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ランダマイズ/コンピング/グルーヴ〜Live 11で追加された新機能を試す 〜Seihoが使うLive【第3回】

DAW「Live」の使い方をSeihoが解説する

 今回で吉田先生の話も最終回! 2週間の無断欠席後、髪をピンクに染めて帰って来た吉田先生。復帰後初の授業、“みんなに聴いてほしい曲がある”と言って聴かせてくれたのがhide with Spread Beaverの「ピンクスパイダー」。そう、先生はこの2週間hideの告別式にファンとして参列していたのだった。その後もMTRの使い方、多重録音のコツ、自作エフェクターの作り方など小学校卒業までいろいろ教えてくださった吉田先生。本当にありがとうございました。はい、ABLETON Liveの話ね! それじゃ行ってみよー!

発音確率の設定による偶然的な展開
ライブで役立つマクロ機能の強化

  今回はLive 11の新機能を中心に紹介。まずは打ち込んだノートの下に表示されるChanceというパラメーターです。この値を変化させると、ノートが鳴る確率が変化。この値はRandomizeボタンを使うことで一括でバラバラに設定することも可能です。これを使って僕がよくやるのは、Liveのドラム・キットやNATIVE INSTRUMENTS Battery、モジュラー・シンセで録ったドラムなどをDrum Rackに並べて適当に打ち込み、その後全体にランダマイズをかけて音が鳴る確率を減らす手法。そうすると、発音のタイミングはグリッドに沿ったまま、ループごとに違う鳴り方をする偶然的な展開が作れます。その中で確実に鳴ってほしい、頭に置いたキックなどはChanceを100%にしておくことで毎回鳴らすようにしておけます。

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ベロシティやChance(発音確率)の値をランダムにするRandomizeボタン(赤枠)。右の値でランダマイズの量を設定することも可能。その下は、指定範囲内でベロシティを再生ごとに変化させるVelocity Range(青枠)

 ベロシティもRandomizeを適用できますが、ただ押すだけでは完全にバラけます。そこで便利なのがVelocity Range。設定した値の範囲内で、再生するごとに異なるベロシティで再生され、値が小さいほど振れ幅が小さくなります。

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ベロシティにRandomizeをかけたもの(画面上)とVelocity Rangeを設定したもの(同下)の比較。Randomizeをかけると値はバラけた状態で固定されるため、フレーズを再生する度に同一のベロシティで再生される。各ノートの値は後から調整可能。一方、Velocity Rangeを設定すると、設定範囲内で毎回異なるベロシティで再生され、意図しないヨレや強弱が生み出される

 これらの使い分けとしては、Randomizeボタンで変化を付けるとバラけた状態で固定され、何回ループしても同じ鳴り方をします。後から一部だけ変更することもできるので、ループ感を保ちたい場合や調整を加えたい場合に使います。一方Velocity Rangeを設定すると、ループを再生する度に違う鳴り方になるので、ハイハットやキックなどで意図していないヨレ感や強弱が欲しいときには、+6〜10くらいの小さい幅で設定。もともと僕はMIDIエフェクトのVelocity内でRandomというパラメーターをよく調整していましたが、これはトラック全体にかかるので、キック、ハイハット、スネアでトラックを分けて作業しないといけませんでした。しかしRandomize機能が付いたことで、同じトラックに複数のパートが入っていてもノートごとにランダマイズするかしないかを選べるようになったので、これはめちゃくちゃ便利な機能です。

 

 次に紹介したいのがMacro Variations。Drum Rack内や複数のオーディオ・エフェクトを組み合わせてグループ化すると、マクロコントロールが表示されます。ツマミ右上のMapボタンを押して、任意のパラメーターをアサインするだけでマッピングの設定は完了。Live 11では、このパラメーターをランダマイズするRandボタンと、それらのパラメーターの状態を保存しておくMacro Variationsが新しく搭載されました。自分の設定した状況を保存しておけるので、ライブのときなどに便利ですね。制作でも活用できそうか探っています。

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マクロコントロールの表示。パラメーターをコントロールするツマミは最大16基まで使用することができるようになった。そのパラメーター設定を保存しておけるのが新機能のMacro Variations(黄枠)。リスト右の再生ボタンを押すだけで、保存した設定に瞬時に切り替わる。また、これらのパラメーターのランダマイズ機能(赤枠)も新たに追加された

