しっかりと輪郭が見える音でありながら
聴き疲れしにくそうでモニタリングしやすいです
今回のテスト・モデル
8331A
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格278,000円前後+税/1基、ブラック/ホワイト:市場予想価格298,000円前後+税/1基)
同軸ツィーター+ミッドレンジ・ドライバーに、2基の楕円形ウーファーを加えた3ウェイ・ポイントソース構成のThe Onesシリーズのうち、最も小型のモデル。SAMテクノロジーにより設置環境に合わせた自動補正が可能。大型ウェーブガイドの採用で、スウィートスポットの拡大にも成功している
環境に合わせた測定と補正が瞬時に終わる
引っ越してきたばかりだという井上の自宅。スタジオとして用意した部屋は6畳ほどの空間で、アコースティック・パネルで吸音と反射をトリートメントしている。
「普段は、他社のパワード・モニターと、コンピューター・ベースの補正ソフトを組み合わせて使っています。実は、8331Aは以前から使ってみたいと思っていたのでいい機会ができてうれしいです。また、外部のスタジオで、5.1ch環境のGLMセットアップもやったことがあるんですよ」
既設のスピーカー・スタンドの中央に8331Aを設置し、測定用ツールのGLMキットを接続。GLMソフトウェアをインストールして、測定用マイクを立てる。SAMでは1カ所での測定(シングル)と、4カ所の平均(マルチ)が選択できるが、今回はシングルとした。測定ボタンを押すと、L/Rスピーカーからサイン・スウィープ音が鳴り、あっと言う間に測定と補正が完了した。
「SAMはすぐに測定が終わるのがいいですね。補正システムによっては毎回数十カ所測定しないといけないので、それだけで手間がかかりますから」
左右の定位感が細部までしっかり見える
この状態で早速試聴をスタート。ウッド・ベースの量感、あるいは発売目前のWONKのEP『Moon Dance』で聴けるキックのローエンドがタイトかつ心地良く響く。試しに補正EQをバイバスしたりしながら、その感触を確認していった。
「しっかりと輪郭が見える。いい感じですね! “GENELECは派手な音”という先入観を持っている人がいるかもしれませんが、聴き疲れしにくそうな音で、モニタリングしやすいです」
GLM上で表示される測定&補正グラフを確認すると、特に目立つのは150Hz辺りのピークが抑えられていること。一方ディップは、EQでブーストしても逆相成分が増えるので、GLMではあえて手を付けない仕様となっている。
「一般的な部屋では、どうしても100Hz辺りが背面や横の壁からの反射の関係でディップになる傾向があるのは、以前から知っていました。今回はスタンドの中央に置いてみましたが、スタンド上の位置の調整でも変わってくるかもしれません。説明書の推奨設定を見ながら、いろいろ試してみたいと思います」
微調整はこれからじっくり行うことを前提として、8331Aのファースト・インプレッションを井上はこうまとめる。
「WONKの新作のローエンドもきちんと聴けて、安心できました。これまで使ってきたスピーカーは全体がいい感じで聴けるモニターですが、左右の定位感はThe Onesの方が細かく分かります。いい意味でヘッドフォンに近い感覚で、これとこれの間に定位させたいという細部までしっかり見えると思います」
これから約1カ月、井上にはじっくり8331Aと向き合ってもらい、モニターとしての実力を見極めてもらうことに。その報告は次回行うこととしよう。
井上幹
東京を拠点に活動するエクスペリメンタル・ソウル・バンドWONKでベースやエンジニアリングを担当。最新EP『Moon Dance』を7月31日にリリース。Naz、MELRAW、MALIYAなどの作品でもミックス/マスタリングを手掛ける。ゲーム制作会社にてサウンド・デザイナーとしての仕事にも従事 |
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン www.genelec.jp