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Chaki Zuluが語るSKY-HI「The Debut」制作秘話

Chaki Zuluが語るSKY-HI「The Debut」制作秘話

SKY-HI『THE DEBUT』の表題曲のプロデュース、レコーディング、ミックスを手掛けたChaki Zulu氏へインタビューを敢行。普段はテクニカルなトラックを数多く手掛けているChaki氏だが、「The Debut」はリスナーに伝わりやすいように曲を分かりやすくすることが大きなテーマだったという。

ライブで全員が歌って乗れる曲調にする

表題曲を手掛けることになった経緯を教えてください。

Chaki Zulu 最初から表題曲を手掛けるということではありませんでした。アルバム制作の後半でお話をいただいたので、直感的にほかの曲ではやっていない曲調をやろうと思って。その結果、表題曲にしてもらうことになりました。

SKY-HIさんから、「The Debut」はリスナーの方に伝わりやすくすることがテーマだったという話を聞きました。

Chaki Zulu 彼はラップのテクニックが高度すぎて、一般のリスナーが一緒に歌うには難しすぎるときがあるんです。だから、「The Debut」は、何を言っているのか一言一句分かるものにすることにしました。キャッチーでずっと聴いても飽きないくらいのメロディが出来上がったら、あえてサビもバースも同じメロディにしてループさせています。ライブ会場で全員が歌えるような曲にしたかったんです。

「The Debut」のプロジェクトはSTEINBERG Cubase Pro 12を使い、37trで構成されている。

「The Debut」のプロジェクトはSTEINBERG Cubase Pro 12を使い、37trで構成されている。

メロディはどのように作ったのですか?

Chaki Zulu 僕がピアノを弾きながら鼻歌を一緒に歌って、その中で彼のキーを探りつつ、男性も女性も歌える、低すぎず高すぎないメロディになるようにしています。彼と一緒にどんどん整頓していって、これならみんなで歌えるねというところまでブラッシュアップしていきました。

メロディが分かりやすいかどうかというのは、どうやってチェックしたのでしょう?

Chaki Zulu 僕は歌が下手なので、“こんな僕でも歌えるくらい”っていうジャッジ・ラインを持っているんです。自分がもし歌がうまかったら、もっと複雑なメロディを作っていると思います。そういう意味では歌が下手で良かったですね。

ずっと聴いていても飽きないようにするには、どんな工夫があったのでしょうか?

Chaki Zulu 飽きずに聴いていただけているなら、歌詞に普段聴かないような言葉が入っているからというのもあるかも。「The Debut」は友情ソングやラブ・ソングにもなりそうなメロディなのに、彼の中のネガティブな要素やフラストレーションを乗せるということをしているんです。

メロディ以外の要素についてはいかがですか?

Chaki Zulu 踊りが苦手な人でもリズムがとれる、速すぎず遅すぎないテンポ感を追求しました。また、メインでアコギの音源を鳴らしているのですが、アコギって自分の部屋で弾いているような空間の狭い音になりがちなので、今回はビートで“大人数感”を演出しました。まずマーチング・ドラムを入れてみると、至近距離で一人で演奏しているように聴こえたので、ストンプを入れて人数を増やし、さらにクラップを入れてまた人数を増やし……という形で、リズムを重ねて規模感を大きくしています。富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われた『BMSG FES』に行ったのですが、夕日が奇麗で風も涼しくて気持ちよかったんですよ。ちょうどそこで流れたら気持ちいいだろうなっていう音像を目指しました。

アコギを演奏せずにソフト音源を使ったのはなぜですか?

Chaki Zulu ベッドルーム・ミュージックみたいな曲だったら、手で弾いてピッキング・ノイズまで入れた方がかっこいいと思うんですけど、「The Debut」については、人間っぽい生々しさは不要で。SKY-HIのリリックをより際立たせるためにソフト音源を使いました。

Chaki Zulu氏が拠点とするHusky Studio。メイン・モニターはGENELEC 8040Bで、サブモニターはYAMAHA NS-10Mを設置

Chaki Zulu氏が拠点とするHusky Studio。メイン・モニターはGENELEC 8040Bで、サブモニターはYAMAHA NS-10Mを設置

DAWはSTEINBERG Cubase Pro 12で、専用のフィジカル・コントローラー、CC121が設置されている

DAWはSTEINBERG Cubase Pro 12で、専用のフィジカル・コントローラー、CC121が設置されている

ラックには、オーディオ・インターフェースのSTEINBERG UR824やUNIVERSAL AUDIO Apollo X6が格納されている。「The Debut」のボーカルはApollo X6を使って録音された

ラックには、オーディオ・インターフェースのSTEINBERG UR824やUNIVERSAL AUDIO Apollo X6が格納されている。「The Debut」のボーカルはApollo X6を使って録音された

Husky Studioでボーカルのレコーディングをする際はNEUMANN U 87 AIを使うことが多いとのこと。SKY-HIの声もこのマイクで収録された

Husky Studioでボーカルのレコーディングをする際はNEUMANN U 87 AIを使うことが多いとのこと。SKY-HIの声もこのマイクで収録された

スマホでボーカルが聴き取れることが重要

Chakiさんはミックスも手掛けています。こだわったのは、やはり広い空間の演出なのでしょうか?