作業効率が上がるコンピング機能
カットアップ的なものも簡単に作成可能

 Live 11ではコンピング機能も追加され、1つのトラックに複数のテイクを残しておけるようになりました。ここでは先程のRandomizeを使って作ったパターンを録音してみましょう。リアルタイムで音に変化を付けながら録音してもいいですね。

 

 複数テイクのレーンを表示させるには、幾つかの手順が必要です。まずはオートメーション・モードがオフになっているか確認。次に、ツール・バーから“作成”→“テイクレーンを挿入”を選択すると、録音したすべてのテイクレーンが表示されます。そしてLiveの画面右上にペンのアイコンで表示されたドロー・モードを選択して、各テイクから採用したい部分を選択していきます。今までは、複数のトラックに録音して、その中から気に入った部分を探して波形を切り出して組み立てていって……という作業をしていました。ボーカルも、OKテイク1、2、3、その下に録音したテイクを並べて、良い部分をOKテイク1に入れながら、言葉尻などでどちらが良いか悩んだときはOKテイク2に並べて……とひたすら繰り返していたので、コンピング機能によって作業効率がすごく上がりました。

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録音した複数テイクを画面に表示させるには、ツールバー上の作成→テイクレーンを挿入を選択(赤枠)。そうすることで複数のテイクが一覧で表示される。表示後はドロー・モードに設定することで、カーソルがペン型のアイコンになり、採用するテイクを選ぶことができる

 しかも、コンピングのテイクレーンは録音した素材以外の音も入れられるんです。これが本当に便利で、ほんの一瞬だけ別の楽器を入れたり、いろいろなボーカル・トラックを並べても面白いんですよね。カットアップ的なものが簡単に作れますし、これまでと違った発想のものができると思います。

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テイクレーンには、録音したオーディオだけではなく、別のトラックから素材を張り付けることも可能

種類豊富になったグルーヴ
最初のアイディアや生っぽさのヒントに

 最後に紹介するのは、MIDI/オーディオ・クリップの鳴るタイミングや強弱を調整できる“グルーヴ”。グルーヴ自体は以前から搭載されていますが、Live 11では種類が増え、より面白くなりました。僕はドラムのグルーブを考えるとき、Liveのグルーヴを元にずっと聴いていられるようなループを探していく、という作業を試したりします。特にボンゴやパーカッション類のグルーブは、ドラムと違うのでつかみにくいんですよね。加えて、普通この位置、と決まっているキックやスネアの位置をぐちゃぐちゃにして考えるためにも、ドラムのノートを適当に置いて、いろいろなグルーブを試します。

 

 使い方は、グルーヴのリストから気に入ったものをダブルクリック。その後、Clip内のGrooveという項目に選択したグルーヴが表示されます。ここでリストから選択するだけで反映後の鳴りを確認可能。さらに、リストの上にある矢印マークを押すと選択したグルーブが反映されて、MIDIノートのベロシティや位置などが変化します。最初のアイディアを考えるときや、生っぽいグルーブが欲しいときは、まずグルーブを反映させて、そこからさらに自分でグルーブを調整したりしますね。

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グルーヴの反映前(画面上)と反映後(同下)。MIDIノートの長さや位置、ベロシティが変化しているのが見て取れる(ベロシティの変化はノート・カラーの濃淡で表現)。選択したグルーヴの一覧や、グルーヴを反映させるボタンはClip内に表示されたGrooveという項目内に搭載されている(赤枠)

 3回にわたってお送りしたSeihoですが、このたびAmazon Music Originalで最新作『CAMP』をリリースしました。パチパチ。こちらもDAWはすべてLiveで組み立てたので、ぜひお聴きください! では、ありがとうございました! 何か質問とかあったらダイレクト・メッセージして! ばーい。

 

Seiho

【Profile】米PitchforkやFADERなど多くの海外メディアからのアテンションを受け、LOW END THEORY、SXSWといった海外主要イベントへ出演。フライング・ロータス、ディスクロージャー、マシュー・ハーバート、カシミア・キャットらとのツアーや、三浦大知、矢野顕子、KID FRESINO、PUNPEEらとの共演やプロデュース、またAvec Avecとのポップ・デュオ=Sugar’s Campaignなどで知られる大阪出身のアーティスト、プロデューサー。

【Recent work】

『CAMP』
Seiho

(Amazon Music)

 

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