皆さんこんにちは、ビート/ループ・メイカーのineedmorebuxです。僕はWindowsのラップトップにIMAGE-LINE FL Studio 20を立ち上げ、トラップやR&Bのビートやループ(上モノ)を制作しています。早速ですが、連載第1回はループ・メイキングにフォーカスし、上モノを作る際のTipsを幾つか紹介していきたいと思います!
Snapを駆使して機械的かつ高速なリフを作る
メロディやコードをMIDIノートで打ち込んで再生すると、なぜかのっぺりとしたサウンドになることがありませんか? 確かにMIDIノートをピアノロールに打ち込んだだけなので、ある程度のベタ打ち感が出てしまうのは仕方がありませんが、それだとどんなに良いメロディやコードを考えてもチープな仕上がりになってしまうので、あまり意味がありません。ループ・メイカーとして、まずはこういったところに気を付けたいと思っています。
今回僕が紹介するのは、上モノをMIDIで打ち込む際に役立つ機能“Snap”と、そのSnapを無効にするショートカット・キーについて。Snapは、ピアノロール上のグリッドに対してMIDIノートとオーディオ・ファイルがどのように移動するのか、およびクオンタイズ時にそれらがどのように整列するのかを定める機能です。デフォルトでは16分音符間隔でMIDIノートを打ち込めるように設定されていますが、スナップ間隔を駆使することでシンセ・アルペジオのような機械的かつ高速なメロディやリフを簡単に作成することができるようになります。
Snapの設定方法は簡単。ピアノロール画面の最上段にある磁石アイコンをクリックすると、8分音符間隔でMIDIノートを配置できる“1/2 beat”や、3連符間隔でMIDIノートを配置できる“1/3 beat”など、さまざまなスナップ間隔の項目が表示されるので、この中から好きなものを選択するだけです。
僕はシンセ・アルペジオの高速リフを作るときは、このスナップ間隔を、32分音符間隔で打ち込める“1/2 step”や、12連符間隔で打ち込める“1/3 step”に設定しています。個人的にはアルペジオ・シンセのリフだけでなく、ピアノの速弾きなどにも応用できそうだと思います。
ショートカット・キーを使ってリフやコードの発音タイミングを微調整
次はSnapを無効にするショートカット・キーについてですが、使用コンピューターがWindowsの場合、キーボードのAlt(Macはoption)を押しながらMIDIノートをドラッグすることで、グリッドに関係無く移動させることができるようになります。また同様の方法で、ピアノロール上の自由な位置にMIDIノートを打ち込むことも可能です。
僕はこのショートカット・キーを使ってMIDIノートの発音タイミングを微調整し、コードやメロディがより音楽的に聴こえるようにしています。何が言いたいのかというと、MIDIノートの発音タイミングを工夫することによって有機的な“ずれ”を演出し、あたかもMIDIキーボードを演奏して打ち込んだかのようにMIDIノートを配置するということです。
僕はこのショートカット・キーとSnapを使い分けることで、MIDIノートの打ち込みを自在に行っています。これら2つのTipsはメロディやコードだけでなく、ハイハットの連打やスネア・ロールといったリズムの打ち込みにも応用できるので、ぜひ試してみてください。
自動でチョップできるChopとDeclicking modeでクリック・ノイズ防止
次はコード楽器やリード楽器の上モノに、バウンスやグルーブを加えるTipsです。格好良いメロディや雰囲気のあるコードを用いたループが作れたけれど、何か今一つパッとしない、またはグルーブがもっと欲しい……そんなときにこのTipsが役立ちます。
まずはプレイリスト上で、オーディオ・ファイルの左上にある波形マークをクリック。すると、“Audio Clip” “Region” “Sample” “Automation”の4セクションを格納したプルダウン・メニューが現れます。ここでRegionセクションにある“Chop”を選択すると、自動的にアタックを検出してチョップしたり、チョップしてリピートさせたりなど、チョップする際のさまざまな設定項目が表示されるので、その中からどれか一つをクリックしましょう。すると、その設定に従ってオーディオ・ファイルが一瞬でチョップされます。手間が省けるのですごく便利です。
チョップする際の細かい設定についてですが、僕がよく使うのは“Time based”という項目。ここでは、選択したオーディオ・ファイルをどのくらいの間隔でチョップするのかを決めることができます。僕は基本的に1拍ごとにチョップする“Chop in beats”、または1/8分音符ごとにチョップする“Chop in half beats”を選ぶことが多いです。曲のテンポや、適用するオーディオ・ファイルのメロディなどに応じて、いろいろな設定を試してみるとよいでしょう。
この便利な機能には、僕なりの“プラス・アルファ”な使い方があります。それは、チョップしたオーディオ・ファイルを全選択し、お尻の部分をドラッグして短くするということ。これでさらにチョップした感じを演出できます。ここでもキーボードのAlt(Macはoption)を押しながら作業すると楽です。
そしてこの後、チョップしたオーディオ・ファイルの一部を削除する“音抜き”といった処理をします。これはヒップホップやトラップでもよく使われる手法で、こうすることによってよりグルーブのあるループやビートを作ることができるでしょう。
最後の一手間として“Declicking mode”を紹介しましょう。オーディオ・ファイルをダブル・クリックすると、“Channel Sampler”画面が出現。これはFL Studio内蔵のソフト・サンプラーで、タイム・ストレッチやノーマライズなどオーディオ・ファイルに関するさまざまな編集機能を装備しています。
Declicking modeはこのChannel Sampler画面中段の左側にあります。ここではメニューから“Generic (bleeding)”を選択しましょう。すると選択したオーディオ・ファイルの前後が20msだけフェードイン/フェードアウトします。チョップの位置によってはクリック・ノイズが発生する場合が多いのですが、こうすることでクリック・ノイズを避けることができるのです。このTipsも知っておくと役立つことでしょう。それでは!
ineedmorebux
【Profile】2001年生まれ、東京都を拠点に活動するビート・メイカー/ループ・メイカー。シンセサイザーの音を基調としたダーク&ハードな曲調や、ノリの良いビート/ループに定評がある。最近ではKen Francis 『So Icy, but I'm 18』や、JP THE WAVY『Mango Loco』などをプロデュース。また、海外のビート・メイカーたちとも積極的に交流し、国外を拠点とするトラップやR&Bアーティストへの音楽制作にも意欲的に取り組んでいる。
【Recent work】
『Mango Loco』
JP THE WAVY
IMAGE-LINE FL Studio
LINE UP
FL Studio 20 Fruity:17,600円|FL Studio 20 Producer:28,600円|FL Studio 20 Signature:37,400円
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、INTELプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 10以降(64ビット)INTELもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM、XGA以上の解像度のディスプレイ