Photo:Hiroki Obara
8331Aはものすごく音がよく見えるモニター・スピーカー
自分の耳や電源を疑わなくてよいのは大きなメリットです
40年の歴史を誇るGENELECは、リスニング環境の問題を解決するシステムとしてSAM(Smart Active Monitoring)を提唱した。その中でも特に人気なのは、同軸構造による点音源を実現したThe Onesシリーズだ。この連載では、The Onesに対して関心を持つクリエイターに一定期間預け、SAMの注目機能であるGLM補正とともにその実力を試してもらう。前回never young beachのギタリスト、阿南智史にThe Onesの8331Aを預けたが、1カ月の使用を通じて感じたことを聞いてみた。
ADSRカーブが見えるように聴き取れる
この1カ月の間、デモ作りやリスニングに8331Aを使用していたという阿南。「自分なりのJポップというか、日本の音楽に寄ったものを作ってみようと思っていました。曲を聴いたときに新しい気付きがあるようなもの……例えばコーラスのラインも、一声一声がどの音域で何度で、どういう声質で歌っているといった、音の情報量が結構入ってくるようなものに挑戦していたんです」とその間の作業を振り返る。
そんな阿南の自宅スタジオにおける指標として、1カ月間大役を担ってきた8331A。前編では“まさにリファレンス・モニター”という感想を述べていた彼だが、その真意をさらに深く語ってくれた。
「シンプルに、ものすごく音がよく見えるのが最も印象的だったことです。まるでADSRカーブが見えるように、音の発音から減衰がはっきり聴き取れる。打ち込みでキックの音を作っているときも、アタック成分が足りないとか、ディケイが不足しているというのを、帯域ごとに分かりやすく示唆してくれていると感じました。これまでは、何か違和感があったときに、選んだ音が合っていないのか、自分の耳がジャッジできていないのか……それが判断できなかったんですよ。あるいは電源に原因があるのかな?と違う部分に凝り出したりする。でも、こうやって部屋の特性を加味した補正がGLMでされて、ちゃんとしたモニタリング環境になったという前提で聴くと、8331A自体の性能の良さと相まって、自分の耳や電源などを疑わなくてよくなる。そこがメリットとして大きいですね」
最初から使えば無駄な遠回りをしなくて済む
もう1点、阿南が指摘してくれたのは、スウィート・スポットの拡大だ。
「不思議だったのは、部屋のどの位置で聴いても印象が変わらなかったこと。これまで使ってきたスピーカーはリスニング・ポイントがシビアで、きちんとポイントを定めて、そこに合わせて座っていました。8331Aはどこで聴いても、音のブレが少ないと感じましたね」
阿南の場合、部屋の両サイドにアウトボードなどを置いているため、作業効率にも直結する部分だろう。最後に、1カ月間8331Aと付き合ってみた感想をこうまとめてくれた。
「最初からこの価格帯のモニター・スピーカーを視野に入れる初心者はほとんど居ないとは思いますが、DTMを始めたばかりの人こそ、こういう環境を最初から使うと、無駄な遠回りをしなくて済むように思います。ミックスにしても、曲作りにしても、決断が速くなる。モニター・スピーカー選びが一番大切かもしれないとあらためて思いましたね」
今回のテスト・モデル
GENELEC 8331A
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格278,000円前後+税/1基、ブラック/ホワイト:市場予想価格298,000円前後+税/1基)
同軸ツィーター+ミッドレンジ・ドライバーに、2基の楕円形ウーファーを加えた3ウェイ・ポイントソース構成のThe Onesシリーズのうち、最も小型のモデル。SAMテクノロジーにより、設置環境に合わせた自動補正が可能。大型ウェーブガイドの採用で、スウィート・スポットの拡大にも成功している
阿南智史
2014年からnever young beachのギタリストとして活躍。これまでに4枚のアルバムをリリース。最近作は5月リリースのシングル『サイダーのように言葉が湧き上がる』。以前はPAELLAS(2019年解散)にも参加。
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン
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