第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、Hypercube『The Pneumatic Guru Recalibrations: Volume 2』、The Body『A Lament』です。
ピッチ・シフトされたサウンドや
急激なボリューム変化が格好良いIDM
僕が一番好きな音楽ジャンルは、インダストリアルでノイジーなIDMである。Bandcampで見付けたハイパーキューブは、ロンドンで活動するアーティストだ。ミニ・アルバムがリリースされたバンクーバーのレーベル=Paracusia Mediaには、Hypercubeと同種の音楽がそろっているので、個人的に“良いレーベルを見付けたな”とほくそ笑んでいる。
本作はピッチ・シフトされたサウンドや、クレッシェンドさせた音をカットしたような急激なボリューム変化が格好良い。ほかにもチョップされた音、スタッター、ブレイクなどが目まぐるしく散りばめられている。執筆時点では先行曲しか聴けていないので、これからフルで聴くのが楽しみだ。
重低音とひずみをメインにした
バンドとは思えないほど実験的な楽曲
お次にザ・ボディは、アメリカのロード・アイランドを拠点に活動するエクスペリメンタル・メタル・バンド。「A Lament」はバンドとは思えないほど実験的な楽曲で、重低音とひずみをメインにしている。スロー・テンポに轟音のようなドローンが重なり、高音域でボーカルの叫び声がわずかに見え隠れするのだ。これらの音で、ステレオとモノを効果的に繰り返すのが良い。この低音を巨大なPAシステムから出して、その前面でウーファーから風に似た空気の振動を感じてみたい……そう思わせるひずみと揺れだ。
中盤ではゲートがかかったように音が途切れる表現やシンセの挿入があり、後半に向けてドラムが盛り上がる中でギターも登場する。ひずみがトレモロのように振動するところが、とにかく格好良い。
Nagie
【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う
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