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tofubeatsが教える音圧&ミックス改善術 〜ラウドネスメーターや空間系エフェクト活用の勧め

 プロがあなたの楽曲にコメントやアドバイスをしてくれる、サンレコWeb会員限定企画『Send & Return ラボ』。一流のミュージシャンや音楽クリエイター/エンジニアが会員読者から送られた楽曲を聴き、具体的なコメントやアドバイスなどをお返しいたします。

 Vol.4からはゲストにtofubeatsを迎え、あなたの楽曲にフィードバックをお戻しします。今回は、伏見悠介さんの作品「omonnai」が選ばれました!

今回の応募曲について

  • アーティスト名:伏見悠介
  • 楽曲タイトル:omonnai
  • 補足コメント:ラテンっぽいリズムとダンスミュージックのノリをJポップという枠に収めることを意識して制作しました。歌唱はDreamtonics Synthesizer Vのラップモードを使用しています。
  • お悩み:迫力のある音圧感や奥行きのあるミックスのコツがつかめずにいます。
  • 試聴音源:下記をクリック↓

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※記事におけるアーティスト名や音源については、“非公開”でも対応可能です。

【tofebeatsからの楽曲コメント】

LUFS基準を活用した音圧測定の勧め

 『Send & Returnラボ』企画に登場させていただきますtofubeatsです。まずは楽曲をお送りいただいた皆様、本当にありがとうございました! 今回は伏見悠介さんの「omonnai」にフィードバックさせていただければと思います。

 Synthesizer Vのラップモードを使って作った作品ということで、耳に残る部分もあり、リズムのアレンジなども独特で面白い楽曲だなと思いました。クラブミュージックっぽいサウンドのバランスということもあり、フィードバックできる点があるかなと思い本楽曲を選ばせていただきました。“迫力のある音圧感や奥行きのあるミックスのコツが掴めずにいます”とのコメントをいただいておりますので、そちらに関してフィードバックしていきましょう。

Synthesizer Vは、Dreamtonicsが開発した歌声合成ソフトウェア。AI技術と従来のサンプルベースの手法を組み合わせたハイブリッドエンジンを搭載しており、リアルで自然な歌声を生成することが可能だ

 まずは音圧感についてです。打ち込みで作っていることもあり、音圧に関しては割と出ているのではないかと思いました。波形を読み込んでみる限りおそらく簡易的にマスタリング等もしておられ、工程としてはバッチリこなされていると感じました。

 一方でiZotope RXに読み込んで測定した結果Integrated(楽曲全体の数値)でラウドネス値は−10LUFSとなり、これは一般的な市場に出ている楽曲の中では少し足りなく感じる音量かもしれません。ラウドネスメーターを導入して自分が普段聴いている楽曲と音量を比べ、マスター後の音量をそろえてみると良いかもしれません。Apple Logic Proには確かラウドネス・メーターが付いてましたので、お気に入りの楽曲と比べてみてください。

iZotope RXは、音声の修復やクリーンアップを行うためのオーディオリペアツール。録音時に発生したノイズや不要な音を取り除くことが可能だ。Loudness Controlモジュールでは、音源のラウドネス値を計測/調整することができる

空間系エフェクトで奥行きをプラスしよう

 続いてはミックスについてです。本楽曲、そもそも音量のバランス自体は取れているので、細かい部分で作業をすればもっと良くなるのでは……と感じました。“奥行き”と言う言葉には、ミックス以外にアレンジの部分もあると思いますので併せて触れていきます。

 まずは、ドラムなどに対してピアノやシンセの迫力が少し足りていないような気がしました。Spliceなどのサンプルはすでに処理が施されていることも多いため、ある程度の音圧感はコンプレッサーなどで足したり、EQで音色の雰囲気をそろえる必要はあるかなと思いました。

 また、ボーカルをはじめ、すべての楽器に関しては空間エフェクト、リバーブやディレイなどがあまり掛かっていないのではないでしょうか。特にボーカルはそういったエフェクトを掛けてもう少し馴染ませてもいいのかなと感じます。Synethesizer Vは自分も使っていて、生の声より抜けすぎる部分があり難しいとは思うのですが、良いセッティングを見つけてほしいです。他のパートにもセンドでそういったエフェクトをそろえて送ってあげると全体の統一感が出ると思います。また、こういった空間系エフェクトの掛け具合などの調整は、いわゆる奥行きを出す一つの方法かと思います。遠さ、近さみたいなものを意識してトライしてみてください。

オートメーションを用いて楽曲の表現力をアップ!

 あと1点、これをやればめちゃくちゃ良くなると思ったのはエンベロープ/オートメーションを書くことです。0:21の歌が終わってボーカルチョップ風のところに入るところや、歌が終わってピアノソロに入るところなど、歌が終わった瞬間にせっかく良いアレンジのパートに入るのに少し楽曲的に寂しくなるところがあり、そこの部分はバックトラックのピアノなどを少し上げちゃうなど、音量を細かく操作してテンションを操作しちゃっても良いと思いました。

 また、別の解決法として転調前に1拍バスドラを抜いたりもしておられますが、ライザーを入れたりフィルインを入れたり、いわゆる“ストップ&ゴー”的な展開の切り替わり部分をさらにしっかり作り込むと、アレンジの良さがより際立つのではないでしょうか。ここからサビだぞ!とか転調だぞ!みたいなところはもう少し強調しても良いと思いました。

 というわけで、こんな感じで自分からのフィードバックとさせていただきます。ミックスや今後のアレンジの参考になりましたら幸いです。

今回のゲストアドバイザー:tofubeats

【Profile】1990年生まれの音楽プロデューサー/DJ。2007年頃よりtofubeatsとしての活動をスタート。2013年に「水星 feat.オノマトペ大臣」を収録した自主制作アルバム「lost decade」をリリース。同年、森高千里をゲストボーカルに迎えた「Don't Stop The Music feat.森高千里」でワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。最新作は全編ボーカルに歌声合成ソフトを用いたアルバム「NOBODY」。2024年10月から、5年ぶりの全国<ツアー『tofubeats JAPAN TOUR 2024』を開催中>
https://www.tofubeats.com/gigs
最新リリース:tofubeats『NOBODY』

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