絶対やっちゃだめ!リズムと乖離したメロディ作り 〜メロディの作り方講座 by 和田昌哉 vol.8

メロディの作り方講座 by 和田昌哉

 この連載では、BTSからEXILE、CHEMISTRY、May.Jといったアーティストの楽曲に携わった経験を持つシンガーであり作詞/作曲/編曲家の和田昌哉が、メロディ作りに役立つ知識を一問一答形式で分かりやすくお伝えします。今回は、いよいよ最終回です!

【Q メロディがオケのグルーヴと合っていないと言われました。どうすればいいですか?

【A】リズムと対話しながらメロディを作りましょう。

【解説】

 “メロディを作ってみたけど、トラックやオケとのリズムが合っていないと言われた”──これは作曲やトップライン作りでよくある悩みのようです。この問題について、僕なりの考えをお話しします。

 まず、特にカラオケなどで気づくのですが、多くの人がメロディを歌うときにリズムをあまり意識していないと感じます。メロディを少し早めに歌ったり、逆に遅れてしまったりして、リズムにしっかり乗れていない人が意外と多い(笑)。リズムのグルーヴに合わせて歌えるというのは実はとても難しいことで、それができる人は本当に歌が上手いと言えます。
 例えば、米津玄師さんの 「アイネクライネ」。この曲はリズムのアクセントが拍子の表(オンビート)にありますが、そこにきっちりグルーヴを合わせて歌える人は少ないと思いませんか? 少し早い/遅い、その微妙なズレが曲全体のグルーヴを損ないドヘタに歌ってしまう(笑)原因になります。

 特にトップラインを作る際には、リズムへの意識が欠かせません。トラックとメロディがどのように調和するか、どんな言葉がリズムに合うのかを考えながら作ることが大切です。トラックのリズムやグルーヴにしっかり乗ることで、トラックと一体感のあるメロディを生みだすことができます。

 さらに、ブラックミュージックでよく使われる“レイドバック”という技法もあります。これはリズムを少し遅らせることで独特のグルーヴ感を生むテクニックで、R&Bやファンクでは欠かせません。同じ曲でもフォークソングとして歌う場合とR&Bとして歌う場合では、リズムの取り方が大きく変わるのはこのためです。
 特にバンドでの演奏経験がある方なら、メンバー全員でリズム感を共有する“グルーヴの瞬間”を体験したことがあるのではないでしょうか。この感覚が、メロディをリズムにぴったり合わせるための大きなヒントになると思います。

 最後に、リズムとメロディを調和させるために必要なのは、やはり積み重ね。たくさんの音楽を聴き、歌い、作り、試行錯誤を繰り返す中で、リズムとメロディの感覚を磨いていく。それが結局、一番の近道だと思います。

【補足コメント】

 最近リリースされたKAZ(数原龍友)「Second Wave」ですが、この曲は上条頌くんから100%完成されたすごくかっこいいインストが送られてきて、そこに僕がメロディを乗せたものです。生演奏のグルーヴと随所に現れる独特なキメを生かした良い例だと思います。KAZがその難しいメロディを軽々と歌いこなし、楽しんでいるのも最高です。彼の歌のアクセントの付け方は“どのメロディをどう聴かせるか”が分かりやすく歌われていると思うので、曲作りの参考になるかもしれません。少し手前味噌になってしまいましたが(笑)、ぜひ一度聴いてみてください。

講師:和田昌哉

【PROFILE】Instagram & X:@masayawada

作詞作曲からアレンジ/ボーカル/プロデュース/レコーディング/ミキシングまで自ら手掛ける音楽的センスと深い知識を持ち、“創る才能”と“表現する才能”を併せ持つ稀有なボーカリスト。ソロアーティストとしてAvex Rhythmzoneからアルバム3枚、シングル3枚をリリース。また、XChange、Fixional Cities、Groove Nomad Orchestraのヴォーカルとしても活動している。ソロデビュー前から数多くの作品に作詞/作曲/ボーカル・プロデューサーとして関わり、R&Bをルーツにしたその音楽性は、普遍的なポップスとして幅広い層に受け入れられている。EXILE TRIBE(EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS/GENERATIONS/THE RAMPAGE/FANTASTICSなど)やNissy(西島隆弘)への楽曲提供を行うほか、ボーカル・ディレクターとしても活躍。CHEMISTRYのデビュー時やMay J.「Let It Go 〜ありのままで〜」、BTSをはじめとする韓流アーティストの作品にも多く携わっている。

 

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