8331Aは使い始めた段階からすぐになじみました
立体感や奥行きが自宅でもよく見えます
Photo:Hiroki Obara
40年の歴史を誇るGENELECは、2006年にリスニング環境の問題を補正する技術としてSAM(Smart Active Monitoring)を提唱した。そのSAMを内蔵したモデルの中でも特に人気なのは、同軸構造による点音源を実現した3ウェイ・スピーカーのThe Onesシリーズだ。この連載では、The Onesに対して関心を持つクリエイターに一定期間預け、その実力を試してもらう。前回に引き続いてD.A.N.のフロントマン、櫻木大悟(vo、g、syn)がシリーズで最も小型の8331Aをテスト。1カ月じっくりと向き合った感想を伝えてくれた。
自宅中心の制作スタイルに心強いThe Ones
この1カ月の間、D.A.N.のメンバーとの共同制作があったと語る櫻木。その間の作業で、8331Aが非常に役に立ったそうだ。
「一般的なモニター・スピーカーだと、慣れるのに時間がかかる印象があります。ところが8331Aは使い始めた段階からすぐになじみましたし、ミックスもすごくやりやすかったです。それには本当に驚きました」
前回訪れた際には、自身でミックスすることはほとんど無いと語っていた櫻木。しかし、コロナ禍に伴うステイ・ホーム期間ということもあり、これまでのD.A.N.とは違う制作手法を試していたという。
「今回作っていた曲は、すべて自宅録音。だから生ドラムなどはなく、家で完結できる形で制作してみました。コロナの期間で、メンバーも機材を買いそろえたり準備をしてきて、その第1弾。シンセやリズム・マシンを中心にしながら、リズム・パターンを組んでもらったり、自宅でベースやギターを録ってもらったり、ここで録ったりしました。僕らとしてはスタジオに入って制作することが多かったので、新しい形でした。それで自分でミックスもしてみたんですよ」
そのセルフ・ミックスで活躍したのがThe Onesの8331Aだったというわけだ。
「ステレオ・イメージがはっきり分かるのが楽しかったし、今までどうやって作ったらいいか分からなかった立体感も、作業していく中で徐々に分かってきましたね。リバーブの感じだったり、奥行きもよく見える。今までスタジオで作業してきた感覚にかなり近いことが自宅でもできました。日本の住宅環境にはいろいろ制限があるから、その意味ではTheOnesは心強いですね」
測定ポイント=スウィート・スポットで得られる音
限られた自宅の環境でも、スタジオ・レベルのモニタリング環境が得られることこそ、The Onesの長所だと見抜いた櫻木。テストしていく中で気がついた点があったと続ける。
「僕は左右の8330Aと正三角形になるポイントで測定したんです。スピーカーそのものの指向性も決して狭くはないのですが、この測定したポイントに入った瞬間に、スウィート・スポットに入ったように聴こえ方が変わる。それには驚きました。このテストが終わって、返却するのが少し悲しいくらいです……」
わずか1カ月のテストとはいえ、その間の櫻木にとって欠かせないツールとなった8331A。D.A.N.の制作にとっても新たな扉を開くきっかけとなったに違いない。
今回のテスト・モデル
GENELEC 8331A
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格278,000円前後+税/1基、ブラック/ホワイト:市場予想価格298,000円前後+税/1基)
同軸ツィーター+ミッドレンジ・ドライバーに、2基の楕円形ウーファーを加えた3ウェイ・ポイントソース構成のThe Onesシリーズのうち、最も小型のモデル。SAMテクノロジーにより、設置環境に合わせた自動補正が可能。大型ウェーブガイドの採用で、スウィート・スポットの拡大にも成功している
櫻木大悟
2014年に市川仁也(b)、川上輝(ds)とD.A.N.としての活動を開始。ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブ・サウンドで追求し、人気を博す。最新リリースは食品まつり a.k.a foodman、モグワイ、エアヘッドによるリミックス配信シングル。今年10月にはツアーも予定
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン
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