Chaki Zulu それよりも、ボーカルの大きさです。海外のヒップホップって、ボーカルが年々大きくなっているんですよ。例えばドレイクはボーカルとベースしかない曲もありますし、J. コールの曲はピアノなどの音がめちゃくちゃ小さくて。これはなぜかなって考えたときに、スマートフォンの内蔵スピーカーで音楽を聴く人が増えてきているからじゃないかと思ったんです。今の時代、スマホできちんとボーカルが聴き取れないとリスナーを取りこぼしちゃうと思います。ヒップホップって、結構“何を言っているか”で流行るんですよ。音ももちろん重要ですけど、同じくらいワードも重要になってきます。だから、ラッパーに何を言ってもらうかが大切なんです。僕からリリックのテーマやワードを提案したり、そのワードをもとに大喜利してもらうこともよくあるんですよ。

大喜利とはどのようなことをするのでしょうか?

Chaki Zulu リリック制作に行き詰まったときに、“ここで●●って言ったら面白くない?じゃあその言葉で韻を踏めるワードって何だろう?”と聞いてみる。「The Debut」に関しては、 “ここは強く言っちゃおうよ”とか、“ここで希望を見せるのはどう?”みたいに、リスナーの気持ちになって提案しました。アーティストが言いたいことをくみ取って、うまく表現を調整していく作業ですね。海外だと、リリックも含めて楽曲制作に多くの人が関わっていて、みんな自分がそのアーティストになったつもりで曲を作っていると思うんですけど、日本ではまだまだそういう作り方があまり主流になっていない。だから、そういうことを一緒に考えてくれるプロデューサーを多く捕まえることができるっていうのも、SKY-HIのスキルの一つだと思いますね。

Vocal Recording & Mix

レコーディングの様子。オーディオ・インターフェースのApollo X6にコンデンサー・マイクU 87 AIを接続し、UNISON機能でVT-737 Tube Channel Stripと1176AE Limiting Amplifierをかけ録りしている

レコーディングの様子。オーディオ・インターフェースのApollo X6にコンデンサー・マイクU 87 AIを接続し、UNISON機能でVT-737 Tube Channel Stripと1176AE Limiting Amplifierをかけ録りしている

荒々しくするために、チャンネル・ストリップWAVES SSL E-Channelで音を少しつぶしている

荒々しくするために、チャンネル・ストリップWAVES SSL E-Channelで音を少しつぶしている

ボーカルのEQ。ハイを上げて存在感を出している一方、空間の広がりを演出するためにローはかなりカット

ボーカルのEQ。ハイを上げて存在感を出している一方、空間の広がりを演出するためにローはかなりカット

ボーカルにかけたリバーブVALHALLA DSP ValhallaVintageVerbと、リバーブにインサートしたEQ。“ハイとローを削るほど遠くで鳴っている気がするのですが、ハイを削りすぎると楽曲として成立しづらいので、ローをかなりカットして空間の広さを演出しました”とのこと

ボーカルにかけたリバーブVALHALLA DSP ValhallaVintageVerbと、リバーブにインサートしたEQ。“ハイとローを削るほど遠くで鳴っている気がするのですが、ハイを削りすぎると楽曲として成立しづらいので、ローをかなりカットして空間の広さを演出しました”とのこと

Guitar Mix

メインのアコースティック・ギターに使用したプラグイン。音源はSESSION GUITARIST Strummed Acoustic 2を使用。IZOTOPE Ozone 9のImagerで音を少し広げた後、プレート・リバーブWAVES Abbey Road Reverb Platesをインサートしている。EQでローをかなり削り、ハイを少し上げることで空間の広さを演出し、遠くで鳴っているような質感に仕上げている

Bass Mix

ベースはスマートフォンの内蔵スピーカーで少しでも聴こえやすくするために、IMAGE-LINE FL Studio純正のディストーション・プラグイン、Fruity WaveShaperを使用。“ドライブをかけました感”があまりなく、ナチュラルにひずませることができるそうだ

ベースはスマートフォンの内蔵スピーカーで少しでも聴こえやすくするために、IMAGE-LINE FL Studio純正のディストーション・プラグイン、Fruity WaveShaperを使用。“ドライブをかけました感”があまりなく、ナチュラルにひずませることができるそうだ

Release

通常盤
通常盤(2DVDもしくはBlu-rayが付属)
初回生産限定盤(CD+2DVDもしくはBlu-ray+フォト・ブックを同梱)
左から通常盤、通常盤(2DVDもしくはBlu-rayが付属)、初回生産限定盤(CD+2DVDもしくはBlu-ray+フォト・ブックを同梱)

『THE DEBUT』
SKY-HI
B-ME:AVC1-63394/B~C、AVC1-63395/B、AVCD-63391/B~C、AVCD-63392/B、AVCD-63393
※2DVD/Blu-rayには、『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』のライブ映像(2022年2月25日のLINE CUBE SHIBUYAおよび2022年9月1日の国際フォーラムA)、「JUST BREATHE feat. 3RACHA of Stray Kids」「Bare-Bare」「Fly Without Wings」「The Debut」のミュージック・ビデオを収録

Musician:SKY-HI(vo)、Aile The Shota(vo)、JUNON(vo)、LEO(vo)、3RACHA of Stray Kids(vo)、Novel Core(vo)、edhiii boy(vo)、Atsuki(tp)、Tocchi(tb)
Producer:Ryosuke “Dr.R” Sakai、SUNNY BOY、TRILLl DYNASTY、hokuto、UTA、KM、SOURCEKEY、☆Taku Takahashi、Chaki Zulu
Engineer:Ryosuke“Dr.R”Sakai、HIRORON、D.O.I.、SHIMI from BUZZER BEATS、Hideaki Jinbu、Tadashi Matsuda、Chaki Zulu
Studio:STUDIO726 TOKYO、magical completer studio、Daimonion Recordings、NEW WORLD STUDIO shibuya、prime sound studio form daikanyama、MSR lab、Husky Studio

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