発表会場の最前列センターには各国で活躍する若手クリエイターが並ぶ
今月はロンドンからお届けします。光栄なことに、APPLEのロンドン本社で開催されたiPad Pro/iPad Air/Apple Pencil Proの発表イベントに招待していただきました。昨年ロンドンのバタシー発電所跡地にオープンしたAPPLEロンドン本社に訪れて、これが会社のオフィスなのか?と、にわかに信じがたき美しい空間で大変ショックを受けました、もちろん良い意味で……。
当日は、発表会場の最前列センターに各国で活躍するジャンルを問わない若手クリエイターが10名ほど集まりました。一番にAPPLEの思想を感じたのは、この若手クリエイターたちを最前列に招待していたことです。もちろんプロダクトにはそれぞれ思想があるけれど、このようにしてクリエイターが実感できるリスペクトを感じる機会はなかなかないなと、感激しました。いつも配信で見ていたKeynoteが眼前で始まり、これでワクワクしないわけがないですね。配信を見ていて、こんなに声を出して反応するか?と思っていたけど、目の前でM4チップがiPadに搭載されるのを発表されたときはさすがに声が出たな。
M4チップ搭載でレンダリングが高速なiPad Pro APPLEはクリエイターが触発される環境を提供
さて、恐らく誌面最速、最カジュアルなレポートをします。
●iPad Pro:むっちゃ薄くて速い。M2からM3飛ばしてM4チップ搭載。4chスピーカー内蔵。レンダリング速すぎ。CADを使う人やゲーム好きな人に良さそう。重い作業がない外出では、Magic Keyboardを付けたらこれ一択かも。
●iPad Air:むっちゃ薄くて軽い。現場でかなり使われる気がした。特にiPad用Final Cut Proのマルチカム編集は多くの現場を救うことになるのでは……。配信が一般的になってきた今、iPhoneとiPadがあればWi-FiがなくてもP2P接続で配信業者なしでいけてしまう。これは結構現場の負担を軽くするのでは!? iPadアプリFinal Cut Pro 2のライブ・マルチカムに対応するためのFinal Cut Cameraは、今春後半より単体のiPhone/iPadアプリとして無料で提供される。
●Apple Pencil Pro:ペンをタップするって日常にない行動だから慣れないのですが……今回発表されたグリップと触覚フィードバックがあることで、ペンが空間にUIを出現させる感覚で良かった! 絵を描くわけでもない私でもかゆい所に手が届くアップデートなので、描き手の方々にはものすごい変化なのでは。ペンの回転も検出されるので、ペン先の角度変化も簡単で、これがそのままLogic Proのオートメーションを書くときに使えたら、これまで苦戦していた2軸の操作も簡単になるのではないかと(例えばXY軸、XZ軸の操作が片手でできるとか)期待してしまいますね。
発表の後は集まった各国のクリエイターたちと仲良くなり、昨日は席が近かったトラヴィス・スコットのコンポーザーも務めるJulianと、アデル、ハリー・スタイルズ、ビヨンセなどの衣装も手掛けるArturo ObegeroのファウンダーArturo、ロンドンで活動しているイラストレーターfoxcoこと渡邉香織さんと楽しく過ごしました。先ほどホテルの朝食でJulianとインドのファッション・ブランドBODICEのファウンダーRuchika Sachdevaと一緒になり、この後は3人で美術館へ出かけようかと思っています。
こびてるみたいで悔しいのでサクっと書きますが、APPLEはクリエイターの味方であり、クリエイターが触発される(時には試されているような)環境を提供し、プロダクトではなくその思想が刺激的な人間を集めるんだなと思います。プロダクトの発表会だけど、彼らの思想や背景を聞く時間が一番わくわくした。その思想が好きで、プロダクトを持っているんだろうな。技術は、はやりすたりでいつか古くなるけれど、源流が思想なのがAPPLEなんだろう。
今月のひとこと:先日急にSNSで“ファンだ!”と連絡をくれたロンドンの音楽家アナトール・マスターと、エクスペリメンタル・ミュージックの聖地cafe OTOに行きます
細井美裕
【Profile】1993年生まれ、慶應義塾大学卒業。マルチチャンネル音響を用いた空間そのものを意識させるサウンド・インスタレーションや、舞台公演、自身の声の多重録音を特徴とした作品制作を行う。これまでにNTT ICC無響室、YCAM、札幌SCARTS、東京芸術劇場コンサートホール、愛知県芸術劇場、国際音響学会AES、羽田空港などで作品を発表してきた。