1996年にシーンに登場し、その独特な浮遊感のあるサウンドで脚光を浴びたレイ・ハラカミ。それをROLAND SC-88(後に後継機のSC-88Proなど)のみで生み出していたことは、当時の本誌読者にも驚きを持って受け止められた。
ハラカミのオリジナリティは多くのアーティストも認めるところで、矢野顕子やくるり、イルリメ、サカナクション、NUMBER GIRLなど、多くのアーティストともコラボを重ねた。
そんなハラカミは2011年7月に40歳の若さで急逝したが、本誌連載「The Choice is Yours」で健筆を奮う原 雅明氏のレーベルringsからのリイシューをはじめ、現在も再評価が続いている。
ここでは『サウンド&レコーディング・マガジン』本誌から、ハラカミに関する記事をピックアップして紹介。Web会員の方はぜひご覧いただき、あらためて彼の音楽に触れてみてほしい。
1998年5月号 インタビュー『unrest』
デビュー・アルバム『unrest』リリースを受けての初インタビュー。音楽的なバックグラウンドや、ROLAND SC-88がメインであることが明かされている。記事はこちらから。
2005年7月号 インタビュー『lust』
『lust』リリース時のインタビュー。自身の音楽を“主体が居ない”と分析。だからこそ主体たる歌い手からコラボレーションの依頼が来るのではないかと語る。記事はこちらから。
2007年8月号 巻頭インタビューyanokami『yanokami』
矢野顕子とハラカミがユニットyanokamiを結成。お互いの個性がごく自然な形で結実し、新たな世界を作り上げた稀有なポップス・アルバムを二人の言葉からひもとく。記事はこちらから。
2007年12月号 特集:みんなディレイで作ってる
レイ・ハラカミのほか大木伸夫、SHIN NISHIMURA、高田漣、岡部洋一、内橋和久が参加した「ディレイでのフレーズ作り」のノウハウ集。NHK ETV『星野源のおんがくこうろん』で使用された写真は、この取材時のもの(撮影:中西俊介)。記事はこちらから。
2016年2月号「レイ・ハラカミのサウンドをたどる」
4枚のオリジナル・アルバム『unrest』『opa*q』『red curb』『lust』と企画盤『trace of red curb』『わすれもの』『暗やみの色』『天然コケッコー完全盤』を合わせた計8作品の再発を受けて、再発元ringsレーベルのプロデューサーであり、ハラカミとも親交のあった原雅明氏がサウンドの変遷を追う。上掲2007年12月号の機材セットアップ写真も再掲。記事はこちらから。
2012年1月号 yanokami『遠くは近い』
2011年7月、ハラカミが急逝したことを受けて制作が中断していたyanokamiの2nd『遠くは近い』が同年末に完成。矢野はインタビューで、「(ハラカミさんのサウンドと)“ハラカミ風サウンド”は何かが絶対違う」と語る。一方、エンジニアのZAK、プログラマーの木本ヤスオの両氏は、ハラカミが遺したデータからアルバムを完成させた過程を語ってくれた。記事はこちらから。
番外:1997年3月号 ROLAND SC-88Pro×YAMAHA MU90
「シンセとしての可能性を探る」と副題がつけられたスペシャルレポート。SC-88Proは1996年に89,800円で発売。パート数32(同時に32種類の楽器の音が扱える)、最大同時発音数64 音色数1,117(ドラムセット42種)。リバーブ、コーラス、ディレイ、2バンドEQのほか、インサーションエフェクト(64種類から選択)を1系統備えていた。
現在のソフト音源で言えば、NATIVE INSTRUMENTS KontaktやIK MULTIMEDIA SampleTank、UVI Falconのような“一通りの音色がそろっている”のSC-88Proのようないわゆる“DTM音源”だった。
このレポートでは、当時の好敵手であったYAMAHA MU90との比較で、単なるサンプル再生だけではなく、シンセサイザーとしてどれだけ音色コントロールできるかに着目。まさにこうした機能を駆使して、SC-88Proのポテンシャルを引き出していたことこそ、レイ・ハラカミがシーンで最初に着目された理由の一つと言える。記事はこちらから。
OPCODE EZ Vision
ハラカミが使用していたOPCODE EZ Vision(Mac OS 9対応)は、現在のDAWソフトとは異なり、オーディオを扱うこともできなければ、ソフト音源も使えない、純然たるMIDIシーケンスソフト。そんなツールを使ってハラカミはSC-88Proを操り、豊穣なサウンドを奏でていた。画面は上の2007年8月号に掲載されたyanokami「おおきいあい」のもの。