GENELECは聴いていて楽しい音
もちろんモニターとしてもちゃんと使えます
40年の歴史を誇る、フィンランドのモニター・スピーカー・メーカー、GENELEC。現在のスタジオ・モニターでは主流となったアクティブ式のパイオニアとして知られる同社は、コンパクトなデスクトップ機からスタジオ用ラージ機までを手掛け、世界中のエンジニアやクリエイターから厚い信頼を寄せられている。この連載では、そんなGENELECモニターを愛用するクリエイターに、制作のパートナーとしてのモニターを語ってもらっている。今回は多くのアーティストをサポートしながら、ソロ・プロジェクトSchroeder-Headzでも精力的に活動しているキーボーディスト、渡辺シュンスケのプライベート・スタジオにお邪魔した。
省スペースなシステムが実現できるモニター
渡辺の自宅スタジオを訪れると、まず驚かされるのは、そのシンプルな制作システム。窓際に置かれた電子ピアノの上にはAPPLE MacBook ProとオーディオI/O、そして左右にGENELEC 8020Aが置かれている。
「今はほとんどソフトウェアでも十分なクオリティですし、Schroeder-Headzはピアノがメインなので、ピアノ・タッチの鍵盤にすぐ触れて、音も聴けて、コンピューターも置けて、というのが自分のスタイルとしては理想で。スペースもあまり取らないので、この形になりました」
見た目からは電子ピアノの再生用に8020Aを使っているような印象を受けるが、8020AはMacBook Proからの音を再生。電子ピアノはUSBキーボードとして機能している。
「10年くらい前、小型のパワード・モニターが流行し始めた時期に、幾つか買ってみたんです。その中でGENELECは聴いていて楽しい音で、もちろんモニターとしても使える。自宅での作業はデモ作りがほとんどなので、精細なモニターというよりは聴いていて楽しめて、疲れない。そんなスピーカーとして8020Aは理想的でした。ちゃんと自宅で制作をしている人からすると怒られるかもしれないセッティングですが、僕の場合はミックスは外部のスタジオでエンジニアに依頼しているので、自分の仕事のしやすさを重視しています」
音量を小さめに出してもちゃんと聴こえる
専用スタンドIso-Podのおかげで上振りができる8020Aは、こうした電子ピアノ上の設置に最適だ。演奏するときは鍵盤やMacBook Proに手が届く距離だが、リスニングやチェックなどは少し離れて聴くこともあるという。
「8020Aは音量を小さめに出してもちゃんと聴こえますね。スタジオで聴くYAMAHA NS-10Mよりも低域がすごくある感じで、設置状況に合わせて内蔵フィルターでローカットしました。それでも十分低域がありますね」
そう言いながら、再生してもらうと、隣にいれば会話できるくらいの音量。一般的な住宅としてはやや大きめだ。
「実はこの部屋は外の騒音がうるさいので、そこそこの音量を出せるんですよ。ヘッドフォンで作業することは、生楽器の録音以外ではほとんど無いですね」
シンプルとはいえ、必要であればハードウェアのシンセを持ってきて横に置き、録音することもあるそう。フォームにとらわれず、自由な形で制作したい……そんな渡辺にとって、コンパクトで必要十分な音をもたらしてくれるからこそ、8020Aは長い間愛用されているのだろう。
「10年前に買って不満を抱くこともないまま、今まで8020Aをずっと使ってきました。でも最近、これにDSPを入れて低域のたまりなどを補正してくれるモデル(編注:8320A)があるということを聞いて、進化しているんだなと思いましたね」
渡辺シュンスケ使用モデルの後継機
8020D
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格55,000円前後/1基、ホワイト:市場予想価格62,000円前後/1基)
8000シリーズの4インチ・ウーファー・モデルとして長らく人気を得ていた8020。2017年に最大音圧レベルが4dB向上した8020Dにバージョン・アップを果たした。周波数特性は56Hz〜25kHz(−6dB)。ツィーターは0.75インチのメタル・ドームを採用している
Creator of This Month
渡辺シュンスケ
Cocco、堂島孝平、PUFFY、佐野元春など多くの著名アーティストのレコーディングやライブ・ステージで活躍するキーボーディスト。自身のプロジェクトとしてSchroeder-Headz名義での活動も展開。ポストジャズ的サウンドを追求している
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン https://www.genelec.jp/