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【音楽制作お悩み相談室】エンジニアにデータを送る際に、アーティスト側で気を付けられることは何ですか?

音楽制作お悩み相談室(照内紀雄)

日々音楽生活を送っていて、ふとした疑問が湧いたり、制作がうまくいかなくて悩むことはありませんか? 『音楽制作お悩み相談室』は、サンレコWEB会員の皆様が、そんな疑問をいつでもプロに投げかけることのできるコーナーです。本日は、“エンジニアの方に送るデータ”についての質問にお答えいたします。

Q.エンジニアの方にデータを送る際に、アーティスト側で気を付けられることがあれば教えていただけないでしょうか?

また、“こういったプロジェクトファイルだと作業しやすい”“ミックスしやすい”というものはありますか?

A. こちらがやることが明確になっていればいるほど、クオリティの向上に心血を注ぐことができます。

いろいろと細かいことはあるのですが

「もし自分が他人の曲をミックスをするとしたら、どういうファイルだとやりやすいか?」

というのを、とにかく念頭において考えてみるのがよいのではないでしょうか。

 

例えば、僕がやりやすいなぁと思うのは、

【AVID Pro Tools以外のDAWから書き出されたオーディオファイルの場合】

  • トラックがしっかり整理されていて、ファイル名が簡潔
  • オケを全トラック並べて全体を−5〜8dBくらい下げると、大体−3VUくらいのレベル感である程度のバランスが成立している(ただし余りに大きすぎる/小さすぎるトラックはなし)

 

【Pro Toolsのセッションファイルの場合】

  • OKテイクが分かりやすい
  • 使わないトラックや、保険で残してあるけど一旦ミュートしてあるトラックなどが分かりやすい
  • コメント欄に必要な注釈が記載されている(“このノイズはわざとです”とか“がっつりひずませてください”とか)

というものです。

ボーカルに関しては、

新規のお客さんで自分がレコーディングやエディットに関わらない=ミックスだけ担当する場合にいつも送っている要望書があるのでそちらを下記に転載します。

Pro Toolsであることが前提になっていますが、他のDAWにも通じる部分があるかと思います。

EDIT 時のお願い

  • テイクの選定は可能な範囲で事前にお願いします。
  • メイン以外(ハモ、コーラス、ガヤその他バックコーラス類)のブレスは
    細かいところも含め全て切って下さい。
  • メインで 3 人以上同時に歌唱している部分のブレスも全て切って下さい。
  • ダブル、ハモなどの Edit で、ReVoice などを使い完全手動でない場合は
    コミット、バウンス後にしっかり検聴をお願いします。(ピッチが違っているところは無いか?音質的におかしなところは無いか?等)
  • 全トラック、可能な限りプレイリスト裏に Edit 前のデータ、テイクを
    同じタイムスタンプで残しておいて下さい。
  • エフェクトをかける箇所(オートチューン、ラジオボイス等)はトラックの
    コメント欄にその旨記載をお願いします。 決め打ちで行く場合はオーディオ化もしくはコミットしたものもご用意お願いします。
  • コピペした箇所、分かるようにクリップの色を変えておいて下さい。(その際、無色以外でお願いします。)
  • 複数人歌唱でトラックの色分けをする場合、「人毎」に色分けをお願いします。
    (ユニゾン、ソロなどパード毎ではなく)
  • 特に目立つリップ、吹かれ等のノイズは事前に除去をお願いします。

 

あとは“どういう方向のミックスにしたいのか?”とか、

“○○の××という曲がリファレンスですよ”とか、

“このトラックは特にこの曲通しての主役なのでとにかくガツンと出して!”とか、

そんな感じのテキストが同梱されていれば、とても気分良く作業をスタートすることができます。

やることが明確になっていればなっているほど、クオリティの向上に心血を注ぐことができますね。

 

たま〜に、全トラック分エフェクト込みのWetと、エフェクトをバイパスしたのDryの両方のデータを送ってきて、

「都合の良い方をお使い下さい」

という人がいますが、それは勘弁して下さい。

初見の曲で、全トラック聴き比べてどっちを使うかを考えているだけで、すごく無駄に時間がかかるので。

まあ、実際のところそんな時間は無いので、僕は問答無用でWetのファイルで始めます。

Dryのファイルを使ってミックスを始めると、99.99%の確率で、

「もう少しデモの質感に近づけられますか?」

と言われるので。

 

あとは、書き出す前にサンプルレートの確認をしましょう。

お願いするエンジニアが、普段どんなフォーマットでミックスをしているのかによりますが、
特に48kHzか96kHzかではミックスの手法や使えるプラグインも変わってきます。

例えば、普段32ビット/48kHz WAVでミックスしているエンジニアに96kHz以上のファイルを渡す際には、

  • 作品の意図、もしくはプロジェクトの決まり事として96kHzでの納品がマストなのであれば、それを伝える
  • 特にマストでない場合は、「96kHzで用意しましたが、ミックスしやすいサンプルレートにコンバートしていただいて構いません」と一文添える

などの情報があると、無駄なやり取りが少なくて済みます。

回答:照内紀雄

照内紀雄

照内紀雄(Photo:Chika Suzuki)

【Profile】青葉台スタジオ所属のエンジニア。Vaundy、ザ・リーサルウェポンズ、和ぬか、なとり、a子、キタニタツヤ、大橋ちっぽけ、[Alexandros]、マハラージャン、超ときめき♡宣伝部などを手掛ける。趣味は筋トレと野営。

 

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