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Cubaseで効率よく曲作りをするための準備〜筆者の歌モノ用テンプレートを公開|解説:木下龍平

Cubaseで効率よく曲作りをするための準備〜筆者の歌モノ用テンプレートを公開|解説:木下龍平

 初めまして。この度こちらで連載させていただくことになりました、SUPA LOVE所属作家の木下龍平です。STEINBERG Cubaseは高校生の時に手にして以来ずっと使い続けておりまして、音楽が仕事になった今の自分にとっても無くてはならない存在です。皆さんが参考にしやすいように、なるべく実際の楽曲制作の流れに沿って使い方を解説できたらと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いいたします。

矢印キーによる移動をトラック間のみに限定する

 さて、それでは早速曲を作り始めたいところですが、その前に、あらかじめやっておくと便利な設定を幾つかご紹介させてください。

 まずは、矢印キー(コンピューター・キーボード)について。矢印キーの上下は、デフォルトだとトラックとイベントの選択両方に設定されていて、イベントを選択した状態で矢印キーを押すと、イベント単位で上下に移動する仕様になっています。このままでも便利ではありますが、イベントの編集中や編集後にちょっと下のトラックに移動したいとき、その都度イベントの選択状態を解除するのは意外と手間じゃないですか? 本当にささいなことですが、個人的には矢印キーの上下を押せばいつでも独立してトラックを選べる方が挙動が分かりやすくて好きなので、仕様を変更しています。

 メニュー・バーから“Cubase→環境設定→編集操作”というタブに進むと、“上下の矢印キーをトラック選択だけに使う(パートには使わない)”という項目があるのでこの部分にチェックを入れてみてください。ほかにも、“背景クリックでトラックを選択”や“トラックの選択をイベントの選択に従わせる”なども、トラックの選択の挙動に関わる項目です。こういった細かな設定ができるのは“ほかのDAWからCubaseへの乗り換えを検討しているけど、ちょっとした操作性の違いが不安だ”という方にとっても安心だと思います。

編集操作の画面。赤枠の“上下の矢印キーをトラック選択だけに使う(パートには使わない)”という項目にチェックを入れると、矢印キーの上下を押すことで、いつでもトラック間を移動できるようになる。黄枠の“ユーザーインターフェース”からは画面の色を変更できる

編集操作の画面。赤枠の“上下の矢印キーをトラック選択だけに使う(パートには使わない)”という項目にチェックを入れると、矢印キーの上下を押すことで、いつでもトラック間を移動できるようになる。黄枠の“ユーザーインターフェース”からは画面の色を変更できる

 また、“ユーザーインターフェース”の項目では、画面の色や新しくトラックを作成した際のデフォルト・カラーをあらかじめ設定しておくことができます。自分は、キーエディターの画面をベロシティの色やピアノロールの白鍵/黒鍵が見やすいように、白っぽい色に変更しています。トラックの色についても、“MIDIは水色”“Audioは赤”のように好きな色を設定しておくと、なんとなくテンションが上がるのでお勧めです。

編集操作画面の黄枠“ユーザーインターフェース”の項目から、上の画像のようにトラックなどの色をあらかじめ設定しておくことができる

編集操作画面の黄枠“ユーザーインターフェース”の項目から、上の画像のようにトラックなどの色をあらかじめ設定しておくことができる

 このようにCubaseは細かい部分まで仕様を変更することができます。自分が使いやすいように細かくカスタマイズできると思うので、ここで紹介した以外にもいろいろ探してみてください。

テンプレートやよく使うトラックを保存しておく

 私は普段、楽曲コンペに参加することが多いので、クオリティが高いものをなるべく短時間で仕上げる必要があります。そのため、Cubaseを立ち上げてからすぐに曲を作り始められるようにテンプレートを用意しています。バンドのデモ作りや趣味で楽曲制作をする方にとっても、ふとしたときに自分の中に湧いたイメージをすぐ形にできる準備をしておくことはインスピレーションを失わないために重要だと思うので、ぜひ参考にしてみてください!

