日々音楽生活を送っていて、ふとした疑問が湧いたり、制作がうまくいかなくて悩むことはありませんか?『音楽制作お悩み相談室』は、サンレコWEB会員の皆様が、そんな疑問をいつでもプロに投げかけることのできるコーナーです。本日は、りょうさんからの質問にお答えいたします。
Q. ミックスを行う際に、いつも決まった順番はありますか?
楽曲ごとに変えたりするのでしょうか? byりょう
A. 軸となるパートを決めて進めるか、録音の時点で全体のバランスを整えてしまいます
これは場合によってまちまちです。一番多いのが、バスドラムかベースの音を作って、その上に積んでいくパターン。曲の頭から最後まで通してドラムやベースが入っている一般的なロックやポップスだと、このやり方がやりやすいです。バスドラムやベースは、そこそこ音量もありつつほかの楽器に比べて音量の変動は少ないので、これを軸に設定してほかの楽器を相対的に配置していくと、バランスが取りやすく途中で迷子になりにくいです。
バスドラムから始めるか、ベースから始めるかは、楽曲がポップス寄りなのか、ジャズ寄りなのかで決めていますね。ジャズ系だと一番安定しているのがベースなので。
軸を決めた後の工程は、バスドラム→ドラム全体→ベースも含めたリズム隊→コード楽器→ボーカル→楽器のソロという流れで進めていくことが多いです。ボーカルを最後の方に持ってきているのは、最後にバランスをとったパートは、どうしても一番聴こえやすく混ぜる感じになるから。ソロに関してはボーカルと入れ替わりに気持ちよく聴こえる音量感にしたいので、ボーカルの後に音量を決めることが多いです。
このやり方だと、リズム隊が無い曲には対応できないので、その場合はコード楽器を軸にするか、ボーカルを軸にするかどちらかで始めています。
また、自分で録音を一からやっている曲の場合は、録音の際に楽器のバランスは全部整えてしまっているので、全部を同時に聴きながらスタートすることもあります。録音しているときにミックス後のバランスに近い形でモニターを返していれば、プレイヤーはそれに合わせた形で演奏するので、本人の演奏の意図に近いバランスが録音の時点で仕上がります。ここを起点にすると生感が出しやすいので、アコースティックな仕上がりにしたいときにはお勧めです。
回答:中村公輔
【Profile】レコーディング/ミキシング・エンジニア。近年は、折坂悠太、宇宙ネコ子、大石晴子らのエンジニアリングで知られる。アーティスト活動も行い、neinaの一員としてドイツの名門=Mille Plateauxなどから作品を発表。以降はKangarooPawとしてソロ活動を展開する。