセッティングすれば、すぐに配信が開始できました。このときギターはHi-Z入力に接続し、内部ミキサーに6ch分用意されているSynergy Core AFXのギター・アンプ・シミュレーターを通しました。Synergy Core技術によってレイテンシーを感じることもありません。なお、ミキサーの設定により、エフェクトをかけないサウンドを同時にDAWに録音することも可能です。その都度ミキサーの設定を変えるのは少し手間ですが、これらの設定は本体やパソコンに保存できるので、“ライブ用”“配信用”“ボーカル録音用”など事前に用意しておくといいでしょう。
高音質な入出力を詰め込んでいるだけでもかなり好印象ですが、Dual-USBにより、手軽に手間なくスマホやタブレット、もう1台のパソコンをDAWシステムにインテグレートできることが、クリエイターの価値創出のサイクルに寄与するのでは?と感じます。機材のネクスト・ステップを考えている方はもちろん、高品質I/Oを使用している人が“気軽に使える優秀なもう1台”として導入するのも良いと思います。
奥村建
【Profile】Delaware及びlinesの“guitar & computer player”。Buffalo Daughterのライブ・メンバーとしても活動中で、11月に都内でのライブを控える。使用したオーディオI/Oは現在計50台。
ANTELOPE AUDIO Zen Quadro Synergy Core
98,800円
SPECIFICATIONS
▪ビット/サンプリング・レート:24ビット/44.1、48、88.2、96、176.4、192kHz ▪接続:USB 2.0(USB-C) ▪外形寸法:210(W)×58(H)×136(D)mm ▪重量:900g
REQUIREMENTS
▪Mac:Mac OS X 10.14以降
▪Windows:Windows 10/11 64ビット(最新のMicrosoft更新プログラムを適用)、 INTEL Core i5またはAMD Ryzen以上のプロセッサーを推奨、USB2.0以上のUSBポート
▪共通項目:ストレージ容量10GB以上、 8GB以上のRAM(16GBを推奨)
▪iOS:iOS 14以降を推奨、Lightningポートを備えたデバイスの場合、Camera Kitアダプターが必要
▪Android OS:USB-Cポートを備え、UAC2に対応するデバイス推奨