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SO-SO Color EP Release Party「Yellow & Green」@下北沢ADRIFT【コンサート見聞録】

SO-SO Color EP Release Party「Yellow & Green」@下北沢ADRIFT【コンサート見聞録】

ビートボックス世界大会で優勝したSARUKANIとしても活動。ビートボックスサウンドを操りダンスミュージックを作り上げる、気鋭のアーティストによるEPリリースパーティーに潜入!

ヒューマンビートボクサー/音楽プロデューサー/DJと、多彩な顔を持つSO-SO。昨年開催されたビートボックスの世界大会『Grand Beatbox Battle 2023』において、自身がリーダーを務めるビートボックスクルー=SARUKANIで世界チャンピオンに輝いたほか、CMやドラマ、アーティストへの楽曲提供も数多く行うなど、その動向が注目されているアーティストだ。今回編集部は、2023年12月29日にEP『Yellow』と『Green』の発表を記念して、下北沢ADRIFTで開催されたリリースパーティーに潜入。SO-SOやSARUKANIのライブPAを担当するクレア・ジャパンのチーフエンジニア、國廣和希氏に詳しく話を伺った。

DATE:2023年12月29日(金)
PLACE:下北沢ADRIFT
PHOTO:小原啓樹(機材)

住宅街なのにかなりの音量を出せるADRIFT

 ADRIFTは、2021年に東京都世田谷区の下北沢に誕生。スタンディングで300人まで収容可能で、ライブなどの音楽イベントだけでなく、ファッションショーや展示会、企業レセプションなどにも対応するエンターテインメントスペースだ。⾳響設計/空間監修は⾳響技師の⻄川⼀三⽒、toeのギタリスト/エンジニアの美濃隆章⽒が担当している。SO-SOは2023年9月にも『Color EP Release Party 「Red & Blue」』を開催しており、ADRIFTでライブを行うのは2度目とのことだ。まず國廣氏にADRIFTの印象を聞いた。

 「機材リストを見た時点で、d&b audiotechnikのスピーカーが採用されているのが分かって安心しました。d&b audiotechnikは抜けが良く、パワフルだけどうるさくもなく、特別な処理をしなくてもまとまった良い音を鳴らしてくれるイメージなので扱いやすいです」

 会場自体の音響についてはいかがだろうか。

 「建物のすぐ隣に住宅街があるんですが、防音がしっかりしているおかげでかなりの音量が出せます。9月にやった前回のイベントの本番中、試しに外に出てみたら確かに静かだなと感じましたね。エンジニアとして、すごくやりやすいスペースです。スピーカーチューニングでは、常設のlake LM26で70Hz辺りをブーストしています。SO-SO君はローも音量感も十分に出したいという考えを持っているので、ADRIFTとの相性も良いと思いますよ」

会場となったADRIFT

会場となったADRIFT。小田急線の下北沢駅と東北沢駅の中間ほどに位置するエンターテインメントスペースだ

PAを担当した、クレア・ジャパンの國廣和希氏

PAを担当した、クレア・ジャパンの國廣和希氏

当日の会場内の様子

当日の会場内の様子。客席中央に正方形のDJブースが設置され、そこをステージとしてSO-SOらがパフォーマンスを行った。ADRIFTの音響設計/空間監修を、フジロックなどのライブPAやSuchmos、クラムボンら多くのアーティストを手掛けてきた音響技師の西川一三氏、ポストロックバンドtoeのギタリスト/エンジニアの美濃隆章氏が担当。客席部分の両サイドの壁にはグラスウール吸音パネルを一面に設置するなど、快適な音響空間を実現

ADRIFTのステージ

ADRIFTのステージ。通常、バンドなどのライブイベントではこちらがステージとして活用されているが、今回のイベントでは客席として開放された。スピーカーシステムは常設のものを使用。メインスピーカーとしてd&b audiotechnik Vi7PをL/Rに1台ずつ、サブウーファーはVi-SubをL/Rに2台ずつとなっている。さらにステージ前方の上にはE8が2台設置されており、國廣氏は「E8も使いました。インフィル的な役割を担ってくれましたね」と語る

写真右上がd&b audiotechnik Vi7P、その下がサブウーファーVi-Sub×2台。また今回はステージを客席として開放していたため、ステージに向けてM6も設置している

写真右上がd&b audiotechnik Vi7P、その下がサブウーファーVi-Sub×2台。また今回はステージを客席として開放していたため、ステージに向けてM6も設置している

ステージ前方の上に設置されたd&b audiotechnik E8×2台

ステージ前方の上に設置されたd&b audiotechnik E8×2台

ステージ袖のラック。左上から、スピーカープロセッサーのlake LM26、メインスピーカーのパワーアンプd&b audiotechnik D80×2台、モニタースピーカーのパワーアンプD20×2台、右のラックにはI/OラックのYAMAHA RPio622を格納する

ステージ袖のラック。左上から、スピーカープロセッサーのlake LM26、メインスピーカーのパワーアンプd&b audiotechnik D80×2台、モニタースピーカーのパワーアンプD20×2台、右のラックにはI/OラックのYAMAHA RPio622を格納する

“プシュッ”という音がおいしく聴こえるように

 今回のライブでは、客席の中央にDJブースを設置してSO-SOが自身の楽曲をDJとして演奏しながら、ビートボックスなどのボイスパフォーマンスも披露する形で行われた。「ビートボックスとボーカルでは、マイクのチューニングが全く異なります」と國廣氏は語る。

