第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。今本 修氏の今月のセレクトは、Pom Poko『Cheater』、Mica Levi『Ruff Dog』です。
パンキッシュなギター、重厚なベース、タイトなドラム
そしてチャイナっぽいメロディなど、すべてがエモい
“オルタナティブ”って、昔に比べてすごくあいまいになったと感じる。同じように“エモい”も、幅広過ぎて何を指すのかさっぱり……。今月は僕が“オルタナティブ”だと思う作品を2枚紹介してみる。ノルウェー出身のエクスペリメンタル・バンド=Pom Pokoの2ndアルバム。デビュー・アルバムはノルウェーのスペルマン賞の2部門にノミネートされた国民的バンドだ。バンド名はアニメ『平成狸合戦ぽんぽこ』から来ている。
荒々しいカッティングから飽和に向かっていくノイジーでパンキッシュなギター、重厚なベース、そしてタイトで分離の良いドラム。そして時折出現するチャイナっぽいメロディなど、すべてがエモい。ちょっと不相応なほど可愛いボーカルが全体の世界観をまとめ上げている。
ほとんどの曲で芯が無くボワっと広がった音像
普段あまり聴かないものがすごく新鮮に聴こえてくる
もう一枚は、UKのプロデューサー/コンポーザー、ミカ・レヴィの『Ruff Dog』。近年、映画のサントラを手掛けたり、自身のバンドGood Sad Happy Badやプロデュース業で多忙な日々を送る中、事前告知の無い状態でセルフ・リリースされた。
ほとんどの曲で、芯が無くボワっと広がった音像。イントロもアウトロも無く、終わり方も突然ディレイで強引に終わったりする。初めは“何だこりゃ?”と思いながらも、聴いているうちにはまってしまった。ちょうど今のように自粛をしながら毎日似たような刺激の無い日々を送っていると、このような普段あまり聴かないようなものがすごく新鮮に聴こえてくるのかもしれない。
今本 修
【Profile】DOGLUS MUSIK主宰。クラブ・ミュージックを熟知した音作りに定評がある一方、ロックの分野でも手腕を発揮するエンジニア