第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。小泉由香氏の今月のセレクトは、ケイティ・ペリー『スマイル』、ザ・キラーズ『インプローディング・ザ・ミラージュ』です。
アルバム・タイトルのように明るく前向きな楽曲は
エレクトロやドリーム・ポップなどで彩り豊かに表現
ケイティ・ペリー3年ぶりのニュー・アルバムは、プロデューサーにゼッドやオスカー・ホルター、ミキサーにサーバン・ゲネアやマニー・マロクィンなどヒット曲に必ずかかわっている制作陣が起用されました。
アルバム・タイトルに『スマイル』と付けたように、明るく前向きな楽曲はエレクトロやドリーム・ポップなどで彩り豊かに表現。ボーカルが細くなく体温感のある声質なので、低音を占めるリズム隊とうまく分離していれば、ほかに高域がキラッとしたトラックを乗せても耳に痛くないという有利な点を生かした音作りです。オーバー・レベルが続く曲もあるので、個人的には少しレベルを下げても良かったのではと思いました。
ドライなギターと中高域寄りのボーカルが
シンセや腰高な低音などと絶妙にすみ分けられている
こちらも3年ぶりとなるザ・キラーズの6作目。プロデュースはジョナサン・ラド、ミキサー兼プロデュースはショーン・エヴェレットが担当。1980年代をほうふつさせるリバーブのかかったボーカルや、オケもふんわりする分レベルを感じにくいので、そこを補うためかガッツリとレベルが入れられています。エヴェレットが手掛けた作品は音のすき間はあってもレベルが高いものが多いので、ミックスからレベルが入り気味だったのでしょう。
抑揚のある楽曲では、特にマスタリングが大変だったと思います。ドライなギターと中高域寄りのボーカルが、キラキラしたシンセや腰が高めな低音などと絶妙にすみ分けられています。楽曲によっては中高域が高いので、再生レベルに気をつけて楽しんでください(笑)。
小泉由香
【Profile】マスタリング・スタジオ、オレンジ主宰。音楽愛に裏付けられた丁寧な仕事で信頼が厚い、日本を代表するマスタリング・エンジニア
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