皆様こんにちは。“世界中の毎日を踊らせる”をテーマに活動しているLucky Kilimanjaroでボーカルとコンポーザーをやっています、熊木幸丸(くまきゆきまる)です。冬、寒すぎ。“毎年これやんの? 正気?”って思いますよね、冬。連載3回目、最終回です! よろしくお願いします!
Wavetableでジューシーな音色やエフェクト音を得る
ABLETON Liveには実用的かつクリエイティブなシンセ音源が備わっています。中でも“Wavetable”は一番使用頻度が高く、最近の楽曲で使わないものは無いくらいです。7月にリリースした「地獄の踊り場」でもWavetableでベース・サウンドを作っています。欲しいサウンドに合わせてウェーブテーブルを選びつつ、 波形位置とWarpのパラメーターでトーンを追い込みます。ピッチやフィルターのエンベロープによる変化もモジュレーション・マトリックスから簡単に設定できるので、素早く理想のサウンドまで到達できます。
Lucky Kilimanjaroではフィルターを一瞬だけ解放させる“びゃん”といったシンセ・サウンドをよく使いますが、その基本的な作り方を説明します。オシレーター(波形)は任意(SawやPulseが分かりやすいです)で、FilterのFrequencyを100Hzくらい、Resonanceを60%くらいに設定。Envelope2をFilterのFrequencyに、Amountの値を50~75ほどで割り当てます。Envelope2のAttackを20ms、Decayは400ms、Sustainを0%に設定してください。これで弾くと、良いあんばいにキレとジューシーさを併せ持つサウンドができると思います。
ここから波形やフィルター・タイプ、スロープ、ADSRの値を変えることでいろいろなサウンドを作ることが可能です。例えば、先述のEnvelope2をWarpのパラメーターにアサインするとまた違うトーンのシンセができます。こういった操作を画面内でサクサク進められるのがWavetableの魅力です。ディストーション的にひずませたいときは、SOFTUBEと共同開発されたデバイス“Amp”を追加。特に、ベースにかけると荒々しいサウンドになるので気に入っています。
また、Wavetableはエフェクト・シンセとしても便利で、オシレーターが充実しており、自分でも波形を入れ込めるため、いろいろなサウンドを試せるのです。モジュレーションが多くかかる複雑な音色にしたい場合は、デバイス名の横の▼をクリックするとエディット画面が上部に展開します。MIDIノートの複数パラメーターを同時に操作するMPE(MIDI Polyphonic Expression)にも対応しているので、ピッチをスムーズに上昇させるライザーを作る際もMIDIクリップでピッチの制御が可能です。
非常にシンプルなエフェクトですが、画面内の適当なパラメーターをモジュレーション・マトリックスやマクロに割り当てると、自分では考えもしなかったサウンドが出てきたりしてインスピレーションを刺激されます。例えば、LFOをピッチやフィルターにAmountを100で割り当てて、Instrument RackのマクロにGlobal AmountとLFOのRateをマッピングすると、1つのマクロで音をギュルギュル変化できるエフェクト・シンセが作れます。
最近アップデートされたデバイス“Reverb”もかなり使いやすくなった印象があり、Wavetableやマクロと合わせてエフェクトを作り上げることが多くなりました。Wavetableは基本的な音色をしっかり作れて、クリエイティブで知らない音にもたくさん出会うことができるとても良いシンセです。
リズムの打ち込みに必須なPackとグルーヴ機能の活用
Liveにはさまざまな“Pack”(拡張デバイス)があります。SPITFIRE AUDIOが作るオーケストラ音源やSONICCOUTUREのMalletsなど、音も即戦力で非常に使いやすいものがたくさんそろっているので、制作でもよく使用します。
最近お気に入りなのがDrum Machinesです。ROLAND TR-808やTR-909などのリズム・マシンがサンプリングされたシンプルなデバイスで、そういったドラム・サウンドを使用するときに重宝しています。ピュアな出音で加工がしやすく非常に扱いやすいため、チョイスすることが多くなりました。キットを読み込めばDrum Rackが立ち上がり、パーツごとに編集するパラメーターがマクロで用意されているので、エディットがしやすいです。Push 2と組み合わせて使えば、ハードウェア・リズム・マシンのように音色とシーケンスを同時に作っていけるのも使う理由の一つです。
リズムの打ち込みに関する話題を続けると、クリップに挿入できるグルーヴ機能もよく使います。ハウスのビートを作る際は、16分音符のスウィングをどう設定するかで楽曲の印象が全く違います。そこで私は、16分音符でハイハットをベタ打ちしたクリップにグルーヴを挿入し、スウィングの方向性を決めていくということを頻繁に行っているのです。
グルーヴ機能は複数のクリップで同じ設定を共有できるため、同じグルーヴを共有したいクリップに同一のグルーヴを挿しておけば、グルーヴプールでそれらのクリップをまとめて変更することができます(Live Intro/Liteでは編集不可)。オーディオクリップもトランジェントを検出しておけばグルーヴが適用できるので便利です(リズムもののオーディオクリップの場合は、Warpアルゴリズムを“Beats”に設定するとグルーヴがより効果的に変化します)。ランダマイズさせたいクリップでグルーヴプールの“ランダム”の値を1〜10%くらいで設定すると、ほんの少しのタイミング・エラーが生まれることで音に表情が出て、よりサウンドが生きるので、私はパーカッションやシンセなどによく設定します。
Live付属のグルーヴには実用的なものがそろっているので、それらだけでも十分活躍できますが、サード・パーティ製のものもあり、中でもSAMPLE FROM MARSから無料で提供されているGrooves From Marsはさまざまなリズム・マシンのグルーヴが収録されています。こちらも合わせると非常に強力ですのでぜひ試してみてください。
3回にわたってLiveの使い方を紹介してきました。Liveは、自分の中のアイディアを具現化する作業を、とても素早く、楽しく行うことができますし、自分の頭の中には無い“ビビッとくるサウンド”にもたくさん出会わせてくれるDAWだと思います。ぜひ皆さまも、Liveで自分のクリエイティブを爆発させてみてください。ありがとうございました!
熊木幸丸
【Profile】同じ大学の軽音サークルで出会った6人で結成したLucky Kilimanjaroのボーカル/コンポーザー。2022年3月に3rdフル・アルバム『TOUGH PLAY』を発売し、6月にはバンド史上最大動員の全国ツアー『Lucky Kilimanjaro presents.TOUR “TOUGH PLAY”』のファイナルをパシフィコ横浜で開催。7月13日「ファジーサマー」を発売、9月11日からは全国ツアー『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR ”YAMAODORI 2022”』を開催している。
【Recent work】
『一筋差す』
Lucky Kilimanjaro
(ドリーミュージック)
ABLETON Live
LINE UP
Live 11 Lite(対象製品にシリアル付属)|Live 11 Intro:10,800円|Live 11 Standard:48,800円|Live 11 Suite:80,800円
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS X 10.13〜12、INTEL Core I5以上またはAPPLE M1プロセッサー
▪Windows:Windows 10 Ver.1909以降、INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー
▪共通:8GBのRAM、オーソライズに使用するインターネット接続環境