奥田民生(写真左)のスタジオカー=トツゲキ号&ゲキトツ号のレコーディングで奥田とタッグを組んでいるのが、奥田民生やユニコーンの作品を長年手掛けてきたエンジニアの宮島哲博(写真右)。『トツゲキ!オートモビレ!』でもおなじみの“宮ちゃん”(&奥田)によるナビゲートで、現在のトツゲキ号&ゲキトツ号の内部をのぞいてみよう。
前編では奥田本人へインタビュー!
トツゲキ号
演奏スペース
屋根が開くキャンピング仕様の中古車を見つけて、“立って演奏できるな”と思って買ったのがトツゲキ号です。ハマ・オカモト君はここでウッド・ベースを弾いていましたね。
録音機材用モバイル・バッテリー:JACKERY Portable Power 1500
最初はラックの近くに置いてたんだけど、ノイズ対策で助手席に置くようになりました。1回充電しておけば1日レコーディングするには持つし、音質も奇麗ですね。
マルチケーブル(13ch)
アウトボードの裏側辺りで車の側面に穴を空け、ボート用の給油口を付けました。これは、トツゲキ号とゲキトツ号の間で信号をやりとりするマルチケーブル用に用意しました。マルチケーブルは13chのMOGAMI製です。
作業用イス
これはKOKUYOの事務イスの足を切って改造した俺モデルなんです。レコーディングするときは車の床にボルトで取り付けます。
モニター・スピーカー:YAMAHA MSP5
これは1990年代のものなので古くから使っています。YAMAHAのパワード・スピーカーは、MSP10、MSP5、MSP3と全モデルを使ってきました。
コンピューター:APPLE Mac Mini
置き場所も限られるので、拡張性があって小さくて性能が良いAPPLE Mac Miniにしました。ラック横に固定してます。USBやHDMIなど端子も多くて便利です。
DAW:AVID Pro Tools
AVID Pro Toolsは、ほぼ録り専用で使っています。プラグインはあまり入れず、特に録りではプラグインはほとんど使わないですね。ディスプレイは可動式のアームに取り付けています。
ラック(アウトボード類)
①オーディオ・インターフェース:ANTELOPE AUDIO Discrete 8 Pro Synergy Core(上段) Discrete 8 Synergy Core(下段)
最初はトツゲキ号だけで2chくらいの弾き語りを想定していたので、8つのマイク/ライン入力があるDiscrete 8 Synergy Coreを1台で使っていました。ただ、ドラムも同時に録るようになったので、Discrete 8 Pro Synergy Coreを追加し、2台をカスケード接続して16ch分のプリアンプが使えるようになっています。
②マイク・プリアンプ:APIカスタム・マイクプリ
一口坂スタジオにあったAPIのコンソールから抜いたマイクプリが2ch分入っています。カスタムして2chを1Uにしてもらいました。
③コンプレッサー:UREI 1176LN Rev.F(上段) UREI 1176LN Rev.H(下段)
奥田さんのスタジオにあったUREI 1176LNを2台積んでいます。ベース、ギター、ボーカルを録るときは全部1176を通しますね。通した方が後処理が楽ですし、それだけで済むくらいです。どちらを通すかは毎回変わります。APIの左チャンネルが上段のRev.F、右チャンネルが下段のRev.Hに入り、1176の後はANTELOPEに入力しています。
④スピーカー・シミュレーター:PALMER Speaker Simulator PDI-03
古くから愛用している1990年代の機材です。これはスピーカー代わりで、ギター/ベース・アンプの音を入れたらマイク・レベルで出てくる優秀な機材です。初期型なので希少ですね。
ゲキトツ号(全体像)
トップ・マイク:AKG C 451 EB
オーバーヘッドですが、ハイハットやシンバル、タムも収音します。逆サイドにも立てています
少しでも長くストロークを取って高さを稼ぐために、XLRケーブルの先端をL字コネクターに付け替えました。
キック・マイク:AKG C 451 EB
キック・マイクは一般的にもよく使われるAKG D112です。
フロア・タム/ハイ・タム/スネア・マイク:SHURE SM57
SM57はこれだけでもドラム・レコーディングができるくらい優秀なマイクです。壊れないし。トツゲキ号&ゲキトツ号は、SM58/SM57だけでも行けるという心意気でやっています。
ドラム&マイク固定用金具
ドラム・セットとマイク・スタンドは赤いマットに固定してあり、セットしたまま移動できます。しかもマットごと外して外に出すことができるので、ドラム以外の楽器録音用にすぐ転換できます。
ドラム・スティック
スティックが長いとドラムをたたいたときに壁にぶつかっちゃうんで、後ろを切って短く加工しました。ドラマーに怒られそうですね(笑)。
ボーカル・マイクなど:SHURE SM57/SM58/ BEYERDYNAMIC M 88 TG
歌を録るのはほぼSM57かSM58ですね。BEYERDYNAMIC M 88 TGはローがすごく出るマイクです。
俺はSHURE SM58のほうがよく使ってて、宮ちゃんはSM57をよく選びます。
ゲキトツ号(後方)
アナログ・ミキサー:TAPCO 6306
MACKIE.のリフュージョン・ブランドTAPCOのアナログ・ミキサーです。音が良いですね。キュー・ボックスの音の良さは演奏者としては一番大事だよね。
うん。キュー・ボックスからのモニターはアナログの音でないと盛り上がらない。本当は良い音で録れてても、モニターがショボいとへこむからね。
モニター・ヘッドホン:SONY MDR-CD900ST OT
これは奥田さんカラーのモデルですね。音は通常のMDR-CD900STと同じです。
トツゲキ号&ゲキトツ号のケーブル接続
ゲキトツ号前面の下方には、ケーブルを通す穴が開いていて、そのうち外側の穴は、トツゲキ号からのマルチケーブルを通しています。
ケーブル穴を通せる最大のコネクターが27芯のNK-27だったので、13chのマルチケーブルを使っています。ゲキトツ号(レコーディング・ブース)→トツゲキ号(コントロール・ルーム)は6chのマイク、トツゲキ号→ゲキトツ号はモニター2ch&オケの返し2chを送っています。
トツゲキ号&ゲキトツ号の旅は続く……
Close up!
『ドーロムービー “トツゲキ!オートモビレ”』
奥田民生(Blu-ray+CD) 【BD】RCMR-2510 【CD】RCMR-2511
トツゲキ号&ゲキトツ号でのレコーディング風景は、Blu-ray&CD『ドーロムービー “トツゲキ!オートモビレ”』や、奥田民生公式YouTubeチャンネルで視聴できる。Blu-rayには、東京タワー、富士山、焼津港、琵琶湖を回り、最終地点の京都ではドラマーの伊藤大地も登場した旅の全貌を映像で収録。YouTubeではそのほか、所ジョージやハマ・オカモトなど豪華ゲストを迎えたレコーディングの様子なども見ることができる。
奥田民生公式YouTubeチャンネルはこちら
前編はこちら