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VLOT 〜ヒップホップ・ユニットBleecker Chromeのメイン・プロデューサーも務めるDJ/音楽プロデューサー

VLOT 〜ヒップホップ・ユニットBleecker Chromeのメイン・プロデューサーも務めるDJ/音楽プロデューサー

やればやるだけスキルがたまるので、毎日やり続けることが上達の秘けつだと思います

今回登場するのは、東京を拠点とするクリエイター・コレクティブTokyoVitaminの一員であり、DJ/音楽プロデューサーのVLOTだ。ヒップホップ・ユニットBleecker Chromeのメイン・プロデューサーも務めている。6月には自身初のアルバム『WHO IS VLOT』をリリース。同作にはLEX、MIYACHI、Jin Dogg、PETZ、JP THE WAVYなどが参加し話題を呼んでいる。今回は、そんなVLOTにビート・メイキングにおけるこだわりやテクニックを聞いてみた。

【Profile】DJ/ヒップホップ・プロデューサー。都内のクラブでDJとしての活動をスタートし、2015年にはアパレル・ショップPORTRATIONをオープン。2019年より音楽プロデューサーとしての活動をスタートし、現在はBleecker Chromeをはじめ、国内外のさまざまなアーティストへ楽曲提供している。

 Release 

『WHO IS VLOT』
VLOT
(bpm tokyo)

FL Studioの“鳴り”が純粋に好き

■共有スタジオ

 TokyoVitaminの仲間たちでシェアしている一軒家があって、その中に音楽制作用のスタジオが2つあるんです。自分はそのうちの一つを使っています。スタジオ自体ができたのは6〜7年くらい前になりますが、自分がこのスタジオを使いはじめたのは3年くらい前からです。広さは8〜10畳くらいで、機材は仲間たちがそれぞれ持ち寄って共有していることが多いですね。ラッパーのMIYACHIや3兄弟バンドのGliiicoも、このスタジオをよく使っています。もともとは、あるバンドのドラマーさんがドラムを練習するために使われていたスタジオだということもあり、防音対策は割としっかりできていると思います。自分は主にボーカルやラッパーのレコーディングをするために使っていますね。

TokyoVitaminで所有するスタジオの一つ

TokyoVitaminで所有するスタジオの一つ。BYOD(Bring Your Own Device)方式を採用し、モニター・スピーカーやマイク、アウトボード類などはメンバーおのおのが持ち寄って共有しているのだそう。VLOTは主にボーカルやラッパーのレコーディング時に利用しているという

メインのモニター・スピーカーはYAMAHA HS8を使用している(写真右)

メインのモニター・スピーカーはYAMAHA HS8を使用している(写真右)

■音楽制作ツール

 基本的にはAPPLE MacBook ProとヘッドフォンのAirPods Maxを中心としたミニマルなセットです。このスタジオに来るときはMacBook Proとオーディオ・インターフェースのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinを持ち込むくらい。マイクはスタジオにあるコンデンサー・タイプのNEUMANN TLM 49やTOWNSEND LABS Sphere L22を使っています。DAWはIMAGE-LINE FL Studioです。もともとはスクリレックスの影響でABLETON Liveを使っていたんですけど、2年前くらいにFL Studioをメインに使いはじめました。当時、自分はYouTubeでチュートリアル動画を見てDAWの使い方を勉強していたのですが“圧倒的にFL Studioの動画数が多かったから”というのが理由の一つです。あとはFL Studioの“鳴り”が純粋に好きっていうのも大きいですね。

普段のモニター環境。ヘッドフォンのAPPLE AirPods Max(写真左)と、ポータブル・スピーカーのJBL PROFESSIONAL Flip 6(同右)

普段のモニター環境。ヘッドフォンのAPPLE AirPods Max(写真左)と、ポータブル・スピーカーのJBL PROFESSIONAL Flip 6(同右)

オーディオ・インターフェースはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin

オーディオ・インターフェースはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin

マイク・スタンドには、専用プラグインと併用して名機の特性を再現するコンデンサー・マイク、TOWNSEND LABS Sphere L22がスタンバイ

マイク・スタンドには、専用プラグインと併用して名機の特性を再現するコンデンサー・マイク、TOWNSEND LABS Sphere L22がスタンバイ

■DAWの使い分け方と制作プロセス

 ビート・メイキングするときはFL Studioで、レコーディング/ミックス/マスタリング時はLiveで作業しています。オーディオ編集という点に関しては、Liveのほうが使い慣れているからです。あとサンプリングするときはLiveを用います。録音したオーディオのテンポやキーをLive上で一度調整して、それをまたFL Studioに戻すという作業をしているんです。マスタリングまでの工程としては、まずFL Studioでビートやオケを作ります。その2ミックスをMP3ファイルに書き出し、Liveで読み込みます。そのままLiveでボーカル/ラップのレコーディングを終えたら、最後はFL Studioで書き出したパラ/ステム・データをLiveに流し込み、ミックスを詰めてマスタリングまで持っていくという流れです。