 やり方はとても簡単。まず“新しくプロジェクトを立ち上げたら、この画面が出てきてほしい!”という状態を作ってしまいます。自分の場合は基本的にいわゆる歌モノを作る場合がほとんどなので、必ず使用するトラックをインサート・エフェクトやグループチャンネル込みで用意しています。私のテンプレートには以下のようなトラックが入っています。

筆者のテンプレート。マーカー・トラック、仮歌用のトラック、ガイド・メロ、ベース、エレキ・ギター、ピアノ、ドラム、FXなどが並ぶ。赤枠のUSEDというフォルダー・トラックは、いわゆるゴミ箱のようなもので、スケッチに使ったピアノ・トラックや、自分の仮仮歌のトラックなど、“もう使わないから消したいけど、もしかしたら後で参考にするかも……”といったトラックをとりあえず放り込んでおくためのもの

筆者のテンプレート。マーカー・トラック、仮歌用のトラック、ガイド・メロ、ベース、エレキ・ギター、ピアノ、ドラム、FXなどが並ぶ。赤枠のUSEDというフォルダー・トラックは、いわゆるゴミ箱のようなもので、スケッチに使ったピアノ・トラックや、自分の仮仮歌のトラックなど、“もう使わないから消したいけど、もしかしたら後で参考にするかも……”といったトラックをとりあえず放り込んでおくためのもの

●ガイドメロ
 作曲の際に歌メロをシンセで打ち込んでおくものです。

●ピアノ
 ピアノは最終的なアレンジに入れなくても、コードやアレンジのスケッチに使います。

●ドラム
 生ドラムの音源とサンプラーを両方立ち上げています。

●ベース
 ベースは自分で弾くことが多いので、録音用のオーディオ・トラックをラインとアンプの両方用意しています。

●仮仮歌用のトラック
 仮歌シンガーの方へ譜割確認用としてお渡しする、自分の歌を録るトラックです。

 ほかには、“マーカー”“テンポ”“拍子”などのグローバルトラックなどもあると良いですね。

 こんな感じでテンプレートが用意できたら、メニュー・バーの“ファイル”から“テンプレートとして保存”を選び、任意の名前を付けてOKを押せば完了です! 以降、新規プロジェクトを立ち上げる際に、作成したテンプレートが選べるようになります。

Cubaseを立ち上げた際に表示される画面。“その他”タブから、赤枠のように作成したテンプレートが選べるようになっている

Cubaseを立ち上げた際に表示される画面。“その他”タブから、赤枠のように作成したテンプレートが選べるようになっている

 また、プロジェクトのテンプレートと併せて紹介したいのが“トラックアーカイブ”という機能です。こちらは単一、または複数のトラックをまとめて保存できるもので、必ず使うわけではないけど、よく使う“ストリングス”や“ホーン・セクション ”などを登録しておくと便利です。似たような機能に“トラックプリセット”というものもあるのですが、“トラックアーカイブ”では打ち込んだMIDIデータや、オーディオファイルごと保存できるのが特徴になっています。

 こちらもやり方は簡単で、保存したいトラックをすべて選択した状態でメニュー・バーから“ファイル→書き出し”を選択し、“選択されたトラック”を選びます。オーディオファイルも含めて保存したい場合は“メディアファイルをコピー”の方にチェックを入れてください。

 読み込むときはメニュー・バーから“ファイル→読み込み”を選択し、“トラックファイル”を選びます。複数トラックを保存した場合は、その中から任意のトラックだけを読み込むこともできるので、一緒に使う可能性があるトラックはまとめて登録しておくとよいでしょう。インサート・エフェクトや複数トラックをまとめて保存&読み込みができるのはかなり便利なので、ぜひ活用してみてください!

トラックアーカイブの読み込みオプションの画面。保存しておいたトラックをプロジェクトに読み込むことができる。読み込みたいトラックにチェックを入れて、出力先トラックを“新規トラック”に設定しOKボタンを押すと、保存したトラックをプロジェクトに読み込むことができる

トラックアーカイブの読み込みオプションの画面。保存しておいたトラックをプロジェクトに読み込むことができる。読み込みたいトラックにチェックを入れて、出力先トラックを“新規トラック”に設定しOKボタンを押すと、保存したトラックをプロジェクトに読み込むことができる

 以上、曲を作り始める前に第1回が終わってしまいましたが、これから何十、何百と曲を作っていくことを考えれば大事な作業だと思います。次回もよろしくお願いいたします。

 

木下龍平

【Profile】SUPA LOVE所属の作詞作曲編曲家。15歳よりベースを始める。専門学校を卒業した後、バンドやアーティストのレコーディング、ライブのサポートのほかに講師としても活動。近年ではTVアニメ『ドラえもん』のキャラクター・ソング 「ジャイアントドリーム」の作編曲や、TikTokで話題になった「チグハグ」のアレンジを担当した。声優/アニメ作品のほか、アイドルやJポップ・アーティストへ幅広く楽曲を提供している。

【Recent work】

『フェイクファーワルツ』
Myuk
(ソニー)

製品情報

STEINBERG Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 12:13,200円前後|Cubase Artist 12:35,200円前後|Cubase Pro 12:62,700円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11以降
▪Windows:Windows 10 Ver.21H2以降(64ビット)
▪共通:INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー、8GBのRAM、35GB以上のディスク空き容量、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)