この連載では、BTSからEXILE、CHEMISTRY、May.Jといったアーティストの楽曲に携わった経験を持つシンガーであり作詞/作曲/編曲家の和田昌哉が、メロディ作りに役立つ知識を一問一答形式で分かりやすくお伝えします。
【Q】 曲のどの部分からメロディを作ればよいですか?
【A】 サビから作ってみましょう。
【解説】
メロディを作る際、手順に迷ったらまずサビから始めるのがおすすめです。なぜなら、サビは曲の核となるテーマや世界観が最も表れる部分だから。サビを最初に作ることで曲全体の方向性が明確になり、自分の理想に近い楽曲に仕上げやすくなります。
僕も20代の頃はAメロから作りはじめることが多かったのですが、サビに到達した時に“あれ、何か違うな”と感じることが結構ありました。既にAメロとBメロができていると、サビを作る際に自由度が制限されることが多かったのです。それ以来、最も大切な部分から作り始めるように意識した結果、理想の曲に近づきやすくなりました。
一方で、トラックに即興でトップラインを乗せる場合は少しプロセスが異なります。トラックを流しながらテンポや構成を意識せずに自由に歌い、その中から良いアイディアを組み合わせたり、足りない部分を補ったりします。この場合でも“曲にとって最も大切な部分=サビ”を意識することは変わりません。
なお、メロディ作りは計画的でありながら、偶然性やインスピレーションに身を任せる部分も重要。偶然生まれるひらめきや予想外のアイディアを取り入れることが、新しいメロディや感動を生む鍵になるでしょう。
【補足コメント】
“サビから作る”という提案は一つの方法論ですが、AメロやBメロから作るアプローチが間違いというわけではありません。実際、去年作った中で最もお気に入りの曲はAメロから順番に作ったものですし、サビよりもAメロが人の心に残る曲もたくさん存在します。自分が“最も大切な部分”を意識しながら創作に取り組むことが大切です。ちなみに、曲の構成において各セクションをAメロ、Bメロ、サビと書きましたが、以下のように呼ぶことも多いので、知っておくと役立つでしょう。
- Aメロ=バース(Verse)
- Bメロ=プリコーラス(Pre-Chorus)、プリフック(Pre-Hook)
- サビ=コーラス(Chorus)、フック(Hook)
講師:和田昌哉
【PROFILE】Instagram & X:@masayawada
作詞作曲からアレンジ/ボーカル/プロデュース/レコーディング/ミキシングまで自ら手掛ける音楽的センスと深い知識を持ち、“創る才能”と“表現する才能”を併せ持つ稀有なボーカリスト。ソロアーティストとしてAvex Rhythmzoneからアルバム3枚、シングル3枚をリリース。また、XChange、Fixional Cities、Groove Nomad Orchestraのヴォーカルとしても活動している。ソロデビュー前から数多くの作品に作詞/作曲/ボーカル・プロデューサーとして関わり、R&Bをルーツにしたその音楽性は、普遍的なポップスとして幅広い層に受け入れられている。EXILE TRIBE(EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS/GENERATIONS/THE RAMPAGE/FANTASTICSなど)やNissy(西島隆弘)への楽曲提供を行うほか、ボーカル・ディレクターとしても活躍。CHEMISTRYのデビュー時やMay J.「Let It Go 〜ありのままで〜」、BTSをはじめとする韓流アーティストの作品にも多く携わっている。