楽曲全体の土台を築き上げる“声”の録音にベストな環境を求めて
日本を代表するヒューマンビートボクサーとして、国内外で活躍するSO-SOのホームスタジオを訪問。自らの声を素材としてあらゆる音を作り上げ、メンバーとして活動するSARUKANIのルーティン制作も行うSO-SOの活動拠点で、オリジナリティのあるサウンドメイクの原点を探る。
SHIZUKAパネルでデッドな好みの音になった
SO-SOのホームスタジオは、防音施工された一室に構築されている。まずは空間としての音作りの過程を尋ねよう。
「防音されている部屋を探して、部屋に合う機材を買って配置していきました。吸音材は、デスクの後ろがクローゼットのため貼るタイプのものは使えないので、パネルタイプのSHIZUKA Stillness Panel SDM-1800を買いました。結果的にかなりデッドで好みの音になりましたね」
続いて、スタジオ内のモニター環境の整備について話す。
「モニタースピーカーとサブウーファーはどの位置に置くかが難しくて、丸1日かけて決めました。モニタースピーカーはFOCAL ALPHA EVO 65で、低域がしっかり出る上に高域の見通しが良いので、僕の作る音楽に合っています。リスニングにも使えることは重要で、ALPHA EVO 65はその点で楽しい音がしますね。スピーカースタンドはZaorのもので、ALPHA EVO 65を置くために作られたんじゃないかと思うくらいにサイズも色もピッタリです。サブウーファーはFOCAL SUB ONEを使っていて、いろいろ検証した結果、低音が一番聴こえやすいと感じたデスクの右下に設置しました。モニターヘッドホンは、beyerdynamic DT770を使っています」
SO-SOの制作やパフォーマンスにおいて、必要不可欠な機材と言えばやはりマイクだろう。
「マイクはいろいろ使ってみたんですけど、今はSHURE SM7Bに落ち着きました。録り音がすごく好きですし、指向性が鋭くて、周りの環境に左右されずに欲しい音だけ録れるので、使いやすい素材が録れます。昔は高ければ高いマイクほど良い音で録れると思ってたんですけど、今は環境を整えるのにお金を使った方が良いという結論に至りました。先ほど紹介したSHIZUKAのパネルは、マイクで録音するにもちょうど良い位置にあるので、良い具合に吸音してくれます」
SARUKANIは全員がAbleton Liveユーザー
続いては、制作の中心となるコンピューター周りの制作機材について尋ねていこう。
「コンピューターはApple MacBook Pro M1 Maxで、ストレージ以外はフルスペックです。動画編集をすることもあるので、一番いいものを選びました。DAWはオーディオ素材の加工がしやすいAbleton Liveを使っています」
SO-SOが所属するSARUKANIは、10月に行われた世界大会『Grand Beatbox Battle 2023』のクルー部門で見事優勝。SARUKANIの制作にもLiveが活用されているそうだ。
「SARUKANIのルーティンは、主に僕とKoheyがLiveを使ってみんなの音を録音して、並び替えながら“この組み合わせがかっこいいな”とかやって作ってます。SARUKANIは全員Liveユーザーです。全員同じソフトの方がプロジェクトをシェアしやすいので、僕が全員に買ってもらいました」
オーディオインターフェースに関しては、2機種を使い分けているというSO-SO。
「数年前にAPOGEE Symphony Desktopを買いました。制作では、内蔵DSPのマイクプリエミュレーションを使ってかけ録りしています。基本的にはSymphony desktopオリジナルのマイクプリを使うんですけど、Neveをエミュレーションしたプリアンプのひずみ方も好きですね。音はすごく素直で優等生な印象です。持ち運び用としてはUNIVERSAL AUDIO VOLT 276を使っています。録り音も個性が強くて好きなので、レコーディングで内蔵のアナログコンプをかけ録りすることもありますね」
デスク中央には電子キーボードのCASIO SA-76を配置。アイディアを逃がさないための機材選びを行っている。
「メロディを思いついたときに、MIDI鍵盤だとパソコンでソフトを開いて設定する必要がありますけど、SA-76は電源を付けてすぐに音が出るのでめちゃくちゃ楽なんです。MIDIコントローラーはnovation Launchpad Pro MK3を使っていて、設定したスケールから外れないで演奏できる機能も付いているので、これだけでも買う価値があります。ライブでは、ボイストランスフォーマーのRoland VT-4と接続してボコーダー用としても使いますね」
ミックス、マスタリングまで自身で行うSO-SOは、独自のサウンドを追求するために導入したツールについても教えてくれた。
「FREQPORT FT-1 freqtubeは今年買った真空管アンプで、主にマスタリングに使います。一般的なアナログコンプやEQはオーディオケーブルを挿して使いますけど、これはUSB接続でアナログ回路を通せるんです。自分の曲に個性を出したかったので、真空管を通すことによって曲のレベルが上がるかなと思って。専用プラグインでコントロールするので、ほかのプラグインと同じような感覚で使えます」
最後に、機材選びのこだわりについて尋ねると「予算内で一番いいものを買うようにしています」と答えたSO-SO。彼の声がそれらの機材を通してどのような変化を遂げていくのか、今後の作品に期待したい。
仕事の息抜き、何してます?
僕の仕事の息抜きはゲームをすることです。特にNintendo Switchのゲームが好きで、『大乱闘スマッシュブラザーズ』や『スプラトゥーン』などのソフトはずっとプレイしています。最近では『スーパーマリオ』シリーズの新作が欲しいなと思っているので、仕事が落ち着いたら絶対に買いたいです。
Profile
SO-SO:ヒューマンビートボクサー/音楽プロデューサー。楽曲はすべてビートボックスサウンドのみで制作。ルーパーやボーカルエフェクターで自身の口から発する音を多重録音し、リアルタイムで音楽を構築する。Grand Beatbox Battle 2021ではTAG LOOP部門で世界チャンピオンに輝いた。
Recent Work
『Yellow』
SO-SO
(SO-SO)