同スタジオには、デジタル・シンセのYAMAHA DX7(上段)やYC-20(下段)も設置されている

同スタジオには、デジタル・シンセのYAMAHA DX7(上段)やYC-20(下段)も設置されている

ループ・メイカーと協力して効率的に曲制作

■マイク

 基本的にはTLM 49でボーカルを録っています。中域が良い感じに録れるのが気に入っていますね。男性ラッパーの声とも相性がいいように思います。録音時は、TLM 49からダイレクトにApollo Twinへ入力します。細かい音処理は録音後にLive上で行うので、UADプラグインのかけ録りなどは行っていません。

VLOTが最新作の制作で多用したというコンデンサー・マイク、NEUMANN TLM 49

VLOTが最新作の制作で多用したというコンデンサー・マイク、NEUMANN TLM 49

■ボーカル処理のプラグイン・チェイン

 Live上では、まずANTARES Auto-Tuneがあり、その後Live付属のGateで不要なノイズをカット。それからWAVES DeEsserとRenaissance Equalizerで基本的な音作りをして、SOLID STATE LOGICプラグインのBus Compressor 2とChannel Strip 2、エンハンサーのSLATE DIGITAL Fresh Airでよりイメージに近づけていきます。その後マルチエフェクトのWAVES CLA Vocalsで空間系エフェクトなどを加え、WAVES CLA-76でダイナミクスを整えたら、最後にDeEsserで耳に痛い帯域を抑えます。ボーカル処理についてはチュートリアル動画を見て研究しました。SOLID STATE LOGICのプラグインは、最新アルバムを作る際に導入してみましたが、シャキッとした音になるのでお気に入りです。

VLOTの自宅にある音楽制作スペース。モニター・スピーカーはKRK VXT6を装備

VLOTの自宅にある音楽制作スペース。モニター・スピーカーはKRK VXT6を装備

■ビート・メイキング・ツール

 音源は、XFER RECORDS SerumやSPECTRASONICS Omnisphere、ARTURIA Analog Lab Vといったソフト・シンセが多いです。エフェクトはSUGER BYTES EffectrixやFL Studio付属のGross Beatなどで、これらは複合的なエフェクト処理を手軽に行えるので気に入っています。ドラムにはサンプル素材を使うことが多いです。

■ループのこだわり

 上モノについては、世界中のループ・メイカーからループ素材が送られてくるので、それらのストックの中からピンと来るものを選ぶこともあります。一聴したときにインスピレーションが湧くかどうか、または“ヤバい!”って感動するかどうか、その辺りを重視していますね。ラッパーにビートを選んでもらう際、ビート数はたくさんあった方がいいので、こういった曲の作り方は普段からよくやります。

■現代の音楽制作におけるスピード感

 今の時代、ラッパーたちは曲を作りまくった上で、そこからリリースするものを選んでいくというスタイルが主流です。例えば、あるアルバムのために10曲作るっていうアーティストというのは自分の周りにはあんまりいないんですよ。基本的には毎日曲を作ってストックしたものの中から、最終的にアルバム・コンセプトにあったものをセレクトするという感じです。なので、ビート・メイカーはループ・メイカーと協力して効率的にやっていかないと今のスピード感に追いつけないんですよね。あと、やればやるだけスキルがたまるので、毎日やり続けることが上達の秘けつだと思っています。

VLOTを形成する3枚

「HEROES & VILLAINS」
メトロ・ブーミン
(Boominati Worldwide / Republic Records)

 「自分のアルバムを作る上で一番影響を受けた作品。人選やコンセプト、楽曲の配置、それらのつなげ方などに多大なる影響を受けています」

 

「クローンズ」
ザ・ネプチューンズ
(ソニー)

 「プロデューサーを意識するようになったきっかけは、ザ・ネプチューンズでした。彼らの音楽からファッション・センスまで、幅広くインスパイアされています」

 

「スケアリー・モンスターズ・アンド・ナイス・スプライツ」
スクリレックス
(ワーナーミュージック・ジャパン)

 「スクリレックスは、DTMを始めるきっかけを与えてくれました。彼の音楽に対するマインドや曲の作り方、DJプレイなどから多くのことを学びました」

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