 「僕がSO-SO君やSARUKANIのPAを行うようになって2年ほどですが、これまでビートボックスのPAをやったことがなくて。こういう感じかなというのを提示しつつSO-SO君が主体となって意見を出してくれて、ようやく固まってきたと思います。マイクはSENNHEISERのe 945のカプセルを搭載したワイヤレスマイクのEW 100 G4-945-Sで、SARUKANIのメンバー4人でいつも同じものを使っています。EQは人によって変わりますが、80Hz辺りの低域……体に響くようなロー感と、中高域から高域で2カ所くらいをいつも持ち上げていて、上は2.5〜5kHzの人もいれば7〜8kHz辺りの人もいますね。“プシュッ”っていう破裂音がおいしく聴こえるようにしたりということをいつも意識しています」

 またマイクでポイントとなるのはEQだけではないそう。

 「ベタッとした音にならないよう、極力コンプをかけずに手で操作しています。ビートボックスが平べったい音になってしまうのは残念ですし、あとは曲終わりにハウって“キーン”となってしまうのも避けたいですからね」

仮設のDJブースには、ステージ側にPioneer DJ CDJ-2000nexus×2台と、DJミキサーDJM-900NXS2をセット。写真右のSHURE SM58は予備マイクとして用意

仮設のDJブースには、ステージ側にPioneer DJ CDJ-2000nexus×2台と、DJミキサーDJM-900NXS2をセット。写真右のSHURE SM58は予備マイクとして用意

DJセットの反対側には、ルーパーのBOSS RC-505mkIIを準備

DJセットの反対側には、ルーパーのBOSS RC-505mkIIを準備。マイクのSENNHEISER e 945から、リアルタイムで声を入力してパフォーマンスを行っていた。今回のライブでは、SO-SO自身の声を、ワンショットサンプルのホーン的に使用する場面が多く見られた

ワイヤレスマイクのSENNHEISER EW 100 G4-945-S。写真右の青いテープが貼られているのがSO-SOの、オレンジのテープが客演で登場したSARUKANIのKoheyのマイクだ

ワイヤレスマイクのSENNHEISER EW 100 G4-945-S。写真右の青いテープが貼られているのがSO-SOの、オレンジのテープが客演で登場したSARUKANIのKoheyのマイクだ。國廣氏いわく「色分けはSARUKANIのメンバーカラーに合わせています。カプセルはe 945で、ルーパーの方でも使用していますが、ビートボックス界では最近流行しているそうです。持ち方で音を調整するため、持ったときのなじみがいいみたいです。スッキリしている上に太さのあるサウンドも合っていると思います」とのこと

 FOHのミキサーは、ADRIFTに常設のYAMAHA RIVAGE PM3を使用した。

 「使い慣れているし、RIVAGEはトラブルも少ないので安心です。EQのほか、ダイナミックEQをDJのチャンネルに挿して、強くなりすぎる帯域を抑えていますよ」

 「お客さんがノってくると、SO-SO君もガッといっちゃうんです」と國廣氏が言うように、ライブではSO-SOが登場するや否や、オーディエンスのボルテージが最高潮までヒートアップ。それに呼応するように、SO-SOも身体性あふれる激しいパフォーマンスを披露し、迫力の重低音を含む爆音が会場を包んでいた。SARUKANIのKoheyとのビートボックスセッションや、ラストにはオープニングDJを務めたNUU$HIが登場するなど、熱気が冷めやらぬまま幕を閉じた。帰路につく観客たちが、皆一様に笑顔だったのが印象的だった。

FOHのミキサーは、常設のYAMAHA RIVAGE PM3を使用。写真はコントロールサーフェスのCS-R3で、ディスプレイにはSO-SOのマイクのチャンネルにインサートしたEQが表示されている

FOHのミキサーは、常設のYAMAHA RIVAGE PM3を使用。写真はコントロールサーフェスのCS-R3で、ディスプレイにはSO-SOのマイクのチャンネルにインサートしたEQが表示されている。なお、今回は客席内のDJブースがステージとなっているため、イヤモニなども含めてモニターを用意していない。「ビートボックス自体にパワーがあって出力が大きいので、マイクの入力ゲインはそこまで上げていません。そのため、スピーカーからの回り込みはあまり気にしなくてもいいんです」と國廣氏は語る

YAMAHA CS-R3の左側には、RIVAGE PM3のDSPエンジンDSP-RXを用意(写真最下段)。最上段にあるWindowsのノートパソコンにはスピーカープロセッサーlake LM26のコントロールソフト、Lake Controllerが立ち上がっている

YAMAHA CS-R3の左側には、RIVAGE PM3のDSPエンジンDSP-RXを用意(写真最下段)。最上段にあるWindowsのノートパソコンにはスピーカープロセッサーlake LM26のコントロールソフト、Lake Controllerが立ち上がっている

SO-SO登場時の楽曲のみコンピューターから出力。その際は國廣氏の私物のオーディオI/O、MOTU M4が用いられた

SO-SO登場時の楽曲のみコンピューターから出力。その際は國廣氏の私物のオーディオI/O、MOTU M4が用いられた

 

 MUSICIAN 

SO-SO(beatbox、DJ)

 STAFF 

主催:COCO Gallery/クリエイティブマンプロダクション
制作:クリエイティブマンプロダクション

 RECENT WORK 

『Tetr4 Tone』
SO-SO

SO-SOが2023年7月よりリリースしてきたColor EP Series『Red』『Blue』『Yellow』『Green』と続いた本シリーズの集大成として、2/5(月)に新アルバム『Tetr4 Tone』をリリース。全楽曲のプロデュースをSO-SO自身が行っている。

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