ボーカリストによるボーカリストのための、究極のボーカルレコーディング・スペース
2008年に音楽ユニットSafariiのボーカル/ラップ担当としてデビュー後、2012年からは“波乗り作詞作曲家”と銘打ち活動するAkira Sunset。乃木坂46、郷ひろみ、『ラブライブ!シリーズ』内のグループなどへ作詞や楽曲の提供を行い、オリコン年間ヒットランキング作曲家部門トップ10にも毎年名を連ねている。そんな彼が昨年、東京の表参道に新しいプライベートスタジオを構えたという情報をキャッチ。本人に詳しい話を聞いた。
近年ボーカル録りの仕事が増えてきた
地下1階にあるMAZING Recordingsのエントランスホールには、これまで彼が手掛けたアーティストのCDがずらりと並んでいる。そこから通路が2つあり、片方が待合室でもう片方がスタジオへと続く。MAZING Recordingsがオープンしたのは昨年の11月だが、「世界情勢の影響もあり、すぐに機材がそろったわけではない」と話すAkira Sunset。そもそも以前のスタジオは六本木にあったとのこと。今回はどのような理由で引っ越したのだろうか。
「ちょうど表参道にスケルトンの物件が見つかったんです。ラッキーでしたね。そこで早速アコースティックエンジニアリングさんにお願いしました。このスタジオの使用用途はボーカルレコーディングとミックスチェック。以前のスタジオは事務所とスペースを共有していて、なおかつボーカル用のちょっとしたブースもあったんです。ただ近年はボーカルレコーディングの案件がすごく増えてきて、複数人でも同時に録れるような大きなボーカルブースがあってもいいのかなと考えるようになり、今回新しいスタジオを造ることに決めました」
続けてAkira Sunsetは、去年からボーカルディレクションだけの仕事も受けはじめたという。
「前のスタジオだと大物の方をお呼びする際に気が引けることもあり、毎回ボーカルディレクションのために、外のスタジオをブッキングして、そこまで行って帰ってくるっていうことをしていたんです。ただ、それが結構大変だったんですよ。そんなことも重なって、それならもう一念発起してしっかりとしたスタジオを造ってしまおうと考えたんです」
Akira Sunsetは新しいスタジオを造る際、“気分が上がるかどうか”に着目したと話す。
「僕自身がボーカリストということもあり、どういうスタジオだったら“また来たいな!”と思ってもらえるかを考えたんです。そこで分かったのが“気分が上がる場所”だということ。自宅でも歌録りできちゃう今、大きいスタジオで録る意味って、もうほとんどモチベーションの問題だと思うんですよ。だったら気持ちの高まる、奇麗で居心地の良いスタジオをコンセプトにしようと決めたんです」
何よりもボーカリストのテンションを大切にしたい
Akira Sunsetに“気分が上がる場所”をどうスタジオに具現化したのか尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。
「音響面は、アコースティックエンジニアリングさんに完全にお任せしています。僕が一番こだわったのは内装です。コントロールルームは窮屈に感じないように、天井の真ん中だけ1〜2段高くなるようにしてもらいました。あとはボーカリストの顔を見ながらディレクションしたいと思ったので、正面にはガラスを入れてブース内の人とアイコンタクトを取れるようにしてもらったんです。もちろんカーテンもあるので気分で使い分けられます。ガラスにしたことでボーカルブース内の圧迫感もなくなり、居心地がさらによくなりましたね。とにかくボーカリストが緊張しない空間にしたかったんです」
さらに、スタジオ内のカラーについても説明してくれた。
「スタジオとは別に待合室があるんですが、その部屋はカラフルでにぎやかなカラーにしているんです。スタジオはその逆。グレーを基調としたモノトーンで内装を統一してもらいました。これらの部屋を行き来することで、オンとオフを切り替えてもらいたいというのが狙いです」
また、ボーカルブースが以前のスタジオよりも広くなったことについてはこう述べる。
「僕はアイドルグループのボーカルもよく録るんですが、そんなとき一度に2人ブースに入って録れるようになったので、とても効率が上がりましたね。8〜10人のグループの場合、1人ずつ録るとどうしても時間が足りないんです。このとき、デュアルチャンネル・マイクプリのNEUMANN V 402が活躍します。NEUMANNのマイクをたくさん使うので相性がいいだろうと思って購入したんですが、想像以上に使っていますね。とてもシルキーな音で録れるため、女性の歌ものにピッタリ。逆にソロのボーカリストを録るときは、Neve 1073とUrei 1176LNの組み合わせが多いですね」
モニターシステムについては、こう語ってくれた。
「GENELEC 8341AW+7350APMを選んだのは、GLMでキャリブレーションできるところが大きいですね。今どき必須なのかなと。スウィートスポットをディレクター席とエンジニア席の2つに設定してあって、ミックスチェック時はボタン一つで切り替えられるのでとても楽ですね。amphion One12は、ミックスチェック時に細かいところを聴きたいときに便利。特にボーカルの輪郭が聴き取りやすいです」
最後にAkira Sunsetはこう締めくくる。
「スタジオの居心地を最重要視する理由は、とにかく良いテイクを録るため。機材も置いていますが、僕は何よりもボーカリストのテンションやモチベーションを大切にしたいです」
仕事の息抜き、何してます?
買い物ですね。機材とか服とかをとにかく買う。あと手に負えないものを購入することが多いですね。先日もPRS GuitarsのPrivate Stockというギターを買いました。やっぱり買い物ってめちゃくちゃテンション上がるので。それでお金を使っちゃって自分を追い込むんですよ。まあ仕事の息抜きの結果、自分を追い込んじゃってますけどね(笑)。
Profile
Akira Sunset:2008年にSafariiとしてソニーミュージックからデビュー。2012年からは作詞作曲家として乃木坂46や『ラブライブ!シリーズ』などに楽曲提供を行う。クリエイター事務所HOVERBOARD Inc,代表取締役も務めている。
Recent Work
『おひとりさま天国』
乃木坂46
(ソニー)