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MONDO GROSSO/大沢伸一 インタビュー【後編】〜suis(ヨルシカ)参加楽曲を解説&本人大絶賛のスピーカー登場!

MONDO GROSSO/大沢伸一 インタビュー【後編】〜suis(ヨルシカ)参加楽曲を解説&本人大絶賛のスピーカー登場!

大沢伸一のソロ・プロジェクト、MONDO GROSSOの8thアルバム『BIG WORLD』の制作背景に迫るインタビュー後編では、suis(ヨルシカ)参加楽曲の詳細や、最近導入したというハードウェアやスピーカーの魅力について語っていただいた。

Text:Susumu Nakagawa Photo:AmonRyu

インタビュー前編はこちら:

はじめから“コントラストで遊ぶ曲”っていうテーマがありました

個人的にインパクトを受けたのは、ドラム・ビートとダウン・テンポなピアノのセクションが交互に繰り返される「最後の心臓  [Vocal:suis (ヨルシカ)]」です。

MONDO GROSSO この曲はシンガー・ソングライターである大和田慧ちゃんとの共作なので、いわゆる「偽りのシンパシー[Vocal:アイナ・ジ・エンド(BiSH)] 」と同じコンビネーションです。なのでその路線というか、歌詞もドキッとする方向性というか……。

 

セクション間でのコントラストを、あえて際立たせるような構成やアレンジになっていますね。

MONDO GROSSO 最初から“コントラストで遊ぶ曲”っていうテーマがありました。自分としてはMONDO GROSSOっぽくないなと思っていたし、もともとこのアルバムに入れる予定では無かったのですが、チームの中ですごく評判が良かったので採用したんです。アレンジを変えたり、ボーカルが入ったりして、最終的にはMONDO GROSSOらしい曲になったと思います。

 

序盤から登場する、笛のようなリフも印象的です。

MONDO GROSSO これはOUTPUT Exhaleです。プリセットではエフェクト設定も込みの音作りがされているので、オケにもなじみやすかった。

 

ROLAND TR-808系キック・ベースの音源は?

MONDO GROSSO あれはTONE2のElectraxで一度打ち込み、それをオーディオ・ファイルに書き出したあと、コーラス・エフェクトなどで処理をしています。普段はFUTURE AUDIO WORKSHOP SubLabも好きでよく使うのですが、良い意味で音が作り込まれ過ぎていたので今回はElectraxを採用しました。

 

サビでは、ローファイな質感のピアノに細かいノイズがレイヤーされていて心地良いです。

MONDO GROSSO このあたりはエクスペリメンタルR&Bの影響なんでしょうね。ノイズはサンプル素材を切り張りしています。

 

涙腺を刺激するようなフレーズを奏でるこのストリングスは、打ち込みなのですか?

MONDO GROSSO そうです、あれはNATIVE INSTRUMENTS Session Strings。本当に人が演奏したように聴こえるように打ち込みました。ポイントは収録プリセットの選定と、Bow Noiseなどのパラメーターを活用するということ。これらにRC-20 Retro Colorを合わせれば、かなりリアルな質感にすることができます。

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メイン・デスク中央には、ABLETONのフィジカル・コントローラーPush 2をセット。デスク右端にはPIONEER DJ Toraiz AS-1やNOVATION Bass Station IIの姿が見える

「STRANGER [Vocal:齋藤飛鳥 (乃木坂46)]」は、シューゲイザー・サウンドだったので意外です。

MONDO GROSSO これも“一人バンド・スタイル”で作っています。シューゲイザー・サウンドについて一つ挙げるとするなら、トレモロ・アームを指に引っ掛けながらギター・ストロークするっていうことかな。音が揺れるので、それらしい音に近付けられます。ひずみ系プラグインは、NATIVE INSTRUMENTS Guitar Rigなどですね。

音楽制作用モニターの中では今のところC88-Referenceが一番

今作のマスタリングについては?

MONDO GROSSO 前作同様、ハーブ・パワーズJr.氏にお願いしました。非常に音楽的なエンジニアなので、単に音圧を詰め込むだけじゃないアプローチが好きなんです。曲のパンチ感と繊細さのバランスに一番こだわりました。

 

今作の制作に当たって、アナログ・プロセッサーのSSL Fusionとモニター・スピーカーのKS DIGITAL C88-Referenceを導入したと伺いました。

MONDO GROSSO Fusionは、SSLにスタジオに置いてあるアナログ・コンソールAWS 900のメインテナンスをしてもらったときに勧められたのがきっかけです。バウンス前などで2ミックスに通して使うのが基本ですが、自分の場合は制作中にも通して使っています。トラック単体に通すと音が生き生きしますね。ちなみにローカットEQは30Hzに入れています。Fusionを通したまま制作すると、よく“迷子になるのでだめですよ”と言われるんですが、気持ち良かったらいいでしょうっていう(笑)。僕の場合、音楽制作にタブーは何も無いんです。

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最近導入したというアナログ・プロセッサーのSSL Fusion。大沢は2ミックスだけでなく、ボーカルなどの個別トラックにも用いるそうだ

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アナログ・コンソールのSSL AWS 900はサミングに使用。大沢は「これ無しで自分の音楽は作れない」と語る

C88-Referenceについてはいかがでしょう?

MONDO GROSSO いろいろなモニターを試した結果、最終的に一番しっくりきたのがC88-Referenceでした。どこまでもフラットな音なのはもちろん、ツィーターとスコーカーが同軸になっているので解像度が半端無い。ステレオ感が広くトランジェントもよく分かるし、低域もクリアに聴こえます。良い意味で、脚色無いサウンドというのが気に入りました。音楽制作目的としては、C88-Referenceが今までのモニターの中で一番かな。これにはもう、びっくりしましたね……本当に世界が変わります。

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大沢が大絶賛する3ウェイのモニター・スピーカー、KS DIGITAL C88-Reference

併せてサブウーファーを2台も導入されたのですね。

MONDO GROSSO はい。1台だとやりたいことが全然再現できなくて。L/Rに1台ずつ使っています。多分これも異例の使い方なんでしょうけどね。低域には指向性がほとんど無いので、結局はモノラルに聴こえるんですが(笑)。KS DIGITALは国内での認知度がまだそこまで高いとは言えませんが、今後は主流になり得ると思います。耳の早い人は数年前から使っていますから。

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メイン・デスクの奥に設置された8インチ径サブウーファー、KS DIGITAL B88-Reference×2をそれぞれカスケード接続する

『BIG WORLD』はゲスト・ボーカルしかり、各トラックのアレンジもバラエティに富む内容となっている印象ですが、逆に一貫したテーマなどはあったのでしょうか?

MONDO GROSSO 昨今のパンデミックのせいで世界が完全に変わってしまった……そして今もなお変わり続けている。そんな中、音楽が担う役目を問いました。曲ごとにテーマを明確にし、幾つかの曲に関しては自分で歌詞も書いています。そういう意味では「FORGOTTEN [Vocal:ermhoi (Black Boboi / millennium parade)]」が一番顕著にアルバム全体のテーマを物語っています。忘れてしまった大切なことをこのアルバムを通して思い出し、そして取り戻す。そんな旅を楽しんでもらえたらなと思います。

 

インタビュー前編では、『BIG WORLD』収録曲「IN THIS WORLD [Vocal:満島ひかり]」における坂本龍一との制作背景や使用音源などを伺いました。

Release

『BIG WORLD』
MONDO GROSSO
RZCB-87060(エイベックス)

Musician:大沢伸一(g、b、prog)、坂本龍一(p)、満島ひかり(vo)、ermhoi(vo)、どんぐりず(vo)、CHAI(vo、g、ds)、suis(vo)、齋藤飛鳥(vo)、中納良恵(vo)、田島貴男(vo)、PORIN(vo)、中島美嘉(vo)、RHYME(vo、prog)、石坂慶彦(p、k)、他
Producer:大沢伸一
Engineer:橋本まさし、今本修、他
Studio:Sound DALI、prime sound studio form、LAB recorders、他

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